- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

もう一つの投機市場、商品市場(NY、ロンドン、東京)

世界の余剰資金(ファンド)は、株式市場、国債市場、為替市場だけでなく、商品市場(金、非鉄金属−銅やアルミ、穀物)にも流入し、実需を離れて、金価格、原油価格、銅価格を高騰させている。

2006年の春から夏にかけて、NY原油価格は、77ドル/バーレル、銅価格(ロンドン金属市場)は、8900ドル/トン、金価格(ロンドン金)は、630ドル/トロイオンスの最高価格まで上昇した。

3年前の2003年の数字と比較すると。

NY原油は   30ドル台 → 77ドル    2倍以上
ロンドン銅は 2000ドル台 → 8900ドル台 約4.5倍
ロンドン金は、 330ドル台 → 630ドル   約2倍

価格が2倍、4倍と沸騰するのは、1973年、1979年のオイルショック並である。
世界の景気回復や中国、インドの経済成長で実需が拡大しただけでは、やはり、この2倍、4倍の説明はできない。
明らかに、巨大な資金、利益を求めて、投機市場を駆巡るファンドが、この1年間、商品市場を動かしていると言えよう。

conf75.jpg
ロンドン金市場(The London Bullion Market Association)の値動きと、投機資金の動きの一端を紹介しよう。
図は、ロンドン金市場の長期価格動向と2004年1月からの各月の価格動向である。
gold001.jpg

以下、投機資金の動きは、田中貴金属工業の「貴金属市況」レポートからの抜粋です。


>(2006年)1月の金相場は 520ドル近辺でスタートした後、.......米年金系ファンド(ペンションファンド)が運用成績の悪い株式・債券市場から商品市場に資金を移動している事も強気材料であり10日には540ドル台中盤まで上昇しました。
>国際的テロ組織アルカイダによる対米攻撃予告やパレスチナ評議会選挙でのハマス圧勝により中東情勢の不透明感が一層強まった事等が、所謂 「地政学的リスク回避の金買い」を誘う結果となり、下旬にかけては底値を切上げる形で560ドルを堅持。
(田中貴金属工業・2006年1月の貴金属市況) [1]

>560ドル台後半でスタートした後、イランの核問題を巡り国際原子力機関(IAEA)が2日に緊急理事会を招集するなど中東地域での地政学的リスクが高まった事を背景に570ドル台まで上伸し25年振りの高値を更新しました。しかし、その後高値警戒感から上昇相場の牽引役であったファンド系の追随買いが細ったことから大量の利食い売りを誘発。
(2月の貴金属市況)

>米ドル金利先高感を背景とした堅調な米ドル為替相場を背景として、金相場のみならず商品全般や株式等などの市場からも資金が逃避する傾向となり、21日にかけて560ドル台〜570ドル台でのやや軟調な相場展開が続きました。
>しかしその後は原油相場が再び1バレル=70ドル台に向けて上昇した事や、新たな脅威として北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射問題が台頭。イラク核開発問題も含めた国際的緊張が再度、「安全資産」としての金買いを誘発する結果となり下旬には580ドル台〜590ドル台までレンジを切り上げました。加えて 29日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通り0.25%の米ドル政策金利(F・Fレート)の引き上げを実施。(引上げ後5.25%) しかし声明文では今後の継続的米ドル金利引上げに懐疑的内容となった事から、急速に金相場は回復する事となり、同日に600ドル台を回復すると、月末には610ドル台まで上昇して越月しました。
(6月の貴金属市況)

>6日に開催された欧州中央銀行(ECB)の定例理事会後、トリシェ総裁がユーロの追加利上げを示唆する発言を行った事から、ユーロ高・ドル安が顕著となると、基本的にドル為替相場とは逆相関関係にある金市場に資金が流入することとなり、7日には630ドル台を回復しました。その後もインド・ムンバイにおける同時爆破テロ、イスラエルのレバノン侵攻、混迷するイラン核問題等を背景に、所謂 地政学的リスク回避の為の金買いが活発化して、17日には一時670ドルを超えるレベルまで上昇しました
>しかし、昨今のテロや軍事的危機に対する市場の理解はインパクトが長続きしないと言うのが共通認識。今回もご多分に漏れず、670ドルを越えた直後から、ファンド筋を中心に手仕舞いの売りが優勢となり24日には月間の最安値となる605.70ドルまで下落しました。
(7月の貴金属市況)

>緊迫化するレバノン情勢を背景に上昇基調の展開となり2日には月間の最高値となる654.40ドルまで上昇しました。
>国連安全保障理事会の決議に基づき、イスラエル軍とレバノンのイスラム教徒シーア派武装組織ヒズボラとの停戦合意が行われた事から、金相場は軟調な値動きとなり一気に630ドルを割れるレベルまで売られました。その後もレバノン停戦を受けて、原油価格がやや軟調な取引となった事から、金相場も弱含みの展開となり18日には620ドル割れ。
(8月の貴金属市況)

>原油相場の下落、長期的に産金業界が増産に動いている事等が圧迫材料となり、ファンド筋の手仕舞いによる下落に歯止めが掛からず11日には600ドルの大台を割り込みました。600ドルを割り込んだ時点で一部実需の買いも見受けられましたが、相場全体の下落基調の流れを食い止めるには至らず600ドル割れが定着。
(9月の貴金属市況)

中東の局地戦争と停戦合意などの「軍事的緊張」を演出しながら、金市場での投機利益を生み出すファンド(投機資金)が、存在していることをうかがわせる。

By 村田

「そうか!」と思った人は↓↓

[2] [3] [4]