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世界経済どうなる?!〜その8.ブレトンウッズ2(G20)のその後

 サブプライムローン問題に端を発する金融危機に対処する為に、2008年11月15日、金融・世界経済に関する首脳会議(G20)がワシントンDCで開催されました。
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 これまでの先進7カ国(G7:日、米、英、独、仏、伊、加)による首脳会議に、中国やインドなどの新興国を加えた20の国と地域(アルゼンチン、豪、ブラジル、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合(欧州委員会、オランダ、スペイン))が集まった金融問題に関する首脳会議は史上初めての出来事であり、世界経済を大きく変える、新たな国際金融体制の構築に向けた第一歩として期待され、ブレトンウッズ2とも呼ばれました。
 この時に扱われた内容を改めて振り返り、その後どのような取り組みが実践されてきたかを見てみようと思います。
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G20の首脳会議で扱われた内容の骨子は以下の通りです。

・金融システムの安定にあらゆる追加的措置
・すべての金融市場・商品は規制・監視の下に
・危機の予防・管理・破綻(はたん)処理で連携強化
・金融政策による支援の重要性を認識
・財政の持続可能性を維持しつつ、即効的な内需刺激の財政施策を
・新興市場国や途上国の資金調達を支援
・IMFや世界銀行の十分な資金基盤を確保・今後1年間は投資・物品・サービスの貿易で新たな障壁設けず

また、来年3月末までの行動計画として以下の内容が掲げられました。

・金融機関による複雑な金融商品の義務的開示を強化
・景気循環の増幅効果を緩和するための提言を策定
・格付け会社の信頼向上策を実施
・金融機関が十分な量の資本を維持することを確保
・金融機関のリスク管理強化指針を策定
・金融機関は、報酬体系が過度に短期的な利益追求に報いるものにならないよう努力
・市場に対する脅威について情報交換を促進
・相場操縦などから投資家を守るため公正取引規則を見直し
・国境を越えて活動する金融機関の監督で協力
・金融安定化フォーラム(FSF)の加盟国を新興市場国に拡大
・国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの資金基盤を見直し
・IMFの融資手法を加盟国のニーズに合うよう見直し

これらの中で、重要なポイントとして以下の点に注目してみましょう。
①すべての金融市場・商品は規制・監視の下に
混乱した経済を国家の監理下において、金融市場の安定化を進める事が目的でしょう。
これを進める為の具体的な行動計画として、
 ・金融機関による複雑な金融商品の義務的開示を強化
 ・格付け会社の信頼向上策を実施
が該当するのだと思いますが、現時点では、ほとんど手付かずではないでしょうか。
かろうじて株の空売り規制強化は続けられていますが、株価低迷の要因として投資家からの厳しい批判を受けています。
②金融政策による支援の重要性を認識
 これはG20の会合後、各国で公的資金の注入が行なわれています。3月までの行動計画にもある「金融機関が十分な量の資本を維持することを確保」に直結した政策だと思いますが、金融機関への資本注入だけでは金融危機を抑えられず、主要各国の中央銀行が、CP(コマーシャルペーパー)買取りに動くまでに至っています。
③新興市場国や途上国の資金調達を支援
 日本は、IMFに対し、新興国支援の資金強化として外貨準備から最大1,000億ドル(約10兆円)の資金拠出を行うと表明しています。
 新興国の通貨危機が他の国に飛び火しないよう、世界的な金融危機がこれ以上広まることを抑える効果を期待されていますが、日本だけが必死にIMFを支えている状態では、効果の程は期待できないでしょう。
④IMFや世界銀行の十分な資金基盤を確保・今後1年間は投資・物品・サービスの貿易で新たな障壁設けず
 IMFへの資金援助は先に記述した状況ですが、貿易障壁を設けないという格好での協調表明は、各国で行なわれています。1929年の世界恐慌の時に取られた保護貿易体制が戦争の引き金となった教訓から、同じ過ちを繰り返さないといわれていますが、ここは裏で糸を引く金貸しの意図が強く働いているようにも感じられます。
G20の首脳会談以降、金融危機に対する各国の取り組みは、現時点では公的資金の注入が中心で、金融システムそのものに食い込むような政策は、ほとんど行なわれていない状況といえます。
4月に行なわれる事になっている、第2回首脳会合(G20)で、金融システムに対するメスが入れられるかどうか、世界経済の行方を見定めるうえで、注目されます。

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