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本当の地方再生とは?片山善博氏インタビューから

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鳥取市の鳥 「オオルリ」
地方分権化、道州制について、昨年から政府が積極的に議論をしていますが、今年始め、日経ビジネスのインタビューの中で、「改革派知事」で鳴らした前鳥取県知事の片山善博・慶応義塾大学大学院教授が、今までの国と地方との関係を鋭く指摘した記事がありましたので紹介します。
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Q:今年も地域格差の是正が大きな政策課題となります。自治省(現総務省)職員から鳥取県知事に転身し、2007年4月まで2期8年間、知事を務めた片山さんから見て、地域格差是正のためにどんな政策が必要だと思いますか。
片山:はっきり言って地方自治体には「休みなさい」と言いたいですね。自治体はもう頑張らずに、しばらくは“癒しの期間”に充てた方がいい。国もそういう頑張らない自治体を応援するような政策に転換した方がよいと思います。
Q:いったい、どういうことですか。
片山 これまでも「霞が関(=中央官庁)」は地方対策をいろいろ考えてきたんです。そして、自治体もそれに乗って頑張ってきた。で、結果はどうですか。いくらやっても効果は出ない。逆に、地方はますます疲弊するばかりです。 結局、自治体が何をやってもダメでなんですよ。これまでのように漫然と政府の言う通りのことをやっているようでは。霞が関の地方対策というのは、「地域振興のためにお金を使って、事業をやる自治体を政府が応援しましょう」という発想です。つまり、政府の言う通りに道路を作ったり“ハコもの”を作ったり、アレコレやった自治体には政府が交付税増額などのご褒美を上げましょうと。こんな発想ではまったくダメなんです。これまでの経緯を見ても、そのことは明らかでしょう。
だいたい霞が関の人たちが本当に考えていることは自分たちの役所の権限を拡大することばかりです。今回だって「格差是正、格差是正」と言いながら、本音は新規政策をネタにして自分たちの予算をいかに多く取るかということにある。
そんな霞が関の政策に自治体が食いついたって、うまくいくはずがありません。 格差是正策を打てば打つほど地方財政は破綻に近づく自治体が抱える膨大な借金はまさにそうやって作られたのです。
政府はバブル崩壊後に大規模な景気対策を毎年やりましたよね。その際、補正予算で追加した公共事業の多くは、実は自治体にやらせたんです。自治体はその財源を地方債で賄ったために、ここにきて当時の借金が自治体財政を大きく圧迫するようになったのです。
では、なぜ自治体はそんな借金をしてまで公共事業に取り組んだのか。
理由は、政府が自治体に公共事業をやらせるために「地方債の償還財源はすべて後年度に地方交付税を上乗せして補填する」と言ったからです。自治体にしてみれば、自分の懐がさほど痛みませんから、政府の言う通りに地方債をバンバン発行して大量のハード事業をやってしまったのです。
ところが、財政再建を掲げる小泉(純一郎)政権の「三位一体改革」で地方に配分する交付税の総額が大幅に減らされてしまった。そのため、かねて自治体が当てにしてきた交付税の上乗せは実現されませんでした。だから今、多くの自治体が借金を返すのにヒーヒー言っているわけです。
自治体にしてみれば、「政府にだまされた」ということになる。
要するに、政府の言う通り頑張ってきた自治体がここにきて苦しんでいるわけです。だから、もう自治体は頑張らない方がいい。政府の“甘言”に乗って、かつての公共事業のように要らないことをしてはいけない。
「覚えておけ」と農水省の捨て台詞
現に、私が鳥取県知事をしていた頃に、こんなことがありました。
先ほどの政府の補正予算による景気対策で、農林水産省は「農道を作れ、漁港を作れ」と県に盛んに勧めるわけです。我々が「必要なものは当初予算で手当てをしたから」と断ると、農水省は何と言ったと思いますか。「覚えておけ」ですよ。そして実際、翌年度の農水省からのお金は減らされてしまいました。
農水省は結局、鳥取県に勧めた農道や漁港の整備費を他県に回したんです。彼らの念頭にあったのは鳥取県の農家や漁民に必要な農道や漁港を作ることではなく、自分たちの予算を消化する(使い切る)ことにあったわけです。
だから、もういい加減、政府は「景気対策だ、地域振興だ」と言って、自らの権限を拡大するための無駄な公共事業をやめなければいけないのです。
リンク [2]
片山氏は、自治省に入省後、税務署長、県地方課長、自治官僚そして知事という経歴の持ち主です。
ですから、地方、国の実情や関係を非常に良く知り尽くした人物であり、国と地方の本音がどこに有り、単に、制度や枠組みを換えていくのではなく、もっと根本的な構造から、見直すべきではないかといった事を、このインタビューでは、述べたかったのではなかったかと思います。
そういう意味では、地方分権改革の本当の改革は、国や地方がどうのといった事ではなく、今までの悪しき慣習、既存の発想からの脱却が必要であり、これは、まさに旧い制度から決別する事から始めることからしか真の改革は、生まれてこないとはいえないでしょうか?

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