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シリーズ「不動産投資ファンドの成長は続くのか?」13

【第13回:世界金融不安の日本への影響】 
 
サブプライム問題が尾を引いており、世界中で幾つかの銀行が損失を公表し始めていますが、まだまだ裾野は広いようです。金融界は戦々恐々と状況を見守っています。
 
当初、日本はサブプライムローン自体に手を付けている所は少なく、影響は小さいといわれておりましたが、問題はそう簡単ではありませんね。
 
今回は、サブプライムローンを発端とした金融不安が日本にどの様に影響を与えるかについて参考となる記事を紹介致します。不動産投資ファンドも御多分に洩れず相当な影響が予想されるというものです。(前回は、こちら [1]
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写真は、世界最大の投資ファンド、米ブラックストーン・グループのシュウォーツマンCEO。
今から日本に進出してくる目的 [2]や如何に・・・


CDOと日本の金融機関 [3] 「ぐっちーさんの金持ちまっしぐら」より(いつも参考にさせて頂いています)

アメリカのサブプライム問題で日本の金融機関はどのくらいの被害があるのですか?? まだまだたくさんあるのではないですか? と言う質問を多数受ける。
 
もちろん、これに端を発するCDOによる損害については当初ゼロ回答からスタートしている訳で、こちらのブログでもそれはないよ、大手になるとせいぜい1兆円くらいは投資していただろうから、その価値が毀損して20%くらいになっているとすると8000億円くらいのやられはありうると書いきましたね。
 
実際みずほ証券が1000億やられていたとの報道(わたしがみずほが発表した、と書いたらそれは報道か発表か、と問い詰めてきたコメントがあったが、あまり気にして使っていない。天下の日経の報道なのだ)が、先週出て、たかだか中間業者のみずほが1000億やられているということになると、実際自分のアセットで投資をしていた銀行は大体8000億くらいやられていても不思議はないね、という感覚でしょう。
 
問題は当初「何もありません」、といっていたいつもの体質で実際はこのくらいのやられはあるのです。

(中略)・・・・実はいま問題にしなければならないのはこのサブプライムで問題を引き起こしたCDO [4]という仕組み、これ自体は日本中できわめてポピュラーな仕組みで、バブルと言われる不動産、所謂ノンバンクに対する貸付、更にはM&Aに対する資金など、特に外銀が出してになっているローンはすべてこのレバレッジがかかったCOO仕立てになっているのだ、ということです。
 
だから何かがあれば今のアメリカで起きていることと100%おなじCDO惨禍が日本でも起きます。
 
サブプライムで思い知ったように、切り刻んだ資産が一方向に値崩れを起こして言った場合に、所謂シニア [5]の部分も毀損するということは確認済み。
 
例えば六本木ヒルズ一棟を資産にしたCDOがあったとしましょう。
良くも悪くも六本木ヒルズを見ていればいいですね。特別な場所にある特別な建物ですから、資産価格が毀損したとしてもたいしたことはないという判断はできるかもしれない。いづれにせよ、六本木ヒルズのリスクをとるかとらないか、これだけ。
 
しかし、世の中に出回っている不動産ファンドの大多数は、本当の値段はよくわからない、つまり当面家賃を払っている人たちのキャッシュフローをベースに計算して、例えばオフィスビル30等を集めて証券化していたりする。(サブプライムCDOとマッタク一緒ですね)。
 
エクイティー [5]は個人投資家もしくは外国ヘッジファンドに押し付けて銀行は上のローン部分を受け持つ訳です。このオフィスビル30棟を考えた場合、渋谷のビルが急に値下がりして来たとき、その他のビル(例えば新宿、恵比寿、大宮など)が逆に値上がりしていると考える根拠はあるでしょうか?
 
アメリカのサブプライムで見たようにこれは幻想です。
 
オフィスビルたるもの、東京中心地が下がれば必ず周辺部、地方も下がる。従って何かの拍子で下がり始めたらあっという間にエクイティーは吹っ飛ぶでしょう。

ここでリスクは二つ。
日本の不動産投資の直接、間接投資に外銀が大量に資金を供給していること。既にこれまで外銀(RBS,ドイツ、UBSが代表的)から融資を引っ張っていた不動産業者はこのアメリカのサブプライム問題以降、資金が引っ張れなくなって四苦八苦している。(わたしの所にこれだけ駆け込まれればわたしでも分かる・・・笑)。
 
従って、転売目的で保有された不動産を抱えて倒産するであろう中小業者が恐らく年末にかけて続出する。 (大手も相当苦しそうだが倒産はしないんだろうね)。
 
第2のリスク。
既に直接融資の資金を引き上げにかかってる外銀がCDOに出している資金まで回収にかかると・・・そのCDOは即時解約となり(コールオプション [6])、すぐに資産となっている不動産を現金化して回収しなければなりません。
 
つまり、ひとたびコールがかかれば一気に売り手が増えてくる可能性があるわけですね。まさに・・・・いつか来た道、という訳です。
 
今回は80年代とは違って株の値崩れが原因ではなく、不動産市場に大量に資金を供給してきた外銀の撤退がきっかけになると言う訳です。そしてCDOという商品の性格上アメリカで起きているのと同じことが日本で起きます、間違いなく。
 
外銀が最初に撤退を始めたノンバンク、パチンコチェーンに倒産が増えてきたことをみれば次は不動産、というのが衆目の一致したところ。その受け皿になるだけの力があるのは、日本の金融機関ではなく、実際は中国、ロシア、中近東などのマネー、ということになる筈です。しかしながら、これらのCDOに関するトラブルは今アメリカで起きていることとマッタク同じことだ、ということを再度強調しておきます。
 
アメリカの(ドル建て)CDOの毀損によるダメージは繰り返しますが限定的です。(ゼロだといったのでわたしが噛み付いた)。しかし、この問題に端を発する外銀の撤退が日本国内のCDO問題に火をつけるとわたしは見ています。これは早ければ年末にも発生する筈です。その準備はみなさんできていますか??

 
現在の東証REIT指数 [7]は、今年5月のピーク時に比較して約2/3近くに下落しました。昨年夏からの急激な上昇はバブル気味だったと思われますので、今は元の水準に戻ったともいえますが、ここまで急激に下がると相当苦しい所も出てきていることは容易に推測できます。
 
それでもこのレベルを維持できてこの不安定期を乗り切れれば良いのですが、引用にある様に『外銀の撤退=資金の引き上げ』という外的要因が明確にでてきた時には耐えきれないことになります。
 
今の日本の金融市場には外資が相当入り込んでいますので、その外資の動向=世界規模での金融対策が今後どの様な展開を見せるかで日本の金融市場も左右されるということです。(これは、ある意味では当たり前の話ですが、構造を理解しておくことが重要)
 
今回のサブプライムローン問題を発端とした世界金融不安はこの先少なからず経済の減退を引き起こすことは間違いないでしょう。それが恐慌的クラッシュなのか、ソフトランディングなのか、その中間なのかはまだまだ分析が必要です。
 
いずれにしましても、金儲けの手段としてバブル化した日本における「不動産投資ファンド」の先行きは非常に暗いという評価にならざるを得ません。
 
但し、もう少し付け加えるならば、『歴史は繰り返される』ということがあります。今のシステムが残り続けるのならば、バブルが弾けた後の不良債権(不動産を含む)はやがては再び投資対象になり、不動産投資が活況を向かえるという循環です。この経験は’90年代のアメリカが経験済みです [8]
この循環によって社会資本が徐々に国際金融資本に集積されていくという構造を見逃す訳にはまいりません。今からでも日本に外資が参入してくるのは、これを見越したものだとも考えられます。
 
’70年代から日本に進出し、過去のバブルを創り出し、さらに弾けさせては儲けて、それを繰り返しながら支配を進めていく・・・・アメリカが辿ったのと同じ道を日本も歩まされているのかも知れません・・・・
  



 
本シリーズは、外資の日本参入、その思惑や戦略、そしてそれが日本経済ひいては日本社会に与える影響を不動産投資ファンドというシステムを軸として切開していこうという目的 [9]で始まりました。しかし、劇的な市場環境の変化を前にして、「不動産投資ファンドの成長は続くのか?」というタイトルでは本来の主旨を表現できなくなってきました。
 
そこで、本シリーズは今回で終了し、新たな展開に取り組みたいと考えています。今までご愛読ありがとう御座いました。今後も宜しくお願い致します。(愛読者ってどの位いたのかな・・・?
 
クリックして頂けると新展開に気合いがはいります。
by コスモス

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