- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

入るを量りて出ずるを為す

%E5%9C%B0%E6%96%B9%E8%B2%A1%E6%94%BF.jpg
地方財政はいずれも窮乏状態ですが、その原因の一端を教えてくれる事例を紹介します。
国の政策に追従してきた結果、今日の窮状を招いている!! というもの
和歌山県のある地方都市の事例を紹介します。
続きはポチットしてからお願いします。
          


紀伊民報の8月7日の記事からタイトルをお借りしました。 [1]
入るを量(はか)りて出ずるを為(な)す」という言葉。実は、先日ある方との会話の中で出てきた言葉だったので、上記の記事に惹かれました。
岩波ことわざ辞典によれば「収入額を正確に計算した後で、それに釣合った支出をして経済の安定を図る意」。
要は、収入をきちんと見極めて、分相応の支出とすることが肝要ということ。
和歌山県印南町では町制施行50周年を迎えたが、支出が嵩む行事などは行わなかった。
同町では、いまのところ財政の健全性は保たれているものの、先々の地方交付税の減額などを見据えて使わなくてもよい支出は控えた。
新聞記事では、首長の見識如何で健全財政は保たれるという記述になっているが、はたしてそれだけなのか。
印南町の財政健全化計画(集中改革プラン) [2]では、町民にも分かりやすく記述されている。
「財政健全化の視点」の冒頭では以下の記述がある。
…財政運営の原点である「入るを量りて、出ずるを為す」ことに立ち返り、負担に値する質の高い小さな地方政府(スモールガバメント)の実現を目指し…
まさに、最も大事な考え方の基本を端的に示している。
「財政の現状」の記述からポイントをまとめると以下の事項が挙げられる。
・実質収支は一貫して黒字を保っている。
・経常収支比率、公債費比率、起債制限比率などの指標はいまのところ県下では最も健全な水準
・公債費比率や起債制限比率は今後上昇してゆく恐れがあることを記述
・一般財源のうち、地方交付税は今後さらに縮小してゆく恐れがあることを記述
国の減税にともなって発生した税収減に対応するため、赤字地方債の発行が余儀なくされている
それ除くと町債残高は平成6年当時67億円だったものが10年間で約20億円減少
そもそも地方が財政的な危機に陥った原因は、国の施策により肥大化した投資的経費に伴う多額の地方債の発行によるところが大きい。
これまで積極的に繰り上げ償還しているが、毎年多額の公債費を支出しており財政の硬直化の一因 になっている。
・個々の団体の財政規模に見合った施策の実行(十分の器の大きさを知る)が重要と記述。
近年、農業集落排水事業などの大規模な建設事業を実施しており、それらに多額の繰り出しを行っている。
これまで、財政再建団体になってしまった自治体などを例に出して、地域振興のために行った開発事業が破綻したからといったことばかりが強調されているが、印南町のように堅実に運営してきたところでさえ厳しい財政状況に直面している。
国の減税政策に伴なう町税収入の減少、国の施策に沿って実施した公共事業による公債費の増大など、収入・支出の両面から財政を圧迫する原因になっている。
その意味では、自治体が自主的に要不要の判断をすべきだという理屈もありそうだが、一方で国とは何者なんだという疑問が生じる。国は無責任で無能だから(?)自治体が自主的に考えてゆきますというのではおかしいだろう。
少しうがった見方をすれば、国はこれまでの自らの失敗を押し付けたまま強引に合併を進めてうやむやにし、言うことを聞けば支援すると宣言しているに等しい。
そして、言うことを聞かない自治体は放置されて、悪化した財政指標で捕捉する。国に追従した自治体は再建計画の中で飴玉を与えながら、首根っこを押さえるといった構図ではないだろうか。
現在進行中の地方分権の流れでは、表面的な問題事象をとりつくろうだけにすぎないだろう。
by わっと

[3] [4] [5]