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せまる『ポスト京都議定書』枠組み:日本の主張は?

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■環境省、排出権取引で独自制度検討 [1]
 環境省は6日、温暖化ガス削減を目的とした国内排出権取引制度の検討を始めた。専門家らで構成する検討会で議論を開始したほか、田村義雄事務次官をトップとする排出権取引制度のプロジェクトチームを発足させた。先行する欧州連合(EU)の方式などとは異なる日本独自の仕組み作りを目指す考えだ。    
6日の「国内排出量取引制度検討会(座長・大塚直早稲田大学大学院教授)」には、鴨下一郎環境相も出席し、「日本のルールを国際標準にする」と表明した。             
検討会は論点の一つである排出枠の配分方法を中心に議論した。過去の排出量実績に応じて枠を割り当てるEU方式では、省エネルギーが進んでいない企業ほど大きな排出枠が認められるため、公平性の確保などが議論となった。検討会は4月中にも中間報告をまとめ、5日に発足した政府の地球温暖化問題に関する有識者懇談会の議論に反映させる。




「(つд⊂)ゴシゴシ(;゜ Д゜) ……!? 何を今さら」


と読んだ全員がツッコミを入れたくなるようなニュースですが、7月に洞爺湖サミットを控えて「とりあえず何か提案しなくては」と言ったアセりが伝わってくるようです。


何しろ締め切りだけはきっちり守る規範体質のハズがこの体たらく…


■ポスト京都議定書:日本の提案提出、締め切り間に合わず [2]
 2013年以降の温室効果ガス削減の枠組み(ポスト京都議定書)づくりの国際交渉が月末にスタートするのを控え、ほとんどの主要排出国の提案が出そろう中、日本は締め切りを10日以上過ぎても国連に未提出のままでいることが5日分かった。国内の合意形成の遅れが原因で、提出時期は未定。国連は、日本抜きで主要26カ国の提案集を配布し始めた。




すっかり出遅れです。既に日本抜きの提案集が主要国に配布済み。なんかもうこんな感じです。

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原因は国内の合意形成が遅れた為とされていますが、何でこんなことになってしまうのでしょう。


 国内の合意形成が出来ないのは経産省と環境省の意見の食い違いと見ていいでしょう。(経産省vs環境省 環境税めぐり火花 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/90445/)何が何でも目標達成して議長国の面子を守りたい環境省と、国内産業を守る為には無用な負担を抑えたい経産省。ここまでこじれてしまうのは、単にCO2を削減するだけでは京都議定書の目標達成は困難というかはっきり言って不可能だから。


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 6%削減というのは1990年が基準になるから、今から4年であと13%減らさないといけない。これはどう見ても絶望的で、無理やり目標を達成しようと思えば、どこかから排出権を買ってくるしかない。これは国内産業に負担を強いるだけではなく、他国の排出する権利を買っているだけだからCO2削減にはならない。こんな百害あって一利なしの取引なぞやりたくないが、゛京都″議定書、゛洞爺湖″サミットという面子の゛ダブル約満状態″の日本は雀卓をひっくり返すわけにもいかないという困った状態にあるわけです。


しかしこんな事態になることは少し考えれば予測できたはず。下の2つは『るいネット』の去年の投稿。

京都議定書で嵌められた日本1『EU各国が8%の削減でまとまったのはなぜか?』 [3]
 EU各国内での排出排出権取引という先進工業国に不利な状況は初めからなく、ドイツやイギリスは自国だけでも目標を達成でき、かつ、ポルトガルやギリシャなどの低排出国の排出権は、足りなくなる日本に売って儲ける原資とできるのだ。これで、EU各国は何らかの利益が出るので、全体で8%の合意が出来たのだろう。

京都議定書で嵌められた日本3『京都会議時点ではなく90年が基準年なのは?』 [4]
 EUが環境対策に積極的であるというイメージはトリックだったのだ。それを真に受けて、日本だけまじめに、実現性のほとんど無い環境対策を実施しようとしている。その結果として、彼らの市場は潤い、環境破壊はさらに続くのである。



こんな連中を前に今さら排出権取引だの、環境税だのを持ち出しても゛美味しく頂かれてしまう″だけです。

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そんな日本が7日にようやく国連に提出したのがこれ。




 2013年以降の温室効果ガス削減の国際枠組み(ポスト京都議定書)づくりに向けて、今月末に始まる国際交渉について、政府は7日、日本の提案を国連に提出した。長期目標や革新的技術開発など提案を8本柱にまとめ、特に中期目標では、業種や分野(セクター)ごとに効率指標を使って潜在的な削減可能量を算出、それを積み上げて国別の総量目標を決める「セクター別アプローチ」の方法論を詳述した。
 さらに、途上国の範囲を明確にし、経済発展によって「卒業」する基準を設ける。
京都議定書では90年とされている基準年を見直すことを求める。  【リンク】 [5]




だ・か・ら・何を今さら・・・ il||li _|‾|● il||li




 おそらく「洞爺湖サミット」では排出権の国際取引に関する具体的な基準などが話し合われるでしょう。
そんな中、「目標が達成できなければ面子が立たない」などと排出権を購入しまくって解決する愚作を取れば、いつぞやの戦争の時のような「カネで解決の国」というレッテルを貼られ、なおかつ「世界一のカモ」として毟られ続けるだけである(例え何年か遅れで目標を達成しても、さらに基準は厳しくなり、排出権の価格も吊上げられるのがオチ)。


 そんなことになるくらいなら、本ブログで紹介されている『地球温暖化CO2説を切る』 [6]や、 『京都議定書で嵌められた日本』 [3]にあるような主張をサミットで堂々と主張した方がよっぽど国益に適うと思うのだがどうでしょう。

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