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激化する地銀の生き残り競争

日本の地方銀行を取り巻く経営環境が年々悪化する一方のようだ。
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ここ最近、地銀同士の生き残りをかけた再編が加速している。報道も後を絶たない。

13日明らかになった荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)の経営統合劇は、経営環境が一段と厳しさを増す地方銀行が県境を超えた広域再編に生き残りをかける姿を示している。多くの地銀が、地方経済の低迷で収益源の中小企業向け貸し出しは伸び悩み、不良債権処理の負担も増えている。米サブプライムローン問題をきっかけにした金融市場の混乱で保有株式の価値が目減りするなど収益を圧迫する要因は増えるばかり。地銀再編のうねりがさらに加速しそうだ。2008年5月14日読売新聞 [1]より引用

尚、過去2年の再編事例を整理してみると・・・
2007年
・福岡銀行(福岡)と熊本ファミリー銀行(熊本)が経営統合し、ふくおかFGの傘下に入る
・山形しあわせ銀行(山形)と殖産銀行(山形)が合併し、しきらやか銀行になる
・自力再建を断念した九州親和ホールディングスがふくおかFGの傘下に入る
2008年
・池田銀行(大阪)と泉州銀行(大阪)が経営統合の計画発表
・金融庁が足利銀行を野村證券グループを中心とする陣営に譲渡する方針を決定
営業地域や顧客基盤による棲み分けに守られてきた地銀経営が瀬戸際に追い込まれている現実を示している。
地場の中小企業と共に地方経済の中軸プレーヤーとして力を発揮した地銀に、今一体何が起こっているのだろうか?その原因を探ってみた。
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●地方経済の後退
地銀の経営の要は中小企業を中心とする貸出と言われる。
貸出による利益はメガバンクが業務粗利益の半分を切っているのに対し、地銀・第二地銀は8割近くを占めている。リンク [2]
しかし、この地方経済が年々悪化の一途を辿っている。原材料高や長期にわたる公共事業費の削減などで建設業を中心に低迷し、地方企業の資金需要が陰りを見せ、また貸し倒れリスクも高まっている。
●貸出の利ざや収入が低迷
追い討ちをかけるように、メガバンクが地銀の営業圏内に手を突っ込んできている。
「メガバンク中小企業に融資攻勢リンク [3]
メガバンクは低金利を武器に地方に切り込んできている。特に人口急増地区や富裕層の多い地域では特に融資競争が激しい様子。
 地銀の生命線とも言える貸出の利ざや収入が、融資獲得競争の激化で低迷する一方となり、経営をより一層厳しい状態に追い込んでいく。
●資金(預金)は集まるが、運用先に困る
これを象徴する事例がサブプライムローンによる多額の損失だろう。地方経済の減退と、貸出金利の低迷で困った地銀は、株式などの有価証券の運用に活路を見出した。そこにサブプライムローンを発端とする金融市場の混乱が直撃。
上場企業の最終利益4分の3が前年より減るリンク [4]
カネ余りと信用不安も相俟って預金は黙っていても集まるが、稼げる運用先が見出せない状況が続いている。
●忍び寄る外資
外資系ファンドが多くの有力地銀株をひそかに買い集め、5%超の株式を保有する筆頭株主に踊り出るケースが相次いでいる。
以下、銀行の発行済み株式に占める保有率データ
沖縄       英シェルチェスター     8,2%
東和(群馬)   米リバティ・スクウェア   7,3%
秋田       米ブランデス        6,2%
岩手       英シェルチェスター     6,1%
常陽(茨城)   英シェルチェスター     6,1%
長野       豪プラチナム        5,1%
横浜       米ドッチ・アンド・コックス 5,1%
きらやか(山形) ジェイ・ウィル       5,1%
関東つくば    英オデイ          5,1%
         英ブルークレスト      5,4%
山陰合同     米ブランデス        7,5%
投資ファンドの保有率が上がれば、短期的な利益の獲得を狙っての増配要求や利益追求圧力が強まることが予想される。
これから地銀を取り巻く環境は厳しさを増し、一層淘汰圧力が働くことは間違いない。
全国110行と言われる地銀が再編を繰り返すことで、全体数が減少し、メガバンクの傘下に入る流れも加速すると思われる。
地方銀行は、地元企業を育て、強いては街全体を活性化させる機能があった。
ところが、都市銀行への吸収合併や投資ファンドの要求が加速すればするほど、都市と地方との経済格差が広がることになるだろう。

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