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金融危機後の穀物メジャーの行方は?

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金融危機後、食料メジャーの影響力はどのように変化するのでしょうか?気になるニュースがあったので紹介します。 
 
【干上がる融資、穀物高騰 金融危機、農業生産に打撃】 [2]より引用

 信用収縮が農家の収益圧迫に拍車をかけていることで、世界の穀物収穫高が減少し、発展途上国では食糧危機が深刻化する恐れがある。
 米アグリソースのダン・バス社長は、穀物の中で消費量が最も多い小麦の国際生産高が2009年に前年比で4.4%減少するとみている。トウモロコシや大豆の収穫高も減少する可能性が高いという。同社長は29年間にわたり、農業経営者や食品会社、投資家らを対象としたコンサルタント業務に携わっている。
◆飢餓さらに増加
 ブラジルの全国トウモロコシ生産者協会のエノリ・バルビエリ副会長によると、同国では農家が肥料を購入するための融資を受けられないため、生産高が20%以上減少する可能性がある。ブラジルは米国、アルゼンチンに次ぐ世界3位のトウモロコシ輸出国。
◆コスト悩みの種
 米モンサントが販売するトウモロコシの種子1袋(8万粒)の価格は今年、前年比で45%上昇の320ドル(約3万円)となった。この量で約2.5エーカーの作付けが可能。イリノイ州ノーマルでトウモロコシと大豆を栽培するマーク・クラフト氏によると、この額は、中西部では農地1エーカー当たりの借地料に相当する。
 また、全米自動車協会(AAA)によると、トラクターの燃料となるディーゼル油の価格は7〜9月(第3四半期)に1ガロン(約3.8リットル)当たり平均4.47ドルと、前年同期比で51%上昇した。
 こうしたコスト増に加え、農業経営者が融資の担保に差し入れる穀物や農地の価値は低下。農業経営や農地の取得、機器購入のために借り入れするには、より多くの元手が必要になっている。

 
 


 どうやら、金融危機の影響は実体経済にも少なくない打撃を受けているようです。食糧生産の上流(種子、肥料)から下流(流通)まで関与している穀物メジャーも今回の金融危機では無傷ではいられません。まして、今後ますます市場が縮小してゆき、経済がブロック化していけば、穀物メジャーの支配力はより限定的にならざるを得ないでしょう。 
 
 金融危機により、高騰した種子や肥料が買えなくなった後進国は、その地域で昔から使われていた種子を使い、化学肥料や農薬をあまり使わない伝統的な農業に回帰していくかもしれません。当然、高くは売れませんから、市場経済が発展することも無く、工業製品は中国などより安く作れるところから輸入し、後進国ブロック経済圏のようなものが形成されて行く可能性があります。 
 
 一方、食料自給率の低い日本のような先進国は、市場の縮小による失業者の増大と、世界の食料収穫高の現象による食糧不足が同時に襲ってくるでしょう。その時「食料を何とかしなければ!」という思いが国民の共通認識になれば、儲からない農業であっても皆の期待が集まり「農業に参入しよう!」という機運も上がります。失業者を吸収しつつ、次第に食料自給へと進んでいくのではないかと思います。高価な工業製品は後進国向けには売れなくなり、同時に先進国でも金融危機の影響から中古品市場が成熟するようになり、わずかに本当に良いもの・必要なものが高くても流通するのみとなるでしょう。 
 
 こうした後進国・先進国ブロックが形成されてゆけば、世界中の流通を握ることで利益を得てきた穀物メジャーの存在価値は薄らいで行くのではないでしょうか。 
 

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