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地方分権改革の現状のまとめ

9道州案Region_system9.png [1]
これまで、地方分権とその背後にある道州制への移行について述べてきましたが、ここらで、ちょっとまとめてみたいと思います。
まず、何故、地方分権−道州制が必要なのか?
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これまでの地方行政は、国(中央政府)にコントロールされてがんじがらめだった。そのため、その地域にあった、特色ある行政や、効率的な行政を行うことが阻害され地域的な諸条件の多様性を軽視した画一的な地域づくりや東京一極集中が進んできた。
地方分権の基本的な方向性は、できるだけ住民に近いところで政策や税金の使い方を決めることができるようにしようということである。このことによって、地方行政は住民の意向に沿った行政を行うことが可能となり、住民の責任意識に支えられた真の地方自治を確立できるというものである。
それを改めるために、最近では、以下の見直しがされてきた。
①国と地方の事務の見直し(平成12年「機関委任事務の廃止」)
②地域の特性・ニーズに応じた規制緩和(平成14年「構造改革特区制度」)
③省庁の縦割りを超えた新たな予算の仕組みづくり(平成15年「地域再生制度」、平成17年「地域再生法」の制定)
④国の「関与」の見直し(平成12年「地方分権一括法」)
⑤税財源の見直し(三位一体改革)
⑥道州制の検討(第28次地方制度調査会では、平成18年2月に「道州制のあり方に関する答申」をまとめて基本的な道州制の制度設計を示している。)

要するに、従来の中央集権型の国家体制の行き詰まりの打開策が、地方分権であり、地方の自立によって、地方の活力が上昇し、総体として、国家も潤っていくという事である。
また、この地方の自立に目をつけ米国の2006年のアメリカの年次改革要望書には、日本に対して、
17、透明性の項には、
1.市民参加による政策策定 
2.パブリックコメント手続き(PCP)
4.市民参加による法案策定
が、明記されているが、これは、各自治体の規制緩和をねらって、(自治体の議会が定める条例で国の法令の修正を可能にする「上書き権」が良い例)米国資本が、入りやすくするための、圧力であることは、目に見えている。
現状の日本の内なる問題性の打開策としての地方分権−道州制という日本の骨格を変えていく方向性と米国の思惑が見事に一致したように思えならない。
しかしながら、地方分権−道州制も全てが、うまくいくとは限らないのではないか?
道州制の否定的な意見として、
①道都・州都への一極集中がさらに加速する。(佐藤栄佐久・前福島県知事などが主張している。)
②都府県の合併によって道州を設置すると、道都・州都とその周辺の声ばかりが重視され、合併で行政権を失った地域の声が軽視される。(小池清彦・加茂市長などが主張している。)
③財源を道州に移譲しても、税収が増える道州は南関東州(仮)といった富裕な地域だけに過ぎず、多数の道州は税収が減り、財政的にも自立性が低くなる。(石井隆一・富山県知事などが主張している。)
④都府県の廃止によって道州を設置すると、道都・州都から遠く離れた地域で災害が起こった時に、道州庁と被災地との連絡や、被災地への支援物資の輸送が遅れる危険性が高くなる。更に、道都・州都で災害が起こった時に、道都・州都以外が行政的な代替機能を持たない完全な「出張所」となっている場合には、道州全域が機能不全に陥る危険性も高くなる。
⑤道州制への移行を含む過度の地方分権は国家の分裂を招くおそれがある。
⑥都道府県に対する愛着が失われるおそれがある。
リンク [2]
が挙げられており、特に自治体の首長からの意見が出ていることが、興味深い。(おそらく、かなり当たっていると思われる。)
一方、全国世論調査(期間2006/12/2-3、面接調査)では、道州制に「賛成」・「どちらかといえば賛成」を含めて29%、「反対」・「どちらかといえば反対」を含めて62%であった。但し地方分権に「賛成」は62%になった。また地域ごとでは賛成は北海道、東北、四国で多く、反対は甲信越、九州で多い。「平成の大合併」で住んでいる市町村が合併した人の感想は、「合併して良かった」が19%、「合併しない方がよかった」が17%とほぼ変わらないのに対して、「どちらとも言えない」が63%に上った。
どうも、地方分権の対する人々の意識は、既に、行なわれている市町村合併には、賛否が良く分からず、道州制といった大きな変革に対しては、まだ、反対であるが、地方分権には、概ね賛成である。という結果が出ている。また、これらの意識は、地方によってもばらつきがあるようだ。
地方分権は、政府、各自治体の首長、国民の意識、そして、官僚と・・・いまだ温度差がかなりあると思われるが、制度改正は、政府主導で着実に行なわれている。
日本の骨格が、根本から変ろうという状況に対して今回の参院選挙でも、全く取り上げられていなかった。一体、私達は、どこに進もうとしているのか?
これからの動向に注視していくことが必要であろう。

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