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「新ブレトンウッズ体制はできるか?」その4 ロシアルーブルは多極通貨となれるか

ロシアの大統領は熊だってこと皆さんご存知でしたか・・・!? 
 
メドヴェージとはロシア語で熊を表すらしいです。 
 
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ロシア人=熊と相場が決まっています。大きく・強く・粗暴で貪欲という熊のマイナスイメージが、そのままロシア人になすりつけられているのでしょう。我々日本人も戦時中にはモンキーだったわけで、他国民を動物に例えて中傷するのは別に珍しい話でもありません。ただし、ロシア熊と日本猿との間には大きな違いがあります。猿と言われて喜ぶ日本人は一人もいないのに対し、ロシア人はむしろ進んで熊を自分たちのシンボルとして使う傾向があるからです。・・・古くはモスクワオリンピックのマスコットキャラが「小熊のミーシャ」だったことを考えると、ロシア人はむしろ熊に対して愛着を持っているとすら言えるでしょう。

(洞窟修道院様より引用リンク [1]) 
 
熊とロシアについては多くの逸話があり、改めてご紹介しようと思いますが、今日は熊の国経済について紹介します。つい4〜5ヶ月前、原油価格の高騰でロシア市場は熊景気で沸き返っていました。・・・失礼、好景気です。 
 
国際通貨基金(IMF)による2007年 購買力平価ベースGDPはアメリカ、中国、日本、インド、ドイツ、イギリス、についで熊(ロシア)が世界7位。外貨準備高では、ここ数年の高成長を背景に海外からの投資資金が旺盛に流入し8月末時点で4,461億ドルと世界第3位の規模に達しています。 
 
世界金融危機と原油価格急落 
 
ところが、米国のサブプライム問題を発端とした金融危機の嵐はロシアにも直撃し、さらに原油価格の急落が火に油を注ぐ形でロシア経済に打撃を与えています。 
 
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9月17日RTS終値で5月19日高値の57.4%まで急落。前後してロシア政府は様々な対応をおこなってきましたが、果してその救済の効果はあったのでしょうか? 
 
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河東哲夫氏のJapan−World Trendsのロシアシリーズより抜粋引用させていただきます。 
 
リンク [2] 
 
政府による対策

8月上旬から、市場での流動性不足を補う措置を開始した。 
 
9月16日、メドベジェフ大統領は大資本家達と会合を行った。 
 
9月18日、政府はまとまった経済刺激策を発表した。 
①5000億ルーブルの株価対策。
②貯蓄銀行(ズベルバンク)、対外経済銀行、ガスプロム銀行の主要3銀行へのロシア中央銀行の貸出枠を1兆1260億ルーブルに引き上げる。 
③商業銀行の預金準備率を4%下げ、それによって3000億ルーブル分の流動性を増加。
④10月1日に1トン485ドルとなる予定だった石油輸出税を同372ドルとする。
⑤住宅ローン貸付機関へ600億ルーブルを予算から割りあてる。 
 
9月24日には、プーチン首相が会長を兼任する開発銀行(実質的には国営)が、資金難に陥っていたスヴャス銀行(資産額で20位)の株98%を買い取った。 
 
9月29日、プーチン首相は「対外経済銀行は、商業銀行、企業に外債支払いのための500億ドルのローンを供与する。抵当不要。」と述べる。この発言にもかかわらず、モスクワの株価RTSは7.5%下がる。 
 
9月末、財務省が28の銀行へ600億ドルのローンを供与、との報道があった。 
 
10月1日、ウリュカエフ中銀第一副総裁は「流動性の問題は15ヶ月は続く」と述べ、次の措置を明らかにした。
①年末までには中銀が500億ドルを対外経済銀行に貸せるだろう。
②中銀が6ヶ月までの融資を商業銀に供与できるよう、法案を準備中。
③3つの国営銀行がインターバンク市場で損失を受けた場合、これを中銀が補償する法案を準備中。
④これらの措置により、インフレ率が1〜2%上るだろう。 
 
10月6日、大統領府と内閣共同で秘密の危機対策タスクフォースが作られる。 
 
10月7日、シュヴァーロフ第一副首相を頭に、「証券市場発展評議会」が発足。他に中銀頭取、財務相、及び諜報機関のFSB長官がメンバー。 
 
10月7日、中銀は50億ドルを売却してルーブル買い支え。国民が、預金をルーブルからドルへ転換し始めたためだろう。 
 
10月19日、シュヴァーロフ第一副首相はテレビで、「国民の銀行預金は、法律では70万ルーブルまでしか保証されないが、全額保証する。銀行には現金を供給してある」と言明。(注:ソ連、ロシアにおいては、国民の銀行預金が凍結され、その間に大きく切り下げられて価値を失ったことが何度も起きている。右発言は、国民の不安を鎮め、ドルへの換金を控えさせるためのもの) 
 
10月21日にドヴォルコーヴィチ大統領補佐官がロシア・テレビのインタビューを受け、新たな救済策を説明した。
①軍需企業に政府発注代金を前払いする。
②機械部門に利子補給を行う。
③マンションの空室を政府が買い上げる(そのため2012年のウラジオストクでのAPEC首脳会議、2014年ソチでの冬季オリンピックの準備予算から320億ルーブルを流用する)。
④農業への融資を強化する。 
 
10月17日クドリン財務相は、「国民福祉基金(2月設立時で250億ドル)のうち1750億ルーブル分を国内株・債券の買い上げに使う。次週から開始する」と言明。

ロシア政府の奮闘ぶりが覗えます。さて、政府の対応策がロシア金融市場に効を奏したのでしょうか? 
 
政府による対策の効果

8月以降、政府・中銀が様々な方法で流動性を供給しようとしたにもかかわらず、市場では金詰りが 続いている。10月中旬になってもプーチン首相は閣議で、「資金がリアル・セクターに届いていない」 と言っている。これは、政府・中銀から資金を受けた大銀行が、中小銀行に貸さないためである。
大銀行は、中小銀行に貸せば不良債権化するのを恐れ、受けた資金を外貨に投資するなどして自ら運用している。政府が、中小銀行の債務に保証をつけることが求められている。 
 
10月9日、ロシア産業家企業家同盟のショーヒン議長は「政府指導部へのアピール」なる文書を発表し、危機対策が一部の企業に限られていて透明性を欠いていること、経済困難の時に増税が行われようとしていることを批判するとともに、近年急増した国営公社を民営化するためのタイムテーブルを明確化するよう求めた。

(以上は抜粋引用させていただきました。) 
 
どうもうまくいっていないようです。どうしてなのでしょうか?
河東氏は次のように分析しておられます。

世界中から搾りたてたオイルマネーがあふれているはずのロシアで、深刻な問題が起きている。
一言で言えば、こういうことだ。 
 
つまり、これまでロシアはオイルマネーの大半を税金で取り立て(一部は予算に使い、残りは積み立てて外貨準備とする)、国内の企業活動はM&Aであれ、建設投資であれ、消費者ローンであれ、欧州の資本市場から短期資本を安く借りて賄っていたのだ。 
 
ロシア人の貯蓄率が低く銀行に資金が集まらないことも、欧州の資本市場への依存性を高めた。欧州で借りた金は返さなければならないが、期限が来ると同額をまた借りては、それで前の借金を返済する方式でうまくやっていたのだ。ところがサブプライム問題で猜疑心を募らせた欧州の銀行達は、ロシアにも殆ど貸さなくなった。 
 
8月のグルジア戦争も外国投資家のマインドをすっかり冷やし、ロシアの株式市場から短期の外資が大量に引き上げた。ロシアの企業は株式発行で資金を集めることはあまりしないので、株価の下落もその点では響かない。だが銀行からの融資は自社株を担保として行われることが多いので、銀行は企業に金を貸さなくなった。 
 
また大銀行も、不良債権化を恐れて中小銀行に金を回さず、こうしてロシア経済は金づまりとなった。オイルマネーはもっぱら政府、中銀、そして大銀行で停滞している。 
 
こうして、ロシア経済の急成長を演出してきた建設、消費者ローンは大幅に縮小し、生産企業も次々に生産縮小の連鎖反応を起こしつつある。これまでコネに負けて余剰人員を雇用してきた企業は、むしろチャンスとばかりにリストラを始め、失業率を高めている。

果して御人好しで獰猛な熊さん達はどのようにして、この難局を乗り越えようとするのか目が離せません。 
 

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