9月18日に米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board、FRB)は、世界的な金融不安を防ぐためAIGに対し850億ドル(約9兆円)の融資を行うことを発表しました。リーマン破綻に次いでの大きなNEWSに、日本経済は動揺し対応に右往左往しています。
9兆円という巨額融資が行われるとなったものの、AIGの資産に対して、この融資はいったいどれほどのものなのか? (焼け石に水じゃないの?)という点、だとしたら取り付け騒ぎがとかおきてこないの?!と、気になるところ。そこで、状況はどうなっているのか、AIG「2007年アニュアルレポート」の「事業概況」の中の『連結ベース現金および投資資産の構成』 [1]から追ってみることとしました。
●「現金および投資資産」の内訳
[2]
これを部門別にみてみると、
損害保険 1298億ドル
生保年金退職金 4705億ドル
金融サービス 1818億ドル
その他 804億ドル
——————————————————
合計 8625億ドル
今回FRBが緊急融資した金額は859億ドルで、総資産の1割、生保等資産※の18%ということになります。(※取り付け騒ぎになるのは生保や年金等。それに対して損保は掛け捨てなので取り付け騒ぎにはならない。)今後は、株価暴落やサブプライム等による資産毀損、取り付け騒ぎによる資産流出がどの程度になるのかが焦点になってきます。
●資産毀損の恐れ『連結された債権のポートフォリオの格付け構成』 [1]によると
[3]
40Pによると、資産の10%程度(グラフでは15%もある)を、格付BBB以下のハイリスク商品で運用しているようです。ちょうど、FRBの緊急融資の金額に合致します。今回の融資額はこの部分を試算して決定した可能性が高いです。
●取り付け騒ぎによる試算流出
そうなると、FRBの緊急融資は、取り付け騒ぎが拡大した場合の資金流出までは、カバーできない、ということになります。アメリカでの取り付け騒ぎについては、ネットでも確認できていませんが、シンガポールのAIG子会社ではすでに発生しています。 (リンク) [4]
日本でも、長蛇の列とまではいかないまでも、問い合わせが殺到しているようです。 (リンク) [5]
ちなみに、取り付け騒ぎに対する対応としては、今のところ、「解約件数は全体のごく一部にすぎない」などの強気の発言や、報道規制などによって、もっぱら沈静化を図っているようです。
報道はされていませんが当然アメリカでも取り付け騒ぎが生じているはずですし、アメリカの場合は生命保険よりも年金や退職金の運用が中心で生活に直結しているため深刻です。
[23日 ロイター] によると、AIGは、ニューヨーク連銀との総額850億ドルの融資枠契約に正式調印した。(中略)AIGのエドワード・リディ最高経営者(CEO)は声明で、連銀からの融資は同社が選び得る最善の代替案だったと説明。既に資産売却・融資返済計画を策定中であり、「規模は小さくなるが収益性の高い会社として生まれ変わる」と表明した。(リンク) [6]
融資が決定し、健全な会社に移行するかのように報道されてはいますが、資産の規模からして間つなぎにしかならないのは明らかです。