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国家資本が先進国を脅かす?

国家資本が先進国を脅かす

SWF=ソブリン・ウエルス・ファンドという「中国を初めとする政府資産投資」が今や先進国のファンドへ出資すると
いう現象が起きている。
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「ブラックストーングループシュワルツマン会長」
以下「選択」‘07・7月号「自由市場に流れ込む国家資本」より
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以下記事の概要

‘07年6/20NY証券取引所に世界有数の大型企業買収ファンド、ブラックストーン・グループが上場した。
ブラックストーンは、米商務長官を務めたピーターソン元リーマン・ブラザース気会長と、同じリーマン出身のシュワルツ氏が1985年に共同で設立した企業買収専門のファンドで、この数年急成長し、今や資産は10兆円を超える巨大ファンド。
このファンドに中国の政府関係投資会社30億ドル(3600億円)を出資したことが注目されている。
資本主義、市場原理の権化のような投資会社に、もはや名ばかりとはいえ社会主義を標榜し、共産党の一党支配が続く国の資金が入ることは、単なる逆説や歴史の」皮肉といった次元の問題ではない。
各国のSWFの額・アラブ首長国連邦:8750億ドル
・サウジアラビア:3000億ドル
・クウート:900億ドル
・ノルウエー:3000億ドル
・シンガポール:4300億ドル
・ロシア:300億ドル(景気回復基調から数年で中東産油国に並ぶ巨大なSWFになると言われている)
その他の国のSWFを合わせると、約2.5兆ドル(300兆円)になり、投機性の高い行動によって世界の市場を揺るがすヘッジファンドの1.5兆ドルを大きく上回る規模である。
これまでもSWFが企業に出資しなかったわけではない。しかしあくまでそれは配当によるリターンを狙った長期安定投資が主。
問題は、SWFの資金がブラックストーンのような企業買収ファンドのような企業買収ファンドに一旦入り、企業買収に向かえば、その資金規模から世界の優良企業が相次ぎ買収され、間接的にどこかの国の政府に支配されかねないことだ。
2005年に失敗に終わった中国海洋石油総公司による米石油大手ユノカルの買収のように、中国が前面に出た買収は警戒心を掻きたて、簡単には進まない。
だが、欧米の企業買収ファンドという仮面をつけた出資では、実質支配を防ぐのは容易ではない米議会ではすでにそうした懸念から企業買収ファンドの規制が議論され始めている。
世界的なカネ余りによって自由市場に雪崩れ込んだ国家資本の規制は、ヘッジファンド規制以上に本質的な課題なのだ。

○筆者は「特に中国や中東など国内の民主化が遅れ、冨の偏在も激しい国家が稼いだ外貨が、国内に回らずに先進国で運用され、増え続けるならば、結果的に欧米の企業買収ファンドは民主化後進国の体制維持、延命に手を貸すことにもなる」と心配する。
○しかしこれまでこの主のヘッジファンドが、例えばタイや韓国等の「中進国」で行ってきた一国の経済を破滅に追い込むような行為を考えれば、資金余力をつけてきた中進国が自らの判断で利を求めて合法的にヘッジファンドに投資することを、あたかも理不尽な事のように非難するのは身勝手というものだろう。
現に 今年7月「米投資ファンド、中国・藍星集団へ資本参加交渉 [1] 」にあるようにブラックストーングループそのものがが、中国企業への資本参加に向けて交渉を進めており、お互い合意の上での投資と考えられる。
投資の相手や受け手が非民主国であろうと無かろうと、他人からカネを預かるファンドである以上、短期的な最大利潤を求めて行動するのは変わらない。
しかし、これまでのヘッジファンドを大きく上回るマネーが新たに世界投機市場に流入すれば、それで無くとも世界的なカネ余り現象の中で、世界の金融と証券市場に新たな火種を抱え込むことになるのは明らかと思われます。

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