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最高ランクの格付けを誇る米国債と不信感

世界的な金融不安の拡大から、昨日欧米6中央銀行の協調により0.5%の利下げが緊急発表された。
しかし、ニューヨークの株式市場はそれでも株価が上昇することなく、ダウ平均は189ドル安の結果に終わっている。
 これまでFRBを中心に、幾度となく金利引下げの発表がなされてきたが、もはやその効果にも疑問附が付く形になり、ドルに対する不信がますます深刻化することが予想される。
16日のシティバンク決算発表の動向次第では、ドル崩壊が決定付けられるかもしれない。
これまでの金融危機の様々な報道から、主要な項目を抜粋すると…
・ファニーメイ、フレディマック(政府系金融機関)が、民間金融機関から住宅ローンを買い取ったり、支払を保証したりしたローン債権は約550兆円。
これは日本の国内総生産(約500兆円)を上回る額。2割焦げ付いたとしても110兆円の損失を叩き出す。
ちなみに、2社の資本金はわずか8.6兆円で債権・保証額の1.6%にも満たない蓄え。
・RMBSやCDOなどの証券化商品は約900兆円規模。
サブプライム債権が含まれているリスクがあるため、市場では半ば取り引きが停止している状態。
・リスク回避のために開発されたCDS商品が急拡大した結果、残商品合計が約6,800兆円。アメリカの国内総生産1,300兆円台を簡単に上回る額。
想像を絶する規模にまで膨れ上がった金融商品が暴落する中、アメリカ財務省とFRBは国債乱発とドルばら撒きによって、問題証券そのものを金融機関から買い取ることで、何とか破綻連鎖を凌ごうとしている。
毎日新聞 [1] 10月4日より引用

◆◇米金融対策法が成立◇◆
米下院本会議は3日、上院が1日に可決した修正金融安定化法案を採決し、賛成263、反対171の賛成多数で可決、法案はブッシュ大統領の署名を経て成立した。最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金を投入し金融機関から不良資産を買い取る金融機関の救済策が実現したことで、金融市場が再び大混乱に陥るという最悪の事態は回避された。
ブッシュ米大統領は新法成立について「米国が問題解決に向けて行動していることを示した」との声明を発表。「新法の効果が表れるまでにはある程度時間がかかる」と述べた。米国は前例のない巨額の公的資金を使った緊急対策で窮状の打開を目指すが深刻化している信用不安を解消する決め手になるとの見方は少なく、金融危機が収束するか予断を許さない状況が続きそうだ。

財源となる米国債を買ってもらうために、一つの指標を巡って議論が渦巻いているようだ。
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アメリカの対外債務は約2,000兆円とも言われる
財政赤字と貿易赤字の双子の赤字を抱えるアメリカが、基軸通貨割高の必然構造を持った国内産業衰退の中、自国で復活できる見通しも無いままに多額の米国債を発行して借金を増やしている状態。
しかし、そういう状況にあっても米国債の格付けは「トリプルA」という最高ランクを維持し続けている。
格付けとは債券に対して行なわれ、世界的に信用を得ているとされる格付け企業は、アメリカの「スタンダード・アンド・プアーズ」と「ムーディーズ」の2社。欧州系では「フィッチ」が代表的。
国債に格付けするということは、その国の信用度を格付けすることと同じ意味になる。
 
ちなみに、バブル崩壊後の日本では、金融機関が巨額の不良債権を抱えて弱体化していることや、国内経済の不安定さから上記3社の格付けがトリプルAからワンランク引き下げられ、ダブルAプラスになった。
日本は個人金融資産も多く、貿易黒字も好調な点から返済能力は高いとされ、幸いにして国債価値の下落には繋がらなかったが、円安を誘発した経緯がある。
昨今、サププライム債券を含む証券が世界各国にばら撒かれた理由の一つに、格付け会社が実態より高い格付けを与えていたことが挙げられている。
格付けに対する不信感は、そのまま金融商品に対する不信感に直結している。
上記のように単純に日本のケースと比較しても、アメリカ国債が未だに最高ランクを維持し続けていることについては、政治的な意図を感じざるを得ない。
世界中に米国債を買ってもらわねば、金融危機を先延ばしにすることさえ不可能。
追い詰められたアメリカは、「なりふり構わぬ」政策に走り、必然的に国家に対する信用を失う道を辿っている。
国家に対する信用不安が決定的になりつつあるドルは、今後一層価値を下げていくことが予想される。

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