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「福祉元年」は「少子化元年」、そして生まれた年金の『負のループ』

高度成長時代が終わりを告げた1973年、年金は大きな分岐点を迎える。時の首相、田中角栄は『福祉元年』をスローガンに掲げ、年金に物価スライド制を導入するとともに、1969年に月額2万円に引き上げられたばかりの厚生年金の給付額を、一挙に2・5倍の月額5万円に引き上げた。保険料負担に見合わない給付の大幅な引き上げは、年金財政を急激に悪化させた。
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web iwakami [1] より
また、この1973年は日本国内の出生率ピーク(209万人)の年でもある。
[2]
社会実情データ図録 [3]より
偶然かもしれないがこの符合は年金の破綻を予感させるに充分である。
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女性が生涯に何人の子供を産むかを示す合計特殊出生率は、2・14を記録したこの1973年を最後に、社会の人口維持に必要な水準(人口置換水準)である2・08を下回り(74年は2・05)、以降は右肩下がりに下り続けて、ついに2005年には1.25を記録するに至った。『福祉元年』は、『少子化元年』でもあったのだ。
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少子高齢化の到来が予期されていたにもかかわらず、政府は抜本的改革を先送りし、給付の削減と負担の引き上げを行うだけの小手先の手直しに終始してきた。そのツケが今、「年金不信」として重くのしかかっている。
国民年金に加入しない未加入者や、あるいは加入していても年金保険料を納めない未納者が増えている「国民年金の空洞化」は、そうした「年金不信」のあらわれである。不況の影響で、低所得ゆえに保険料を免除されている者の数も、増え続けており、未加入者約99万人(98年時点)、未納者約265万人(同)、免除者約505万人(同)を合計すると約869万人。国民年金保険料の支払い義務のある者のうち、約三分の一が保険料を納めていない。しかも、その数は年々増えつつある。国民年金保険料の未納率(加入者が保険料を納付しなかった日数の割合)は、95年度には15・5%だったが、毎年上昇し続け、2000年度には27%にのぼった。こうした傾向が続けば、近い将来、対象者の過半数が保険料を納めない時代が、到来するだろう。
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web iwakami [1]より
賦課方式を採用している日本の現行年金制度は、世代順送りで、現役の働き手が引退した高齢者を支えるシステムであるから、少子高齢化が進むと、世代間の受益と負担のバランスが崩れるのは自明だ。この誰にでも分かる構造が70、80年代の官僚、政治家に読めないはずが無い。この30年間なんら抜本的な対策を講じなかったのは怠慢というより国民に対する裏切りではないか。
さらに出口の無い不況下で企業に義務加入を強いる厚生年金は、企業にとって相当な負担となっており、現に廃業して従業員が居なくなったと「全喪届」を提出して厚生年金を支払わず、従業員には国民年金に加入してもらう企業も多く、新設法人で厚生年金に加入する事業者は一割にも満たない状況らしい。
そしてまた年金財政が悪化→企業の負担増→雇用情勢の冷え込み→結婚、出産にためらい→少子化加速→さらに年金財政の悪化、という負のループ
は続くのだ。
by ラ・マヒストラル

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