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ロシアが主導するエネルギーカルテルと世界構想

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先日、ロシア・中国を中心とした上海協力機構(SCO)による協働の軍事訓練がニュースに取り上げられました。
この上海協力機構にはインドやイランなどがオブサーバーとして加わり、中央アジア発の新たな動きに注目が集まっています。この機構の表向きの目的は、中国発の中央アジアにおける合同の国境管理とされていますが、実際は、中国・インドを中心としたエネルギー消費国と、ロシア・イランなどのエネルギー供給国によるエネルギー需給関係の強化が目的とも言われています。
図:上海協力機構に関係する国
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この上海協力機構をはじめ、特に不穏な動きを見せているのがロシアである。
ロシアは、この機構の他にも各国との協働関係を築き始めているが、特に、2003年のサウジアラビアとの石油・天然ガスの協力合意 [1]は大きな意味を持っています。
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その理由が以下にあります。
これは、2003年の主要エネルギーの国別埋蔵量を示したものです。
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この図を見ていくと、
石油こそ、中東に7割弱占められているものの、天然ガス、石炭については、前述した上海協力機構に関係するロシア・中国・イラン・インドによって世界の半分以上が占められています。さらに、さきほど紹介したロシアとサウジアラビアの協力関係が築かれた場合、それは石油の3割を占めることになります(ちなみに現在、ロシアは石油生産国でサウジアラビアに次いで世界2位)
ロシアは、一国でも非常に潤沢なエネルギー大国ですが、他のエネルギー大国と協調することで強大なカルテルを成立し得ることが可能で、その中核にいると言っていいでしょう。

プーチンはエネルギーの分野では、世界の非米諸国を結束させて新たなカルテルを作ることを着々と進めている。以前の記事に書いたように、プーチン主導のエネルギーカルテルは、非公式に強化されており、欧米や日本の人々が気づかぬうちに、世界のエネルギー支配力を欧米から奪い始めている。プーチンのユーラシア版WTOの構想は、貿易一般の分野で、これと同じことをやろうとしているのかもしれない。プーチンの世界戦略はこっそり進められるので、欧米の支配権を守りたい人々にとっては非常に危険である。
すでに政治や軍事の分野では、ロシアと中国、中央アジア、南アジア、イランを束ねる「上海協力機構」が強化されている。上海協力機構の枠組みが経済の分野に拡大されれば、ユーラシア版WTOとして機能しうる。欧米諸国の消費力は低下し、代わりに中国やインド、中近東諸国の消費力が上がっている。製造業の面では中国が台頭しているし、エネルギーは中東とロシアにある。ユーラシア諸国は、欧米を無視した経済運営が可能になっている。中南米諸国や、南アフリカなども入り、ユーラシア版のWTOは、非米同盟WTOになりうる。プーチンの世界的な構想が実現した場合、困るのは欧米の方である。

 田中宇:非米同盟がイランを救う? [2]
田中氏はこれらの協調関係を反米と呼ばず、アメリカと対立することが必ずしも利益にならない国々の暗黙の意思表明としての「非米」と名づけていますが、ロシアはこの各国の非米感情を上手く操り世界の中心に帰り咲こうとしているにも見えます。
今後も、このロシア主導のエネルギーカルテルの形成、そして世界構想の検証をしていく必要がありそうです。

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