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欧米の農業補助金は、大規模農業と企業を儲けさせる

日本の農業政策が向かう先は、米国型、EU型の農業政策である。
市場競争力という旗印の元、大規模農業を推奨し、企業参入を促進しようとしている。
この行き着く先は、大規模企業的経営による米国とEUの現在である。

米国とEUは、膨大な農業補助金を投入しているが、その補助金の多くは、大規模農業と大地主が享受している。

米国の状況を、2006年の大統領経済報告からみてみよう。

2005年は約200億ドル(約2.3兆円)の農業補助金
2006年大統領経済報告第8章(米国農業部門)によれば、2005年に連邦政府は、約2,700億ドルの生産額が見込まれる農業分野に、約200億ドルの農業補助金を投入した。
補助金の支給は、大規模な商業農家(年間農業販売額が25万ドル以上の農家)に集中しており、2003年には全農家数の9%に過ぎない商業農家(企業)が、農業生産の72%を占め、政府の補助金の51%を受け取っている状況にあった。
・農業補助金の目的が、低所得層を保護するためのものであるなら、現行の政策は失敗である。なぜなら、農業補助金の大部分は、一般家計よりも収入が多い農家家計に支給されている。

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次は、EUの農業補助金政策の状況

EU農業助成金
EUの農業助成金により、「高質で、安全な食品の恒常的供給を保証し」、それだけでなく「環境保護、家畜保護の保証も行っている」というのがEU農業担当委員Boelのうたい文句である。政治家、農業団体幹部、EU委員はこうしたスローガンの下に何十億ユーロにも及ぶEU助成金及び各国政府の何十億ユーロもの助成金で「農業」と名のつくすべてのものを助成金漬けにしている。
②助成金にもかかわらず毎年何万もの農家が破綻し、農業はモノカルチャー助成政策によりさびれる一方である。助成金の行き先は家族経営の農家ではなく、大部分が大土地所有者、農業ファクトリー、多国籍食品企業である。
④ドイツについてはまだ推定の段階だが、例えば大手製糖会社Sudzuckerは約220万ユーロ(約3.6億円)の農業助成金を受けていることを認めている。また巨大農業企業バルンシュテット(かつての東独農業生産組合。豚23000頭、肉牛3200頭、乳牛1100頭)には240万ユーロ(約4億円)の助成金が支給されている。180人の従業員一人当たり13,300ユーロ(約220万円)にあたる。
結果的に、企業規模に比例して、助成金も多額となる。ドイツ農民の80%(大部分の小農民)がEU助成金の1/3を分け合っている。平均すると農家一戸あたり5,300ユーロ(約87万円)。これに反し大規模農家、元(東独の)生産共同組合は平均して28,400(約469万円)の助成金を貰っている。
⑥EUの年間予算1,050億ユーロの約50%が農業関係に支出されている。(leonrosa注:農業関係予算は、8.7兆円)。イギリスの在ポーランド大使Crawfordは、「ヨーロッパの農業助成は、歴史上最も馬鹿げた、非道徳的助成政策である」と言い切っている。
とびきり馬鹿げた例が、イギリス女王に対する助成で、昨年58万ユーロ(約1億円)がEUから支給されている。「女王も土地所有者であり、農民である」というのがその根拠である。またウィンザーの農地耕作補助として20万ユーロ、息子チャールスも30万ユーロの補助を受けている。女王陛下の例にならい、Duke of Westminster 、Earl of Plymouth がそれぞれ65万ユーロ、英国で最高の金持ちの一人 Sir Richard Suttonにいたっては160万ユーロ(約2.6億円)の助成を受けている。
・ドイツでは農業政策に対する全支出の半分弱が農民以外に支払われている。多国籍食品コンツェルンは支社、子会社を経由してほぼすべてのEU諸国で助成金を吸収している。例えばスイスの食品コンツェルン・ネッスルは約4800万ユーロ(約79億円)の助成を受けている。この会社は昨年、50億ユーロ(8250億円)の純利益を計上した。

欧日協会、時の話題・巨大企業の肥料 [2]
欧日協会 [3]

写真は、ネスレの旧本社、食物博物館(アリマンタリウム)
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農業政策は、政府・自民党の「大規模農業育成策と企業参入促進策」と民主党の「農家直接補償策」が対抗して打ち出されている。
米国とEUの農業補助策の実態を紹介してみました。

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