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世界は多極化する? 〜ドル安懸念から各国は通貨供給量を増加させている?その4(マネーサプライの基礎知識編)

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最近は世界的なインフレ傾向にありますが、その原因として、ドル安懸念から各国で通貨供給量を増加させている可能性が考えられます。
 
為替レートは国同士の通貨の交換比率であるため、ドルだけが大量に供給されると、相対的にドルの価値は下落します。
→ところが世界の殆どの国は基軸通貨であるドルで取引をするため、通貨の安定や輸出振興の観点から、自国通貨の対ドル為替の上昇を嫌がります。
→それを防ぐために自国通貨の供給量を増やして相対的にドル安を抑えようとしているが、その結果、自国通貨がだぶつきインフレに陥っているという構造があるようです。
http://www.kanekashi.com/blog/2008/07/000608.html#more [1]
 
各国の通貨供給量(マネーサプライ)はどのようになっているのか?通貨体制はどこに向かおうとしているのか?それを見ていく前に、まず「そもそもマネーサプライって何?」という基礎知識から押さえていきたいと思います!
 
ぜひ知りたい!という方も、それくらい知ってるよ〜という方も、まずは ぽちっ☆ とお願いします。↓
 


 
ありがとうございます。
■マネーサプライって何?
 
http://allabout.co.jp/career/economyabc/closeup/CU20040412A/ [2] より引用・編集しました。

マネーサプライとは、実際の世の中の経済に出回っているお金の量のことで通貨供給量ともいいます。(中略)
中央銀行を含む、金融部門全体から経済に対して供給される通貨の量で、一般の事業会社や個人、地方公共団体などが保有するお金の量を示しています。国や金融機関が持っている現金は除きます。

取引されるモノやサービスに対して、お金の量が増えすぎると、物価が急激に上がる現象(=インフレ)を引き起こします。
逆に、お金の量が減りすぎると、モノが余ってしまって物価が下がる現象(=デフレ)に陥ります。


つまり金融機関の準備金など、持っているだけで市中に出回らない(=供給されていない)お金は、増えてもインフレと関係ないので、除くということですね。
■マネーサプライの範囲とは?
 
マネーサプライは、どの範囲までの預金を通貨に含めるかで、M1(エムワン)、M2(エムツー)、M3(エムスリー)という指標に分けられます。
 
○M1: 現金通貨+預金通貨(普通預金・当座預金)
○M2: M1+準通貨

※準通貨=定期預金など、解約することでいつでも現金通貨や預金通貨となって、決済手段として使える金融資産。
○M2+CD
※CD(譲渡性預金 Certificate of Deposit)=法的には「預金」であるが、譲渡したり決済に使用できる。CDの流通市場で売買する。CDを発行できるのは、銀行など預金を受け入れる金融機関に限られている。
M2+CDは実体経済や物価との間における関係が相対的に安定的であるとされており、最も一般的な指標として使用される。

○M3: M2+郵便貯金、農協・信用組合などの預貯金、金銭信託
○M3+CD
○広義流動性: M3+投資信託、国債などの債券、CP

   
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いろいろありますね。。。
現在のところ、M2+CDが一般的な指標として使われていますが、最近は様々な金融商品が登場したり、クレジットカードの普及などで、マネーサプライ管理が難しくなってきているようです。(例えばM2+CDを指標とした場合、個人が普通預金のお金を下ろして国債を購入すると、その分マネーサプライは少なくなる。)
また郵貯は元々政府系のお金ということでM2には含めていなかったようですが、民営化してゆうちょ銀行になったことで、投資先も国債を保有する以外に様々な金融商品に向かうことになります。
 
日銀はそういった状況を鑑み、今後はM1・M2に加えて、M3や広義流動性という4つの指標による統計に移行していくようです。
http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/faqms.htm#02 [3]
 
 
■どうやって通貨を市場に供給する?
 
では通貨供給量を増やしたい場合、具体的にどのようなことがおこなわれるのでしょうか?
金融政策は中央銀行である日銀が主導で行います。以下に日銀の主要な金融政策を挙げます。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=174283 [4]を元に編集しました。)
 
○預金準備率操作
すべての民間銀行は、中央銀行に、総預かり残高に対する一定比率の預金をすることを義務付けられています。この比率を預金準備率といいます。
この預金準備率を上下させることで、市場の金利を調整することを預金準備率操作といいます。

ex.景気が低迷している場合、中央銀行が預金準備率を引き下げる
→民間銀行の預金準備にまわす資金量が減り、手持ちの資金が増える
→民間銀行から企業などへ貸し出すお金の量が増え、景気回復に向かいます。
 
 
○公開市場操作
中央銀行が公開市場において証券を売買することにより、市場に出回るマネーサプライや金利を調整することを公開市場操作といいます。

ex.景気が低迷している場合、中央銀行は市場で民間銀行が保有している証券を買い上げる
→各銀行が中央銀行に持っている当座預金口座のお金が増える
→当座預金は無利子なので余分なお金を企業などへの貸し出しに回す
→銀行から企業に貸し出す量が増えるため、金利は下がる
→企業活動は活発化し、景気回復に向かいます。(このことを買いオペレーションといいます)。

 
※公定歩合操作
従来は公定歩合の金利操作が主な金融政策でした。景気が低迷している場合、中央銀行は公定歩合を引き下げることで、民間銀行の金利も連動して下がり、企業活動は活発化し、景気回復へと向かわせました。

しかし1994年に金利が自由化し、公定歩合と民間銀行の金利は連動しなくなったので、公定歩合を利用して民間銀行の金利を操作することができなくなりました。 
 
このように各銀行が持っている資金量を中央銀行(日銀)が調節することで、市中に出回る通貨量や金利を調整しています。ところが最近は多くの国で、ドル安を抑えるために敢えて自国の通貨供給量を増加させた結果、インフレを招いているようです。
 
 
■各国のマネーサプライの伸び率はどうなっている?
 
では実際に、主要国のマネーサプライがどのくらい伸びているのかを見てみます。
 
マネーサプライ増加率(データはM2。数字は前年比(%)) 総務省のデータより。
年  日本  アメリカ  ユーロ圏   中国   ブラジル  サウジ   インド    ロシア
02  0.9   4.6   4.8    -      9.2   15.2   16.7   33.7
03  1.3   4.0   6.4   19.6   21.7    8.5   13.0   38.5
04  0.3   5.1   6.4   14.4   17.0   17.3   16.7   33.7
05  0.3   7.5  14.3   17.9   19.5   13.2   15.6   36.3
06 -0.7   7.6  11.6   16.0   18.9   20.4   21.6   40.5

 
但しGDPが拡大すると、その分モノやサービスで取引される通貨は増えて当然なので、マネーサプライの増加が自然な経済成長によるものなのか、それともインフレ傾向にあるのかはGDP成長率の値とも見比べて分析する必要があります。
 
実質GDP成長率(数字は前年比(%))
年  日本  アメリカ  ユーロ圏   中国  ブラジル  サウジ  インド  ロシア
02  0.1   1.6   0.9    9.1   1.9   0.1   3.6   4.7
03  1.8   2.5   0.8   10.0   0.5   7.7   8.3   7.3
04  2.3   3.9   2.0   10.1   4.9   5.3   8.5   7.1
05  2.6   3.2   1.4   10.2   2.3   6.6   8.8   6.4
06  2.7   3.4   2.6   10.7   3.7   5.8   9.2   6.7

 
こうして見ると、日本は06年まで量的金融緩和政策をとっていたにも関わらず、マネーサプライはほとんど増加していません。GDPと比較しても、06年まではデフレ傾向が続いています。
一方、新興国のマネーサプライが急激に上昇しており、特にロシアの増加率は激しく、インフレが続いています。(その要因については、もう少し調べてみたいと思います)
 
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以上、マネーサプライに関して、簡単にまとめてみました。これらの基礎データを踏まえて、今後の世界の通貨体制はどうなっていくのか迫っていきたいと思います!

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