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炭素本位制時代は来るのか? 1 (洞爺湖サミットで日本はどうなる?)

【温暖化対策に低利円借款・政府方針、5年で5000億円上限】

 政府はアフリカやアジアなどの途上国が進める地球温暖化対策を支援するため、金利が通常の半分程度の新しい円借款制度を創設する方針だ。今後5年で5000億円を上限に、温暖化対策に積極的に取り組む途上国に供与する。7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)でも支援策を公表し、日本が世界各国の温暖化防止対策に積極的に取り組んでいる姿勢をアピールする。
 創設するのは「気候変動対策円借款」。一般の円借款の金利は供与国によって異なるものの、償還期間が40年間の場合、年1—1.2%程度。気候変動対策円借款はこれを同0.4—0.5%程度に引き下げる。金利を下げることで、途上国の負担を減らし、温暖化ガスの排出削減に積極的に取り組むよう促す。(5/15 日本経済新聞 [1])

 自国開催の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)に向けてなんとか主導権をとろうとしているようです。
 6月4日の投稿でも紹介された通り「京都議定書」では日本は完全に嵌められたわけですが、その後も日本が提案する「CDM(クリーン開発メカニズム)」はことごとく却下されたり、排出権取引ではEUの後塵を拝したりと全くいいとこ無しの日本が主導権を握れるとはとても思えないのですが…。
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全国地球温暖化防止推進センター [2]」より
 これを見ると日本とEU諸国のCO2排出レベルはほぼ同じように見えるがGDP比で見るとEU諸国の56%の排出量でしかない。本当の日本は現在でも圧倒的な低CO2排出国なのである。


 今回の「新しい円借款制度」の目的は、ODAの拠出金ではCDMに認められないとされてしまったことに対する対策と、日本画が提案する「セクター別アプローチ」に対する発展途上国の協力を取り付けるためでしょう。何しろ、京都議定書のままでは日本が金を巻き上げられるばかりなのですから。
 さすがに日本政府もこのカラクリには気付いているようで、名指しこそしないものの非難を口にし始めています。
【福田康夫首相、EUを暗に非難? 「実際に削減努力や技術開発につながる実効性あるルール、マネーゲームが排除されるマーケットを作っていくことが重要」】

 福田康夫首相は9日の日本記者クラブでの会見で「福田ビジョン」を発表。温室効果ガスの排出枠を売買する排出量取引制度や、二酸化炭素(CO2)削減の中期目標をめぐる日本のこれまでの慎重姿勢を転換した。首相がとりわけ力点を置いたのは「地球温暖化対策の国際世論を主導してきた欧州連合(EU)を牽制(けんせい)すること」(周辺)だ。ただ、首相が掲げた方針が地球温暖化対策をめぐる国際交渉の前進につながるかどうかはなお不透明といえる。

 EUは排出量取引制度を2005年から導入しているが「実際に効果が上がらず、カネだけが飛び回る結果に終わった」(周辺)との認識が首相官邸に広がっている。CO2削減についても、EUは2020年までに20%削減することをすでに打ち出しているが、経済産業省や財界を中心に「EUが掲げる目標の具体的な根拠を聞いたことがない」(政府筋)との不満もある。
 首相は会見で、CO2削減目標について「政治的なプロパガンダみたいな目標設定ゲームに時間を費やす余裕はない」と指摘し、排出量取引制度に関しては「実際に削減努力や技術開発につながる実効性あるルール、マネーゲームが排除されるマーケットを作っていくことが重要だ」とも強調した。名指しこそ避けたものの、EUへの批判を暗に繰り返したといえる。(リンク [3]


 政府筋が「EUは排出量取引制度を2005年から導入しているが、実際に効果が上がらず、カネだけが飛び回る結果に終わった」と言っているのですからマスコミはもっとこうした事実を積極的に報道すればよいと思うのですが、TVで流されるのは相変わらず能天気なエコ番組ばかり。
 少なくとも日本のマスコミに繋がる勢力は、日本に主導権を握らせる気持ちはさらさら無いようです。
 

[4] [5] [6]