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中国の排出権取引の現状

○中国の排出権取引の実態
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「悠久の昔から、黄河は中国北部の大地と人々をうるおし続けてきた。だがいま、めざましい経済成長の陰で、母なる大河が深刻な危機に陥っている。」ナショナルジオグラフィック [1]から
このような危機の一方で環境貢献の掛け声のもと中国の排出権取引量(CDM:グリーン開発メカニズム)は世界の40%を占めるという記事(月刊誌「選択」08年7月号)がありましたので紹介します。
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以下、記事の抜粋です。

・中国政府は02年月に京都議定書を批准し、04年10月に排出権を初めて承認した。
・北京では「棚からぼた餅」の排出権取引の決定権限を誰が握るかの綱引きで暗闘が続いた。
結果、国家発展委員会に権限を集中し、省レベルでは委員会の地方処が監督することになった
・排出権取引の勘所はタイミングである。他国よりも早すぎず遅すぎず、つまり、まだ供給が不足気味という頃合を見計らって一挙に排出権を売りまくり、価格決定権を握れば、利潤を最大化できる
・今、中国では天然ガス発電、風力発電、水力発電の計画が目白押しである
・中国も地球環境問題に本腰を入れ始めた、というわけではない。温室効果ガスの排出権を発生させ、これを日本や欧州に売ろうというのである
・国連に登録された内、天然ガスが390万トン、風力発電が660万トン、水力発電は43万トン、その他の登録分も合わせて金額換算すると150億ドル(約1兆5900億円)になる
・世界CDM市場で売り手としての中国シェアーは40%で第一位、次がブラジルの16%、インドが12%。
・中国は排出権の値上がりを見込んで、売り惜しみをしている内にブラジルやインドにシェアーを奪われそうになった。失地回復のため、06年に委員会はフッ素ガス削減による排出権取引、あわせて4つの大計画をたてつづけに承認した。
・温暖化効果が炭酸ガスの11700倍ときわめて高い、このフッ素ガス削減計画により中国には毎年ざっと520億円が転がりこむ。
・この取引の仲介をしたのが三菱商事や三井物産等の日本企業であり、買ったのは東京電力を初めとする電力会社と新日鉄
・新日鉄や東電の社長は排出権取引には慎重だが、規制が強化されてからでは排出権の価格が高くなるから、安いうちに買い集めておこうというリスク対策をとっている。
・しかし最近はこのような中国の排出権取引に対し国連CDM理事会は「完全に国家主導の中国だけに、国家が排出権による儲けを画策しているとまで決め付けられないとしても、排出権ビジネスに誘導しているきらいはある」と審査の目が厳しくなっている。
・そしてその莫大な利益の一部が政府高官たちの懐に入る可能性も否定できない。
・国家発展改革委員会の解振華副主任は「登録済みの排出権計画が実現すれば、150億ドルの収益があり、そのうちの30億ドルが基金に回される」と嬉々として語る
排出権を「宝の山」として捉える中国の姿勢は、これから盛んになる排出権ビジネスの内実を示唆している

★お人よしの日本政府が京都議定書で温暖化ガス削減の足かせを嵌められ、排出権取引市場の創設 [2]に走らざるを得ないように外堀を埋められ、キャップ&トレード [3]で企業には強制的に温暖化ガス削減の枠が嵌められる。
環境貢献の名の下で、CO2が温暖化の主犯かどうかの検証はどこかに置かれ、否も応も無く企業は排出権取引に引きずり込まれる。それで環境改善が達成出来ることが確認できればまだしも、この中国の排出権取引に対するやり方を見る限り、日本がこれからも購入せざるを得ない莫大な排出権取引で投下された資金が中国その他の国で本当に地球環境の改善になるのかは極めて怪しいといわざるを得ない。

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