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FRB資産状況090114:新たな8千億ドル支援策の発動

[1]昨年9月のリーマン・ショック以来、FRBのサイト [2]で毎週公表されているB/S(バランスシート)の変化を追跡し、随時レポートしていきたい。

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グラフは昨年4月〜今年1月14日時点までのFRBバランスシート(地区連銀合計)の推移。上が資産、下が負債+純資産で、2つの総額は一致する。資産:どのような形で保有しているかor何を買ったのか?、負債:その原資をどう調達したのか?と見ることができる。(図はクリックで大きくなります)

FRB資産の推移
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FRB負債・純資産の推移
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■昨年9月以降の動き
・グラフで一目瞭然なように、概ね9千億ドル程度で推移していた総資産が昨年9月以降に急膨張し、12月初めには2.5倍の約2.3兆ドルに達した。
・中長期国債(灰色)が大半を占めていた資産は、国債が減り、代わりにTAF(紫)、CP買取(赤)、その他債権(橙)、その他資産(薄紫)といった項目が急増。AIGやCitiへの緊急融資もここに含まれる。
・メイデン・レーン(青)は金融機関の破綻処理会社の名前。ベアスターンズの他、9月以降はAIG関連のCDS購入などの資金がFRBから供給されている。(ちなみに「メイデン・レーン」というのは、ニューヨーク連銀の従業員出入口が面する通りの名前だとか・・・)
・負債側で9月以降増えているのは、米国財務省からの預金(水色+薄桃色)と、圧倒的なのが金融機関から預かる連邦準備預金(濃い桃色)。
・連邦準備券=ドル札も4月以降750億ドル(約1割)の増刷だが、全体の変動に比べると小さい。
つまり、今回の金融危機で政府・FRBが行ってきたこととは、
 ①米国政府が米国債を発行する。
 ②その収入で政府は金融機関に資本注入し、FRBには財務省預金をつくる。
 ③その金でFRBは金融機関への緊急融資やCP・不良資産購入を行う。
 ④金融機関は政府やFRBからの金で再び米国債を購入。残りはFRBの準備預金へ。
 ⑤政府は資本注入、FRBは増えた預金で・・・(以下、繰り返し)

と、政府とFRBと金融機関の間でドルをぐるぐる回しているだけ。その結果が、FRBの資産倍増となっている。実体経済には殆んど金が回らないメガバンク救済スキームだ。
このようなドルのマッチポンプは、一体いつまで持つのだろうか???(但しマクロに見れば日本の国の借金もこれと似た構造。政府が国債発行で金をばらまき、それが銀行に預けられ、その金でまた国債が買われ・・・)
■1月半ばのFRB資産の状況
12月に比べてFRBの資産総額はやや縮小し、峠を越えたようにも見える。しかし、一つ注目すべき変化がある。それは、小額(といっても約56億ドル)ながら、「Mortgage-backed securities」という項目が資産側(上のグラフ。小さくて見えない)に加わったこと。これは、サブプライムローンの世界的感染に一役買った、あのMBS(モーゲージ証券)のことだ。
FRBは昨年11月末に、さらなる最大8千億ドルの支援策 [5]を打ち出している。それが今年に入って実行に移され、まずはファニー・メイやフレディ・マック発行のMBSを直接購入し始めたのがこれ。こうなると、今後もさらなる資産の膨張と劣化は避けられないのではないか。

ところで、金融危機で焼け太りしているのはFRBだけではない。英国イングランド銀行も、実はFRB以上に資産が急激に膨張している(下図は金融市場混乱の行方と2009年の世界経済展望 [6]より)。こちらもかなりヤバイ。


明日20日はオバマ就任。宴のあと政府・金融当局は何を打ち出し、中央銀行はどうなるのか???
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