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世界的な金融危機を受けて、IMFが注目されるのはなぜか?その1

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 国際通貨基金(IMF)などの国際金融機関の融資枠が大幅に増大している。
 世界的な金融危機を受けて、急激な財政悪化に苦しむ途上国の政府が、国際機関への依存を強めている事が背景にあり、国際金融機関の支援額は2008年実績の十倍近くになっており、2009年だけで6000億ドル(約54兆円)規模の緊急資金支援が計画されている。
 また、昨年11月にワシントンDCで開催された、金融・世界経済に関する首脳会議(G20)でもIMFや世界銀行の存在が注目され、資金基盤の強化についても扱われている。
 1944年にブレトンウッズで開かれた、国際連合の「金融・財政会議」のブレトンウッズ協定によって創設されたIMFが、今注目されるのはなぜか?
 今回の金融危機に対する支援という役割の裏に隠れた、今後の世界経済の主導権争いと新たな金融システムの行方を、何回かに分けて追いかけてみたいと思う。
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 今回は、代表的な国際金融機関であるIMFと世界銀行の設立に至る経緯と、その目的についてまとめてみたいと思う。
【設立までの経緯】
 産業革命や植民地支配により、世界の覇権を握っていたのはイギリスで、その通貨であるポンドが、金本位制に裏付けられた信用を背景に、貿易における決済通貨として使用され、19世紀半ばにはポンド基軸通貨体制が確立していた。
 その後、第一次世界大戦が勃発し、イギリスは膨大な戦費調達のため金本位制の放棄に加え、他国からの債務、とりわけアメリカの金融機関からの借金を余儀なくされた。
 第一次世界大戦で戦争特需の恩恵を受けたアメリカと、大戦の痛手を受けたイギリスとの力関係が逆転し、イギリスから金が流出しアメリカへ集中していった。
 1929年世界大恐慌が起こり、各国はブロック経済体制を敷いた。これが軋轢を生み第二次世界大戦の引き金となったといわれているが、裏では金融資本家のロックフェラーが、ナチスやソ連を背後から支援して、ヨーロッパを戦場とする第二次世界大戦を仕向け、ヨーロッパからから逃げてきたユダヤ人らの資金(金)を奪い、アメリカに金を集中させていた。
 戦後、世界中の金の6割を、アメリカが保有する事になった。
 終戦間際の1944年7月、アメリカ合衆国ニューハンプシャー州のブレトンウッズで開かれた、国際連合の「金融・財政会議」のブレトンウッズ協定によって、戦後復興策の一環としてIMF、世界銀行が創設された。
 そして、このブレトンウッズ協定により、ドルのみ金との交換を認め、ドル基軸体制が確立された。
 
【設立の目的】
 IMFの創設にあたっては、イギリスの経済学者ケインズと、アメリカの政治家ハリー・ホワイトが大きく関わった。
 ケインズ案は世界レベルの「清算同盟」をつくり、そこで各国通貨当局の持ち込む収支尻を相殺させようとした。その際の決済通貨として「バンコール」という新通貨の創設を提案した。
 どの国でも申し出によって加盟でき、新通貨バンコールを発行する中央銀行にバンコール預金の口座を開く事が出来る。
 その口座を通じて貿易決済を行い、赤字額あるいは黒字額が設定された限度額を超えた場合、超過分に対して利子を払うという、債務国だけでなく債権国にもペナルティーを科せる仕組みである。
 これに対しホワイト案は、各国の金保有高と国民所得額を基準として算出された出資割当額に応じて投票権が与えられる仕組みである。
 ケインズ案は一顧だにされず、ホワイトの、拠出に基くIMF案が採用された。
 加盟185ヵ国、理事会は24ヵ国で構成される。IMFのトトップである専務理事はヨーロッパ各国から選ばれるが、副専務理事はアメリカからの選出が多い。
 意思決定は、加盟国の出資割合に応じた投票権で決まる。重要事項の決定には投票権の85%が必要だが、その投票権の17%をアメリカが占めている。
 つまり、アメリカ一国が拒否権を握っている。
 IMFは、ドルとその他の通貨との固定相場制を守る為の「管理通貨制度の監視役」としての役割を担っている。
 つまり、IMF設立の目的は、ドル基軸体制の確立と世界の覇権をアメリカへ完全に移行する事だといえる。
 また、同時期に創設された世界銀行は、第二次世界大戦後の先進国の復興と発展途上国の開発を目的に、主に社会インフラ建設などの開発プロジェクトごとに長期資金を供給する役割を担っている。
 これは、巨額のドルを世界中に流通させ、ドルでしか決済できない「ドル基軸通貨体制」の維持を目的としている。
 以上の事から、IMF、世界銀行といった国際金融機関の設立目的は、ドル基軸通貨体制の確立とその維持により、世界の覇権をアメリカが握る為だといえる。
 

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