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世界は多極化する? 〜ドル安懸念から各国は通貨供給量を増加させている?その2〜

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原油、食料高騰、ドル安進行により、世界的なインフレが進んでいます。とりわけ深刻なのは途上国や新興国で、消費に占める食料品やエネルギー関連の支出の比率が高いため、2ケタの物価上昇率に苦しんでいる国も少なくないようです。また不満を募らせた市民が街頭デモを繰り広げるなど、社会不安に火がつく恐れも出はじめています。
スペインやフランスでは、数万人のトラック運転手がガソリン価格高騰に抗議するストライキを行い、各地の幹線道路や国境付近を封鎖。エジプトでは、小麦粉の補助金削減に抗議した群集が道路を封鎖し、警官隊と衝突。さらにインドのカシミール地方では、燃料費高騰に数千人の公務員が抗議デモを行い、警官隊が放水銃で応戦する騒ぎとなっています。
 これらは世界中で大きく報じられているニュースのほんの数例にすぎません。食料品や燃料の価格上昇に抗議する声は高まる一方です。
世界的にインフレがひどくなっている理由は様々考えられますが、主には世界の主要商品の価格を形成している米ドルの供給量が急増し、ドル安が進行したためだと考えられます。
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特に新興国はドルペッグ制を採っているので、ドル安がそのまま自国通貨安となり、輸入物価上昇を招いてしまいます。加えて、新興国側では、膨張する貿易収支黒字分が国内過剰流動性に化し、通貨供給量が先進国の3倍以上の20%台に達しています。
(新興国の金融当局が、ドルペッグ維持のため、流入するドルを買い、自国通貨を売るオペレーションを実行する度に、国内に通貨を供給してしまっている。)
例えば、中国の5月のインフレ率は7.7%。4月の記録的な8.5%から減速したものの、昨年上半期の3.2%と比べ大きく上昇。昨年8月には4%にも満たなかったインドも、5月には8%を突破。ロシアでは、この1年間で7.6%から14.3%とほぼ倍増しています。
 小規模新興市場国のインフレ問題はさらに深刻で、現在ウクライナやベネズエラではインフレ率が30%を超え、ベトナムでは25%に達しています。サウジアラビアでは過去27年間で最高の10.5%。
世界の通貨の中でドルだけが供給増になると、ドルは円やユーロに対して下落していきます。何故かというと為替レートは2つの国の通貨の交換比率であるため、片方の通貨供給量だけが増えて片方の通過供給量が同じであれば、当然供給量多いほうの通貨の価値が下がってしまうことになります。
現在では、世界のほとんどすべての国が、通貨の安定や輸出振興の観点から、自国通貨の対ドル為替の上昇を嫌がります。 (例えば輸出で儲けている国は自国通貨がドルに対して為替が上昇すれば輸出しても儲けが少なくなる。)
日本も年率10%の増刷率で金を刷り、低金利にして米ドルの低下に対抗しており、EUも年率11%のユーロの供給増を続け、ドル安ユーロ高を回避しているようです。
→ユーロ(マネーサプライ)
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世界の通貨体制が、ドルの単独覇権から、 多極的な体制 へと転換していけば、ドル安に連動した世界的なインフレは解消にむかうのではないかと考えられます。しかし 多極的な体制 とはいったいどんな体制なのでしょうか?
次回はその辺を扱ってみたいと思います。

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