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2008年、世界の過剰消費崩壊、輸出大幅減で貿易赤字に

昨日は、2007年までの貿易黒字について見ました。今回は、2008年の貿易がどうなったのか、詳しく見ていきます。 
 
まずは、2007年からの毎月の貿易収支の推移です。 
 
日本の月別貿易収支(単位:10臆円)
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貿易黒字は、2008年に入ると大幅に縮小していますね。
そして、10月以降は、3ヶ月連続して赤字に転落しました。
10月は667臆円の貿易赤字です。11月は赤字が拡大し、2,234臆円の赤字。更に12月は発表されている上中旬値(20日間)だけで、5,814臆円の赤字と、月を追うごとに拡大しています。
なお、8月に3,321億円の赤字を計上していますが、これは原油価格の高騰で一時的に輸入額が増加したことが大きいです。 
 
3ヶ月も連続して赤字になったことは、この20年間あったのか?
少なくとも私たちの知る限りではなかったようにおもいます。
表題のように、先進国の金融バブル・過剰消費が崩壊し、市場が縮小過程に入ったとすれば輸出が大幅に減少し、貿易収支が赤字になることは、寧ろ必然です。
2009年以降の動向を見通すために、もう少し詳細に見てみましょう。地域別や品目別です。
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欧米向輸出が急落、中国・中近東向けも危なくなる
まず、7月以降の貿易表をのせておきます。
bouekishusi06.bmp 
 
対米輸出は既に7月からマイナスです(対前年比11.4%減)。8月21.8%減、9月10.9%減、10月19.0%減と続き、11月は33.8%減(2007年の2/3)と急激に減少しています。12月の結果はでていませんが、恐らく、もっと大幅な落ち込みが予想されます。 
 
対EU輸出もアメリカに引きずられるように、1ヶ月遅れで8月から減少しており、3.5%減です。11月は、対米と同じく、30.8%も減少しています。
先進国がダメなら新興国があるという訳にもいかないのです。
対中国輸出は少し遅れて、10月から減少し0.9%減を記録。更に11月はマイナス24.5%と一挙に減少しています。
最後に残る金持ち国家・産油国はどうでしょうか。
対中東輸出は更に遅れて、11月(マイナス0・5%)から減少過程に入っていることが分かります。 
 
 
自動車、電機、一般機械の全てで輸出崩壊 
 
つぎに品目別に見ていきます。 
 
輸出の構成比率25%前後と最上位を占め、我国の稼ぎ頭である輸送機械(完成車及び部品)は、8月から減少に転じ、10月には13.1%減となり、11月には更に28.3%減と急激に減少していることが分かります。 
 
同様に輸出構成比率20%前後を占める電気機器(半導体や映像機器等)も、10月から減少幅を拡大させ、10.6%も減少し、11月には29.7%減と激しく落ち込んでいます。 
 
輸出構成比率が同様に20%前後を占める一般機械(原動機、工作機械等)も、傾向は同じで10月が3.4%減で、11月は23.3%減と大幅に減少していることが分かります。 
 
以上のように、80年代以降、我国が得意分野とし、一貫して輸出を拡大してきた自動車や電気機器、機械類が大きく落ち込んでいることは驚きと同時に、私たちに認識転換を促す重要な意味合いをもっているようにおもいます。 
 
なお、エネルギーの輸入について見ると、原油・粗油は7月が69.4%増で、8月が64.4%増、9月も61.8%増と価格高騰の影響がでていますが、11月には、一気に35.2%減と急激に減少していることが分かります。(価格下落と輸入量の減少による金額減少。) 
2008年は、『大幅貿易黒字国』から『貿易赤字国』への転落の年となったといえます。 
 
 
貿易立国からの転換 
 
2009年は、日本の得意な輸出品(自動車や電機)が、欧米先進国だけでなく、中国や中東諸国でも、急速な市場縮小に見舞われ、貿易赤字の状況が続くと見ることができます。
(最近の報道にあるように、トヨタ自動車が2月〜4月の生産を半減させるのが象徴的です。) 
 
2009年以降、中長期的に貿易収支がどうなるのか?
産業構造の転換に未来を賭けるのか、内需拡大に未来を託すのか?
それ以外の道があるのか?ということが重要になってきます。 
 
今回の貿易赤字転落は、世界的な金融バブルの崩壊、過剰消費の崩壊が原因であり、国内と言えども例外ではないことは、自動車が売れない(若者の車離れ)ことからも明らかなようです。
ネット上の記事、「名古屋不況が襲ってきた」で紹介されているように、2008年の国内自動車販売のマイナス傾向が顕著です。11月の新車販売は、マイナス27.7%という大幅減です。 
 
参考:名古屋不況が襲ってきた [1] 
 
少なくとも内需拡大にその活路を託すようなことには可能性がないようにおもいます。 
 
産業構造の転換の問題では、我国が世界の最先端技術を誇る太陽光発電などの新エネルギー産業への転換の可能性はあり追求すべき課題ではあるようにおもいます。 
 
しかし、より重要で本質的には市場経済からの脱却、過剰消費からの脱却以外に道はないことだけは確かだと思います。 
 

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