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経済破局は来るのか=番外編= 〜銀行救って国家が潰れる!?〜

UBSに5400億円の公的資金注入 スイス政府が発表
 【ジュネーブ=藤田剛】スイス政府と同国の金融大手のUBSは16日、政府がUBSに60億スイスフラン(約5400億円)の公的資金を注入すると発表した。合わせて中央銀行であるスイス国立銀行が最大600億ドルの資金支援を実施し、UBSが持つ一部債権などを買い取る。
 同時に同国金融大手のクレディ・スイスも資本増強策を発表した。カタールの政府系ファンドなどが引き受け手となり、計100億スイスフランの増資を行う。
日経ニュース [1]より

『GRAND THEORY Vol.4 経済破局は来るのか?〜金貸しが創りあげた近代市場の崩壊〜』 [2]をネタにみんなで話していて、 『スイス銀行』は大丈夫なのか?と気になって調べてみたら、こんなニュースを見つけました。
『スイス銀行』といえば、 “ゴルゴ13”デューク東郷がプライベート口座を持ち、報酬の振込先として指定するので、日本人にも馴染みがありますね。
実際、その信用の固さ、顧客情報の絶対的な秘匿性は世界中の資産家の信用を集めており、巨大な金融市場の中継点として知られています。
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写真は壁紙リンク [4]さんから拝借しました。
しかし、『スイス銀行』という名の銀行は存在しません。
『スイス銀行』は一般名詞です。スイス連邦銀行業および貯蓄銀行法(いわゆるスイス銀行法)に基づき設立された銀行のことで、広くスイスに本店がある銀行を指し、実態は2大大手銀行、 UBS AGクレディ・スイスです。
今回の金融危機で、その『スイス銀行』も危機に陥っているというのです。
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スイス政府が60億スイスフラン(5300億円)の公的資金注入、スイス国立銀行が最大600億ドルの不良債権を買い取ると発表したのです。
金額だけでは米国や日本の規模と比べるといかにも小さいが、スイスの国家予算がほぼ600億ドル≒6兆円である。観光ビジネスで成り立っている小国にとっては大きな打撃であるはず。
このスイス危機について、詳しく解説してくれているブログがありました。一部引用させていただきます。
『世に倦む日々』 [5]さんから

スカートの中をチラチラ覗き見させられているような、何かそんな気分で日経のUBSの続報に注目していた。別の言い方をすると、アイスランドの次はスイスになるのではないかという予感を持っていたのである。結論を先に言うと、あくまで論理的な想定と仮説だが、UBSが破綻しなければ、中央銀行であるスイス国立銀行が破綻する。スイスがアイスランドと同じデフォルト国家になる。状況はアイスランドと全く同じで、スイスという小さな国の一民間銀行が、世界に跨る巨大な金融事業を展開して膨大な金融資産を抱え、その中に大量のサブプライム関連の不良債権が含まれているということである。UBSの金融ビジネスは、規模においてリーマンやメリルと肩を並べる水準で、彼らの有力なコンペチターであり、事業は欧州よりも米国を中心に展開され、アジアや新興国にも多くの顧客を持っている。業態は純然たる投資銀行で、米国の投資銀行が潰れるのであればUBSが潰れても何の不思議もなかった。今回、スイス政府と中央銀行がUBS救済に要した資金は、不良債権買取と公的資金注入で6兆5300億円に上る。
この金額は、米国や日本の金融のニュースに慣れたわれわれの耳には小さく聞こえる。だが、スイスの国家予算は6兆円であり、国家予算1年分がUBSの不良債権処理に用立てされたことを意味する。日本に置き換えれば、80兆円が一つの企業の救済のために投じられる勘定になる。スイスは人口746万人の小国で、実質GDPは3880億ドル、4兆3666億ドルの日本の9%の規模しかない。UBSの総資産は180兆円で、スイスのGDPの4.6倍の巨額になる。自国のGDPの4.6倍の資産を持つ企業を政府は救済しなければならない。無論、180兆円の金融資産のどれほどが不良債権化するかはこれからの話だ。スイス政府の立場はアイスランド政府と同じである。スイスはEUに加盟しておらず、ECBの枠組みにも入っていない。通貨はスイスフランであり、永世中立国のスイスは外交も経済も独自路線を貫徹している。したがって、今回の金融危機ではきわめて厄介な立場になり、ECBもドイツもフランスもスイスとUBSの救済には動けない。独も仏も英も自国の金融システムを守るのに精一杯で、とても自国の税金でスイスの面倒は見れない。
日経の報道では、これでUBSの不安は解消され、欧州の金融不安も一服ついたと書かれている(本日3面)。だが、国家予算と同額の紙幣を発行供給して、UBSから同額の不良債権を引き取ったスイス国立銀行のバランスシートはどうなるのだ。論理的には、スイス国立銀行が引き取って抱えた不良債権を償却するために、スイス政府は国家予算と同額の赤字国債を発行しなければならず、国債の償還はスイス国民の納税負担として重くのしかかる。746万人しかいないスイス人にとっては、6兆円の債務返済は相当に厳しい試練だろう。普通に考えれば、スイスフランは信用を失って暴落せざるを得ず、すなわち97年の韓国のような通貨危機に襲われ、スイス国民は資源や食糧の輸入難に遭い、国家は存亡の危機に立たされる。メリルやベアスタが破綻を免れたのは、吸収合併で拾ってくれる大銀行が米国にあったからだ。米国の金融産業のパイが大きかったからである。スイスにはバンカメやシティのような大銀行はなく、第2位のクレディ・スイスも資本不足で、カタールの政府系ファンドの資本支援を仰いで四苦八苦している状態にある。UBSの今後は楽観視できない。

UBSの総資産は180兆もあり、GDPの4.6倍らしいです。それを国家が救済しなければならないのもスイス特有の「お家の事情」なのでしょうか。
金融と観光ビジネスで成り立っていた国家財政にとって相当な打撃であろうことは想像に難くありません。国家規模に比してはるかに巨大な金融市場の中継点となり、市場原理に支えられてきた国家は幾多のポジティブな幻想に彩られています。
が、今回の危機で『スイス銀行』から資金流出が始まるおそれさえあります。
スイスがアイスランドと同じ結末を迎えても不思議ではないのです。
『GRAND THEORY Vol.4 経済破局は来るのか?〜金貸しが創りあげた近代市場の崩壊〜』 [2]
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