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基軸通貨ポンドは衰退、されどロンドンは金融覇権の一翼を担っている

世界の基軸通貨の成立、大英帝国ポンドから米国ドルへの転換については、るいネットの以下の投稿にまとまっています。 
 
中央銀行の系譜と世界初の為替銀行 
リンク [1] 
 
【基軸通貨】英国ポンドと米国ドル比較 〜基軸通貨化から四半世紀で転換期!?〜
リンク [2] 
 
英国基軸通貨ポンドの衰退過程
リンク [3] 
 
金融覇権の都市移動でみると、ジェノバ、ヴェネチア、アムステルダム、ロンドン(シティ・オブ・ロンドン)、ニューヨーク(ウォールストリート)と移っている。 
 
現代の金融ニュースには、ジェノバ、ヴェネチア、アムステルダムは余り登場しないが、ロンドンはNYと並ぶ頻度で登場する。 
 
国際金融(金貸し)の本拠地としては、ロンドンは依然として、NYと並ぶ拠点となっている。そして、サッチャーの新自由主義政策により、英国が「金融立国」ともいえる「復興」を果たしている。 
 
その様相を、野村総合研究所の近藤さんのレポートから紹介してみます。 
 
①英国のGDPに占める金融業の比率は、2006年で9.4%。2001年以降、継続的に拡大しており、低落傾向にある製造業とは対照的である。
②法律、会計となどの金融業に近い専門サービスを加えると、GDPに占める比率は製造業を逆転している。
③不動産業を含めた雇用数は、2006年で64万人、全雇用数の20.5%を占めている。
④2000年から2006年への雇用者増加数185万人のうち、金融・不動産業が88万人。雇用者増加の半分を占めている。
 (③とは整合していませんが、近藤さんのレポートではそうなっています。)
⑤金融業を中心にしたこのようなプロフェッショナル産業は、英国にとってまさに基幹産業である。
⑥英国は、対外資産はマイナスであるが、投資収益はプラスである。
⑦海外から預金を集め(低利の資金を導入し)、ベンチャーキャピタルや投資銀行のように投資し、利益を上げている。 
 
参考:「金融立国・英国」
リンク [4] 
 
英国の金融復興には、サッチャー政権が手がけた「都市再開発」が密接に関係しています。 
 
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それは、手狭となったシティ・オブ・ロンドンから、金融センターの受け皿として、ドックランズ再開発の一つとして、カナリー・ワーフが完成したからである。 
 
ドックランズ(London Docklands)は、イギリスのロンドン東部、テムズ川沿岸にあるウォーターフロント再開発地域の名称。 
 
カナリー・ワーフはロンドン・ドックランズの西インド・ドック(ドッグ島)を中心とする地域。ロンドン中心部の古くからの金融街である「シティー」に対抗する様に、イギリスの三大高層ビル(ワン・カナダ・スクウェア、HSBCタワー、シティグループ・センター)が建設されている。 
 
このカナリー・ワーフにどのような金融機関が進出しているかは、以下の図に詳しく出てきます。 
 
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図は、銀行員.comの山本金融大臣インタビューから拝借しました。
リンク [5] 
 
商業銀行では、HSBC(香港上海銀行本店)、クレディ・スイス銀行、シティグループ(シティ銀行)が拠点を構えている。
投資銀行(証券会社)では、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズ、ベア・スターンズが拠点を置いている。
それ以外にも、大手の会計事務所KPMGや法律事務所が立地している。 
 
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写真は、ウイキペディアのカナリー・ワーフの項から使用。
HSBCタワー(左)、ワン・カナダ・スクエア(中央)、シティグループ・センター(右) 
 
ロンドンには、世界最大の通信社「ロイター・トムソン」がある。また、世界の保険(海運保険や各種再保険)の元締めである「ロイズ・オブ・ロンドン」が本拠地を置いている。 
 
英国ポンドは、退場しつつあるが、金融覇権都市・ロンドンは健在なのである。 
 
そして、金融都市ロンドンが主要に取り扱うのは、ポンドとドル(米国ドル、豪州ドル、カナダドル)。 
 
その意味では、フランクフルトにある欧州中央銀行の「ユーロ」とは、距離を置いている。 
 

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