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「プーチン王朝」確立へ加速

 
サンクトペテルブルク出身の改革派系経済エリートの利益を代表するメドベージェフ第一副首相(前大統領府長官)と旧KGB(国家保安委員会)や軍関係者によって構成される「シロビキ(武闘派)」の利益を代表するイワノフ第一副首相(前国防相)が有力大統領候補であるとか、肥満体で健康不安を抱え弱い首相で独自の権力基盤を持フラトコフが08年大統領選挙に出馬し1期限りでプーチンの返り咲きを演出するとか、巷で次期大統領候補の話題が沸騰しています。
しかし、プーチン大統領は12日に新首相に高齢の無名官僚ズプコフ氏を指名し、14日には、5年後の2012年に大統領選挙で再登板する可能性に言及した。プーチン王朝の確立にとって、5年間は如何に無能で老い先の短い子つづく飼いの「繋ぎ役」を担ぎ出すことのように思えます。
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以下は2007/09/16の産経新聞の報道です。

大統領候補、全員が旧友
■再登板、憲法改正も視野
 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン大統領が、来春の任期満了後も同国の政治・経済に影響力を行使し続けることを目指し、長期的統治体制の確立に向けて動き始めた。大統領は12日、新首相に自らに近い高齢の無名官僚ズプコフ氏を指名したのに続き、14日には、5年後の2012年に大統領選挙で再登板する可能性に言及した。「プーチン王朝」の確立に向けた動きが、今後さらに加速するとの見方が有力になっている。
 ロイター通信によると、プーチン大統領は14日、世界の著名なロシア学者やジャーナリストを招いたバルダイ会議で、米国の学者が12年にプーチン氏が大統領選に出馬する意思があるのかと質問したのに対しに、「ロシアの政情による」と述べ、必要であれば再登板する意欲を見せた。しかし、そのために次期大統領の立場を弱めるようなことはしないとも強調した。
 会議参加者らはこれを受け、「大統領が来春にただ霧のように消え去るのではなく、影響力を行使し続ける」ことを確信したという。
 大統領は会議で、来春の大統領選で「5人の候補がいる」と述べた。人物までは明らかにしなかったが、全員が大統領とサンクトペテルブルク時代からの旧友で、「信頼できる人物たちである」ことは間違いない。
 来年の大統領選挙まで半年に迫ったこの時期に、大統領があえて政界の表舞台におし出したズプコフ首相は、首相に承認された14日に早々と次期大統領への意欲を示した。後継候補の中でも別格であるのは誰の目にも明らかだった。
 ズプコフ氏は、サンクトペテルブルク時代からの上司のプーチン氏に別荘用地の確保を手助けするなど数々の実務を担うほか、大統領が誕生日のお祝いに招く数少ない友人たちの中に常に名前を連ねているという。一人娘は、連邦税務局長から国防相に大抜擢(ばつてき)されて話題となったセルジュコフ氏に嫁いでいる。
 ズプコフ首相は今後、矢継ぎ早に年金の増額など高齢者への福祉政策や富裕層の脱税、汚職の取り締まり強化など、数々の人気取り政策を打ち出し、「無名」からの脱却に専念するものとみられている。
 ロシアの大手メディアは事実上すべて、プーチン政権の支配下にある。独立機関のはずの同国中央選挙管理委員会も事実上、同政権の息がかかった人脈が運営する。
 ロシアの政治専門家らは、エリツィン前政権がプーチン大統領を作り出したように、世論を動かして次期大統領を創設することは可能とみる。ズプコフ氏の年齢と手堅いキャリアは影響力の維持をもくろむ大統領には魅力だ。一方で、5人前後の後継候補に最後まで競争させることは中央集権化への布石となる。「プーチン王朝の確立計画は始まったといえる」との指摘も出ている。
 今年12月2日の下院選挙では、プーチン翼賛与党「統一ロシア」がさらに伸長し、憲法改正を可能とする全議席450の5分の4以上を獲得するとの世論調査もある。プーチン政権は同選挙結果をにらみながら、長期的な統治体制固めに向けた憲法改正を検討している。そのなかには、現在4年、2期までと規定された大統領任期の延長や、大統領から首相に大幅に権限を委譲する案などが含まれている。
(以上)

プーチン王朝建立のシナリオは、ほぼ確立したように思えます。長期に亘って王朝を維持するため、様々な政治・経済局面においてわが国にも影響を与える事は必須に思います。
例えば、サハリン・プロジェクトにおけるガスプロム参画も、その王朝の意図を顕著に受けている一つの事例ではないでしょうか。突然降って沸いたように自然環境保護を理由に2007年4月、ロシア・天然資源省はサハリンエナジーの環境是正計画を承認した結果、 ロシアガスプロムがサハリンエナジーの株式の50%+1株を取得し、英蘭シェルが55%から27.5%-1株に、三井物産25%から12.5%、三菱商事20%から10%に減少となりました。今後、ロシアとの政治経済関係は複雑に変化してゆくことでしょう。しかし、「プーチン王朝」政策が背景にあることを明確に認識して対応することが必要なことではないでしょうか。
asia106-baikalu01-pacific-routemap01-new01.jpg図引用先:「サハリン1・2」プロジェクトの進展状況 [1]

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