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現代資本主義の根幹を揺るがす、ドイツの脱税スキャンダル

2月14日、「ドイツ郵便 ( Deutsche Post ) 」クラウス・ツムヴィンケル総裁の脱税が発覚し、辞任に追いやられた。脱税額がドイツ史上最高だったことから、大きなスキャンダルとなった。
この事件は、日本ではまったくと言っていいほど報道されていないが、現代資本主義=市場原理主義の根幹を揺るがす事件ではないかと感じている。
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Lichtenstein1.jpg
写真はリヒテンシュタイン城。根幹が揺らいでいる?


まずはマスコミ報道 [1]
ドイツ郵政のボスがリヒテンシュタインのタックスヘイブンで脱税していたことが発覚し、摘発を受けたとのこと。
他にもドイツでは裕福な事業家や著名スポーツ選手、芸能人ら1000人もが税当局の目を逃れ、総計40億ユーロ(約6400億円)をリヒテンシュタイン内の秘密信託に預けていた疑いが浮上している。
しかしながら、リヒテンシュタインをタックスヘイブンとして活用しているのはドイツ人だけではなく、タックスヘイブンはリヒテンシュタインだけではないので、芋づる式に事実が解明されると、想像を絶する世界的な脱税規模が明らかになるはずだ。
こうなると、私を含めて、まじめに(?)納税してきた大衆の大ブーイングは避けられそうにない。
そうなる前に今回の事件がどういう意味をもつのかを落ち着いて整理しておきたい。
まず、原田武夫氏の2月27日ブログ記事
ドイツの「大脱税捜査」という裏サブプライム・ショック [2]
を引用させていただきたい。

さらに考えていくと両者にはもう一つ共通点がある。
それはこれまでの金融資本主義ではそれが「常識」であったがゆえに、一定の方向での期待値が高まってきた事柄が急激に方向転換した結果生じた出来事だということである。
すなわち、「サブプライム・ショック」はそもそも米国における住宅価格(不動産価格)がさらに上昇するであろうとの期待の下、次々に「サブプライム・ローン」が売買され、世界中の金融機関にその芽がまかれていったところに特徴がある。

これに対し、今回の「大脱税事件」については、今度はカネをつくる場面ではなく、貯める場面においての「常識」として存続が前提とされてきた欧州の小国というタックス・ヘヴンが血祭りに挙げられてきたことを注目すべきである。つまりそこには「まさか欧州のタックス・ヘヴンがつぶれることはあるまい」との高い期待値があったということである。

カネをつくる場面における「高い期待値」と、カネを貯める場面における「高い期待値」———サブプライム・ショックとこの大脱税事件は、金融資本主義のいわば「入り口」と「出口」でつながっている出来事なのだといっても過言ではないのではなかろうか。

消費活動には限界があり、よって消費活動を動力源にした市場拡大にも限界があることに気付いた金貸したちは困り果て、新たな市場拡大手法を編み出した。
錬金術 = サブプライムに代表されるカネの創出手法の開発と
タックスヘイブンを活用した私財の保護 = 脱税の常識化が、その両輪。

国家を超越した、これらの金融システムによって、市場原理主義は文字通り暴走を始めたのである。
逆に言うと、国家を苗床にした消費経済が成長しなくなり寄生できなくなったので、彼ら=金貸しは、国家から市場を遊離させ暴走・膨張するよう加工したうえで、そこに再寄生する(金融業を営む)という生き残り戦略をとったのだ。
こうしてみてゆくと、昨年のサブプライム問題、今年に入ってのタックスヘイブン経由の脱税スキャンダルの重要性が理解できる。
暴走を続ける市場原理主義は、その両輪を一度に失いかねない状況なのだ。
膨張した市場が一気に破裂する可能性は高い。
もしそうなれば、世界中を巻き込み、空前の世界大恐慌を招くことが、否が応でも予想できるだろう。
(ところで、なぜ今ドイツがこのような強攻策にでたのか気になるところ。何か掴めれば別ブログ [3]ででも取り上げてみたい)

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