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「公的年金運用規制緩和」真の目的は②

じゃあ、年金を株式に運用するってどういうこと??

年金の運用は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という、長ったらしい名前の機関が行っている。年金の保険料を国民から集め、給付しているのは厚生労働省だが、GPIFは厚生労働省から年金積立金の管理・運用を委託される。しかし、GPIFは運用の計画を立てるだけで、実際に資金を運用するのは、「運用受託機関」と呼ばれる民間の金融機関なのだ。

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前回書いたように、年金積立金は株式投資にも使われる。もちろん、運用受託機関が運用する。ところで、株式は株式会社の運営の資金として使われ、株式を所有していると、その会社の経営に対しての発言権を持つことができる。じゃあ、年金の運用で株を買った場合はどうなるの?っていう疑問が湧いてくる。

その答えは・・・


その答えはGPIFのホームページ [2]に書かれていた。

なお、株式投資を行うことに伴い、公的年金積立金という資金の性格に鑑み、個々の企業経営への影響に十分に配慮しつつ、長期的な株主等の利益の最大化を目指す観点から、運用受託機関を通じた株主議決権の行使といった株主としての権利と義務を適切に果たしていくことは、受託者責任の観点からも必要なことと考えられます。

つまり、年金を安全に運用するために、「運用受託機関を通じた株主議決権の行使」(年金を運用する民間金融機関が株式会社の経営に口を出すこと)をしますよ、ってことだ。運用受託機関は、年金という他人のふんどしを使って、株式会社の経営に口を出せてしまうのだ。

ただ、現在はGPIFの管理運用方針(PDF) [3]で、「同一企業が発行する株式への投資は、運用受託機関ごとに当該企業の発行済み株式総数の5%以下とすること」と定められている。だから、運用受託機関が年金を使って株式会社を買収したりということはできないようになっている。

しかし、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は、「自由な資産運用の足かせとなっている公的年金の法規制を見直すよう求めた」(日経 [4])とあるように、その規制もゆるめられるかもしれない。いや、その可能性はかなり高いだろう。

実は、今回の規制緩和の内容は、あの「年次改革要望書」 [5]に書かれていた内容なのだ。

積極的な委任投票を通じた株主価値の増大:厚生労働省の支持のもとで公的年金の運用責任者の委任投票政策を公開すること、また、民間年金基金運用責任者に対して、受益者を代表して委任投票を行使する受託者義務を制定するかについての検討を行なうことを通じて、公的及び民間年金基金の運用責任者による健全な委任投票政策を促進する;信託基金運用責任者が、実際の委任投票に関する記録を公開することを奨励する;代理保管人及び国際的保管人による委任投票行使に関する法律並びに規則に必要な変更を加えることを検討することにより、海外の株主による委任投票権行使を円滑化する。

つまり、「年金は国民お金だけど、運用受託機関が代表して議決権を行使できる(委任投票)ようにしなさい」、そして、「海外の株主でも円滑に委任投票できるようにしなさい」ってことだ。国民の年金を使って、外国(≒米国)の金融機関が日本の株式会社の経営に口を出せるようにしようとしていたのだ。

そして、なんとこの年次改革要望書では、三角合併、株式交換と並べて上記の提言がされている。三角合併や株式交換が解禁された流れから見ても、上記の規制緩和も採決されてしまいそうな気がする。

このままでは、郵便貯金だけでなく、年金までもが外資に乗っ取られてしまう!

どーする!?

おぼろ豆腐
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