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不良債権処理機関って何?

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先週のニュースで、

米当局が整理信託公社(RTC)型の不良債権処理機関を模索しているとの報道で米株が大幅反発し、日本株も買い戻されている。RTC型機関には公的資金が活用されるため、米当局が本腰を入れて金融不安に取り組み始めたとの安心感が出ている。リンク [1]

との報道がありましたが、この不良債権処理機関とは一体どのような組織なのでしょうか?
応援よろしくお願いします。


不良債権処理機関である整理信託公社(RTC)は、1980〜90年代の貯蓄貸付組合(S&L)危機の際にも創設されており、不良債権処理で大きな成果を上げています。
この機関の役割は大きく以下のようになります。、

金融機関の抱えている不良債権や現在価格が付かなくなったような証券化商品などの不良資産を本体から切り離し、RTCが買い取って資産売却などで処理を進め、買い取った額と売却額との差額は売却損として公的資金で穴埋めする [1]

そして、1980〜90年代の状況の参考となる記事を以下に紹介します。

金融危機の処理コスト① −1980年代アメリカ S&L危機 [2]
①アメリカS&L(貯蓄型の金融機関)危機
今回のサブプライムローン問題以外にも、住宅金融に関連する市場の混乱が生じた事例として、1980年代のアメリカで起きたS&L(貯蓄貸付組合)の破綻問題がある。S&Lとは、個人の零細預金を引き受け、それを原資に住宅ローンなどの貸し付けを行う組合型の金融機関である。(最近では、米S&L最大手ワシントン・ミューチュアルの経営悪化→買収が取り沙汰された)
S&Lは、70年代までは安定した収益を確保していたが、80年代に入って2度の業績悪化による危機を経験している。
S&Lから住宅ローンで貸し付けられていたのは、主に「長期・金利固定型の住宅ローン」だったが、70年代後半からのインフレ対策として米政府は金利を急上昇させた。この結果、住宅ローンとして貸し付ける側の金利は低く、預金として調達するための金利は高くなってしまうという「逆ザヤ」が収益を圧迫。S&Lは次々と破綻していった。
このS&L危機を受けて、1982年レーガン大統領によって規制緩和が行われ、変動金利型ローンへの移行や住宅ローンの証券化などによって収益が一旦安定する。
(※フレディマックは’70年、S&Lが金融自由化の波に押されて危機に直面した際に誕生)(※ファニーメイは大恐慌時のニューディール政策の一環として’38に設立)
しかし、この規制緩和によって、S&Lと商業銀行の業務範囲に差が無くなり、商業銀行が住宅ローン市場に乗り出してくる。この激しい競争を通じて、S&Lの採算性が大きく低下してしまった。こうした結果、ジャンク債などの高リスク高リターン投資の割合を拡大させていったため不良債権に陥る危険の高いものが多くを占めていった。
1983年からの石油価格下落をきっかけに、S&Lが保有する土地や株などの資産が大幅に劣化。また不動産価格が下落した地域を中心に延滞率が上昇し、不良資産化に拍車を掛けた。このため、多くのS&Lと商業銀行が破綻に追い込まれた。
S&Lなどの貯蓄金融機関の破綻急増により、貯蓄金融機関の預金保険機関である連邦貯蓄貸付保険公社(FSLIC)が1989年に破綻するに至る。このためアメリカ政府は、貯蓄金融機関の破綻処理を担う時限的な政府機関として整理信託公社(RTC)を設立(1995年解散)。RTCは倒産の可能性が高いと判断された貯蓄金融機関の保全人に任命され、その金融機関の経営にあたった。破綻処理を行う際には、金融機関の資産・負債を公開入札や証券化などで売却した。RTCが整理した不良資産は、簿価で4026億ドル(約46.4兆円)。資産簿価の8割を超える額の回収に成功したと言われている。
1980年〜1993年の14年間にわたるS&L・商業銀行危機によって、全米で資産価値が27%(53兆円)下落した。公的資金は合計1526億ドル(約17.6兆円)投入された。このうち、RTCの整理・回収業務にかかった財政コストは875億ドル(約10.1兆円)。破綻処理のピークは1989年(危機発生から9年後)。
参考】
国際投信投資顧問:投資戦略マンスリー  [3]
内閣府:世界経済の潮流 リンク [4] リンク [5]塩漬け姉さん:S&L危機 [6] リンク

今回の金融危機は、以前の規模をはるかに超えており、資産処理後の公的資金投入の金額を政府・FRBが負担できないのでは?という思惑が先行しており、金融不安はこれから一層本格化することになりそうです。

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