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食べていけるの? 鎖国の可能性を探る!-8

 
鎖国シリーズも2巡目(8回目)になっちゃいました。最初 [1]は全6回の予定だったんですけど、
「もしかして好評?・・・・もうちょい引っぱってみよか?」
という声があってかどうかは定かではありませんが、まだ続きます。しかし、このシリーズの欠点は鎖国できないことがわかっちゃった時点で「鎖国の可能性なし!終了!」になっちゃうことで、ここまで来ると終了宣言することになるかもしれない担当のプレッシャーは高まるばかり・・・(前回は、こちら [2]
 
え〜、そんな理由かどうかはわかりませんが、エネルギー記事が遅れて間に挟まる形で、今回は『食料』です。鎖国になったら食べていけるの?に答えます。
 
結論は、 『カレーライスは食えないけど、死にはしない!(イヤならチキンハヤシライスで我慢してネ。但しコショウ抜き)。それどころか、今より健康になる!』です。 (注:カレーライスがないと生きていけない人は死にます・・・)
 
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              カレーもいいけど、ハヤシもね
 


 
食糧自給問題についてどこかのブログで分析されたものを見た気がしたのですが見つからず、しょうがないので素人分析と参ります(食料についても専門外)。
 
世の中でよく云われている食料自給率は約40%。先進国でも最低で、「これはやばいヨ。10人中6人は飢え死にしちゃうよ!」 というのは農林水産省 [3](以下のグラフ参照)
 
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                    食料自給率(農林水産省資料より)
 
さて、ここでの自給率は、「カロリーベース総合自給率」とよばれるもので、以下の様に算定されています。

カロリーベース総合食料自給率=1人1日当たり国産供給熱量(1,016kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,551kcal)=40%

ここで、分子は国産で賄われた熱量の合計で、分母は輸入も含めて国民に供給されている食料の全熱量合計。なお、畜産物については、国産であっても飼料を自給している部分しかカロリーベースの自給率には算入しないこととされています。(少しわかりにくいので、詳しくはこちら [4]
 
わかったような、でも、わからないような気になるのは、①国民が健康を維持する上で必要なカロリーを基準にしていないこと、②食さずに捨てているものが結構あるけどその要因が入っていないこと、が挙げられます。
 
食料廃棄の問題について指摘されていることとしては、例えば揚げ物に使われる油脂はカロリーベースでほぼ全量が廃棄されており、生ゴミのうち食べることが可能な部分が捨てられたものが、2002年で38.8%を占めているという分析もあります。ちなみに、「買ったままの状態で捨てられていたのは11%で、その6割が賞味期限の前に捨てられていた。外食産業では、宴会や披露宴、宿泊施設での食べ残しが13〜22.5%と多い。」とのこと。
 
また、諸外国の自給率は日本の農水省が独自に推計したもので、日本と韓国を除く海外諸国はカロリーベース総合食料自給率の計算をしておらず、雑誌「農業経営者」がこの計算方法について農水省に取材したところ、「食料安全保障の機密上出せない」との回答があったらしい。(ウィキペディア [5]より) 
結局のところ、これでは鎖国してもやっていけるのかどうかよく分からない。
 
◆そこで、独自に計算してみます。(素人だからわかりやすいとは思うけど、やや大雑把なのはご勘弁・・・)
 
農林水産省のデータで、1人1日当たり供給熱量が 2,551kcal。現在、その内の39%が無駄に捨てられているとすると、実質の必要熱量は、2,551kcal×(1−0.39)=1,556kcal≒約1,500kcalということになる。
 
参考に、ネット上で40歳男女の1人1日の平均必要カロリーを算出してみたのが以下の値で、40歳の男女平均で約1,850kcal。
 

  ・男性(40歳、65kg、170cm、立ち仕事軽作業)2130kcal
  ・女性(40歳、55kg、160cm、デスクワーク軽い家事)1577kcal
  ・平均 1854kcal/人/日

 
必要カロリーの少ない子供や老人を考えると、国民全体の平均必要カロリー1,500kcalはおかしな値ではない。ちなみに、成人女性のダイエット推奨値が約1,500kcal(参考 [6]
 
国民全体の平均必要カロリー1,500kcalとすると、農水省発表の1人1日当たり国産供給熱量 1,016kcalは約68%の自給率に相当しますが、さすがにまだ足りない。あと32%分は何とかしなきゃいけない計算。
 
さすがに、これは生産を増やすしかないか・・・・
 
◆ここで、過去の国内生産量の推移を示します。
 
以下のグラフは、農水省発表の国内生産量データ [7]をお手製でグラフ化したもの(見づらいのは簡便)。2007年の総生産量が57,900千トン、生産量の多かった1986年で76,500千トンですから、1986年は今の約1.3倍の生産量に相当します。
 
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前出の、国民全体の平均必要カロリー1,500kcalに対しては生産量で約32%が不足しているのですが、1986年実績の生産量が今の約1.3倍ですから、当時の生産量まで戻せれば国民全体が食べていける計算ですね。
 
◆日本では減反を進めてきましたから、今から農地や田んぼを1986年並みに戻し、農業人口も増えれば対応は可能でしょう。最近は、若者や離職者の農業回帰の流れもありますし、企業の農業参画も道は開かれています。また、この先の不景気で失業者が出てきますが、農業は国策としても失業者対策と食糧自給の一石二鳥の対策となります。
 
ただし、農地を回復するには数年かかるでしょうし、農業転職者育成にも数年はかかりますから、今からでも取りかかりたいところです。また、自給可能になるまでのことを見越して、食料備蓄も行っておきたいところです。たぶん、3年我慢できれば何とかなる。いざとなったら(ならなくても)庭や土地のある地方では、家庭菜園ぐらいはすぐにやれるでしょうから、意外と生産量は増えるんじゃないかな。
 
最後に、問題にも触れておきましょう。好き嫌いは言ってられないというのと、飼料不足から畜産物は激減して肉は手に入りにくい高級品になってしまいます。畜産には大量の穀物が必要なんですね(以下参照)。ニワトリは結構優秀なので、食べられるでしょう。

   畜産物・油脂1kgを生産するために必要な穀物等の量(試算)
        牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵 大豆油 なたね油
        11kg 7kg 4kg 3kg 5kg 2kg

 
また、日本では生産していない食物がありますので、それは無くなります。例えば、カレー粉とかコショウ、グレープフルーツやバナナなど。日本国内で生産できない(できても少量の)ものもありますから、それは我慢するしかない。基本的に日本に昔からあるものは何とかなりそうなのですが、例えば醤油なんかは、材料の大豆をほぼ100%輸入に頼っているため、大豆の国内生産を増やさないといけないというのもあります。
 
時間のある方は、こちらの食品別生産自給率 [8]などを見て頂いて、「あっ!これ食べられなくなる・・・」というものをチェックしておいて下さいな。メタボの気になるあなたは、今より健康になれますよ。カレー粉と牛豚肉が厳しいので、チキンハヤシライスがお勧めです。(でも、コショウは何とかなりませんかね?国内で作れませんか?どなたか教えて下さい。それより、インドとだけは仲良くしときますか・・・・)
 
万事は、備えあれば憂い無し。お後がよろしいようで。
 
 
by コスモス

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