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<食料価格高騰はなぜおこるの?>その5 穀物メジャーって?①食物貿易と輸送施設

前回は、お米の値段を扱ってみました。
お米の価格上昇、農業再生につながるか? [1] 
 
日本のお米は、ミニマムアクセスとして100万トン規模の輸入義務がありますが、基本的には世界の食料輸出入と隔離されています。
*ミニマムアクセス:お米の関税を高く維持する。その代替として、一定量の輸入を行うこと。 
 
しかし、お米以外の穀物(小麦、大豆、トウモロコシ等)は、食料貿易の真っ只中に置かれています。因みに2006年の輸入依存度は、小麦87%、大豆95%、家畜の飼料となるトウモロコシは100%です。 
 
そして、世界の食料貿易を支配しているのが、穀物メジャーといわれる、巨大な食品企業です。
企業名を挙げておきます。最大企業のカーギル、第2位のADM(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)、コナグラ、バンゲの4大メジャーです。 
 
今回は、2日にわたって、この巨大な食品会社、穀物メジャーを解剖します。 
 
まずは、主要農産物の貿易率(生産に占める輸出の割合)です。国単位で食料の自給を目指しますので、貿易に回る比率は、他の工業製品に比べれば小さいです。しかし、大豆や小麦の貿易率は高いですね。 
 
□主要農産物等の貿易率(2006年)
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出典:食料・農業・農村白書19年度版
リンク [2] 
 
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次に穀物の輸出国を見てみます。
小麦は、米国、カナダ、EU、アルゼンチン、豪州の5カ国で世界輸出の70%。
トウモロコシは、米国、アルゼンチン、ブラジルの3カ国で世界輸出の85%。
大豆は、米国、ブラジル、アルゼンチンの3カ国で世界貿易の90%です。 
 
□主要農産物の輸出国別割合(2006年)
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出典:食料・農業・農村白書19年度版 
 
日本が輸入依存している、小麦、大豆、トウモロコシ(家畜飼料)の輸出国は、米国とブラジル・アルゼンチンの南北アメリカ大陸の諸国ですね。 
 
それでは、輸出国からどの国に穀物が行っているか見てみましょう。 
 
農業協同組合新聞に掲載された「食料自給率を考える(2)」<(株)農林中金総合研究所基礎研究部>から、世界の穀物貿易の流れを見てみました。*図はポップアップにしてあります。図をクリックすると大きくなります。 
 
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リンク [4] 
 
食料貿易の太い流れが、米国、ブラジル・アルゼンチンから、アジアの日本、中国、台湾に向かっているのが分かりますね。
具体的には、米国から日本に向けて、トウモロコシ1445万トン、大豆354万トン、小麦297万トンが輸出されています。
中国には、大豆が、米国から1086万トン、ブラジルから610万トン、アルゼンチンから584万トン輸出されています。 
 
数百万トンの穀物を輸出する為には、生産地から輸出港までの輸送と貯蔵・保管の施設が必要です。
穀物は、かさばり、重量当りの価格が大きくありません。だから、輸送コストが一番安くなる水路・船での輸送が中心になります。 
 
模式で示します。穀物生産地で農場から穀物を買付け貯蔵・保管するのが、産地カントリーエレベータです。この産地エレベータから、列車を連ねあるいは巨大河川のバラ積み船を使って、輸出積出港のポートエレベータまで運び、貯蔵・保管します。そして、大型船舶で輸出します。 
 
□穀物輸送の流れ
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北米大陸での内陸輸送路は、大きく3ルートになります。
5大湖・セントローレンス河・ハドソン河と連なり、最後にニューヨークに集積してくるルート。
最大の河川流域をもつ、ミシシッピー河で輸送され、最後にニューオーリンズに集積してくるルート。
オレゴン州とワシントン州を流れるコロンビア・スネーク河で、ポートランドに集積してくるルートです。 
 
□北米の主要内陸輸送水路(これもポップアップ!) 
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出典:カーギル・アグリビジネスの世界戦略(大月書店、1997年刊) 
 
○5万トン容量のカントリーエレベータ
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写真はシカゴ絵日記 [6]さんからお借りしました。 
 
輸出する上で必須の貯蔵庫(エレベータ)と輸送路のネットワークを、独占的に保有しているのが、穀物メジャーです。
日本の商社や農協系の会社が、この保管施設・輸送路を保有しようとしましたが、なかなか、穀物メジャーの牙城を崩せていません。 
 
次は、穀物メジャー本体に迫ります。 
 

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