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証券のバブル化とその崩壊(1) バブルの形成

AGI%E6%A0%AA.jpg米政府は9月7日、経営が破綻した住宅公社(ファニーメイ・フレディマック)を管理下におき、21兆6000億円の優先株購入枠を設定し、経営状況に応じて公的資金を注入すると発表した。
米証券大手リーマン・ブラザーズは15日未明、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を裁判所に申請すると発表した。
米政府・連邦準備理事会(FRB)は16日、米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に最大850億ドル(約9兆円)のつなぎ融資を実施すると決めた。

サブプライムローン問題に端を発した米国の金融不安に、公的資金を活用して正常化をめざすということだが、


米住宅公社が保有・保証する住宅ローン関連証券は5.3兆ドル(570兆円)にも上る。社債も1.6兆ドル(168兆円)発行している。米国債の発行残高は4.5兆ドルであることを考えれば、保有・保証する証券も社債も、半端な額ではない。
住宅ローン関連証券(MBS)の総額は12兆ドル(1300兆円)にも上り、株式価時価総額14兆ドルに迫る勢いである。この90年半ば以降急速に成長してきた証券化商品こそ、バブル形成の主役であり金融破綻問題の中心に位置する。

債権の証券化とは、(借り手がいる限り)無限大の融資が可能なシステムである。債権を証券化して調達した資金が次の融資の原資となって循環するからだ。
また、この証券は債権のキャッシュフロー(を生み出す資産のクオリティ)のみに依拠して、発行体の経営能力(生産力)とは無関係である。MBSの場合は住宅モーゲージローンを借りている人の返済能力と資産(担保)にのみ依拠している。
だから、住宅価格が上昇しつづけていれば、資産価値の上昇分が返済能力を補填することになる。この上昇局面ではサブプライムローンも成立可能だったわけだ。そのように需要を拡大させ続けることでさらに住宅価格を上昇させ、住宅モーゲージローンを拡大させてきた。
しかし、これだけなら住宅ローン関連証券の総額が12兆ドルにも拡大するわけがない。
バブル化の仕組みは再証券化にある。リスクにより格付けされたMBSを組み合わせてパッケージ化(再証券化)されたCDOによって、無数の組み合わせと無数のランクの(さまざまなリスクとリターンを持つ)証券の発行されることになる。
ここでは、もはや大元の資産(担保)価値など量るすべはない。格付けを信じる以外に手はないのである。キャッシュフローが正常に保たれる確率(=貸し倒れの確率)の計算だけを頼りに拡大を続け、バブルを膨らませていくことになる。
この金融工学という名の怪しげなリスク計算がマネーゲームを支える唯一の根拠だったのである。
しかし、このシステムを維持するための金融工学とは市場拡大(住宅価格の上昇)を前提とした確率計算であった可能性が極めて高い。住宅価格の下落局面にいたって、何のリスクをもヘッジすることが出来なくなったのだから。
そして、この怪しげな確率計算とそれによる格付けが、CDSという爆弾を仕込んでしまうことになる。
〜続く

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