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バランスシート不況とは?

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最近、野村総合研究所 主席研究員である リチャード・クー氏が提言する「バランスシート不況」という視点が注目を集めている。リチャード・クー氏によれば、

日本の通貨は強く、年間30兆円もの為替介入をしないとどこまで円高が進むかわからない状態ですし、貿易収支は世界最大の黒字、インフレではなくデフレ、金利は世界最低と、どれをみても超優等生

にも関わらず、バブル崩壊以降、日本経済が停滞し続ける背景には、「バランスシート不況」があり、
その対策として、政府の財政出動が必要であるという。
このリチャード・クー氏の視点は、現在の世界経済不況を捉える視点にも有用と考えられるので、今回扱ってみたいと思います。
応援よろしくお願いします


■リチャード・クー氏の状況認識
①超優等生の日本が何故、不況? ⇒バランスシート不況ではないか?

>経済学の基本は、企業は利益の最大化を目指して活動する。しかし、この十数年間の日本や、最近のドイツやアメリカで見られる現象は利益の最大化ではなく、債務の最小化です。
>なぜ債務の最小化があり得るかというと、だいたいバランスシート不況になる前には、大きな資産価格の下落があるんです。バブルの時は皆さん借金してでもどんどんものを買いましたが、バブルが崩壊すると借金を残したまま資産価格が下がり、多くの企業が債務超過のような状況になってしまうわけです。でも本業がしっかりしていれば、本業のキャッシュフローで借金返済ができるんですね。そういう行動を、個々の企業が取り始める。
キャッシュフローで痛んだバランスシートを修復しようとすることは正しいのですが、全員が同時に同じことをすると全く別のことが起きてくる。これが「合成の誤謬」と呼ばれる現象で、どんどん景気が悪化してしまうんです。
一国の経済というのは、家計が貯金して、それを企業が借りて使うということで円滑に回るわけです。その真ん中に証券会社とか銀行があって、仲介業務をするんですね。企業が一斉に借金返済にまわったら、家計の貯金はまったく使われない訳です。そうすると企業の借金返済と家計の貯蓄を合わせた額が銀行に入ってきて、二度と出ていかないということになります。これがデフレギャップです。少なく見積もっても35兆円から40兆円あります。ということは、誰かがこれを使わないと経済はどんどんシュリンクしちゃうわけで、それを私はバランスシート不況と呼んだわけです。

②バランスシート不況どうする?⇒政府の財政出動

今の日本企業は、すでに十数年間借金返済を続けて、かなり有利子負債残高が落ちています。ただ、資産価値の下落があまりにも大きかったので、もう少し借金返済をしないと安心できないというのが今の状況だと思います。ともかく「合成の誤謬」の中で、政府は民間に対して借金返済をやめろとは言えないわけです。
でもほっておいたら、それこそ大恐慌になってしまう。
こういう時には政府は民間と逆の行動をとらないといけないわけで、35兆円から40兆円を政府が借りて使う、そうすると全てが回るわけです。これを私はずっと言い続けてきた訳で、このバランスシート不況に限って、財政出動は不可欠であるというのがこの理論です。

リチャード・クー氏のバランスシート不況という視点は、バブル崩壊以降の日本経済、そして現在の世界経済の不況を考える上でも非常にわかりやすい視点です。しかし、気になるのはやはり政府の財政出動という点です。国の借金【846.7】兆円(2008年12月時点) [1]
に加え、政府のバランスシート(PDF) [2]を見ると、260兆円以上の債務超過です。この状況の中で、さらなる債務を増やすことで一体何が実現されるのかというのが非常に疑問です。
確かに、財政出動によって、現在のバランスシート不況は改善されるかも知れない。
しかし、その結果本当に得をする・損をするのは誰なのか?結局、金貸し達がつくった債務を国民(政府)が肩代わりすることにしかなっていないのではないか。
なぜなら、金貸しの暴走によって、国民(政府)のバランスシートは不況ではなく、既に破綻しているからです。
この意味で、バランスシート不況だから財政出動という点は非常に疑問が残りませんか?みなさん。
【参考文献】
野村総合研究所 この人にインタビュー [3]
BIZ+PLUS:第7回「大恐慌もバランスシート不況だった」 [4]

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