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資金の大量供給はインフレをもたらすのか

この間の金融危機を受けて、FRBを始め各国中央銀行は大量の資金を市場に供給しています。
 
例えば9月30日の記事では

日米欧などの中央銀行10行は29日、金融不安の高まりでドルが調達しにくい状態が続く短期金融市場の緊張を和らげるため、各国中銀がドルを大量供給する協調策の供給総額を現行の約2900億ドルから約6200億ドルに増額すると発表した。
http://www.asahi.com/business/update/0929/TKY200809290317.html [1]

通常、マネーが大量に市場に出回ると、インフレが懸念されます。
しかし、確かに物価は上がっていますが、石油や小麦といった一部の品目にとどまり、日本では全体的には依然としてデフレ傾向にあります。原材料費も上がっているとはいえ、工業製品が大きく値上がりしているわけでもありません。
 
なぜでしょうか?
 
応援よろしくお願いします。


①大量供給するとインフレになる?
 
インフレは貨幣価値の信用が低下することで起きます。
 
ドルは基軸通貨になったことで、貨幣価値は割高で評価されます。ところがドルがあればたくさんのものが買えるので、アメリカは輸入超過となり、その結果、国内の産業が衰退し、国力も衰退してドルの価値は下がっていきました。
 
このように基軸通貨であるドルの価値は低下していく構造にあり、また世界中で決済に使われているため、ドルで(原油など)物を買おうとする国にとっては、さらにドルが大量に供給されると他の通貨に対してドルの価値が低下し、物を買うのにたくさんのドルが必要→物価高につながります。
 
但し、需要がある中で通貨量が増えれば、いくら払っても欲しいので、貨幣価値は低下し物価は上昇しますが、需要が無ければお金は貯め込まれて市場に出てこないので、インフレにはなりません。実際に、日本では99年から06年までゼロ金利(量的金融緩和)政策が取られましたが、デフレが続きました。
 
 
②インフレの原因は?
 
サブプライム破綻やCDSの破綻などで、世界的には信用収縮(→マネーサプライの減少)の流れにあると考えられます。経済は停滞し、資金を調達しにくくなっています。そのため各国中央銀行は市場に資金を大量に供給したり、不良債権を買い上げることで、金融機関の破綻を食い止めようとしています。
 
そのように単に足りないところにお金をつぎ込んでいるのだと考えれば、流通量が増えたから即インフレとはならないと思われます。
但し、アメリカの借金がさらに増えて、他の国も国債を買い支えられなくなって、アメリカの信用が失われていけば、ドルは下落していきます。
 
物価高の原因は、このようにドル安不安→ドル離れで投資先を失ったマネーが現物の先物に向かってそのあおりをうけていることや、各国が持っているドルの価値が下がり、たくさん払わないと買えなくなっているのが要因で、需要に対して生産力が不足しているわけではありません。
 
いま起きていることは、経済危機といっても実体経済が破壊されているわけではなく、マネー経済の破綻と、それをきっかけにしたドル基軸通貨体制の崩壊なのです。
 
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そうすると、これからの課題は、どうやって金融市場を縮小させながらソフトランディングさせるか、どうやってドル基軸通貨体制から抜け出すか、そもそもこれからどのような通貨体制が望ましいのかを考えていくことだと思います。

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