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■アメリカ金融史10〜アメリカ(人)の意識を統合する観念=自由

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前回記事(リンク [1])でアメリカという国が市場を維持するためには戦争に頼るしかない構造にある、ということが見えてきました。 
 
そのようなアメリカを支える思想は何なのか?を扱ってみようと思います。 
 
●アメリカ人が『自由』にこだわるのは何で?
移民の集まりであるアメリカは、民族的統合性を欠いていて、社会的に分裂構造を内包している為、他の社会より人為的な統合観念を強力に必要としてきたからです。 
 
それは、メイフラワー誓約の成文契約から始まり独立宣言から一貫して法文化や、アメリカの政治体制を定めた憲法(1787)が世界最古の成文憲法という点に現れています。「契約→法文」「理念→価値観念」に対して意識過剰なぐらい脅迫観念的にこだわるのです。 
 
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●なぜこだわるのでしょうか?
今までシリーズで何度か言われてきたようにアメリカは、独立以来わずか200年の歴史(イギリス領植民地の設立からでも400年)しかなく、アメリカ社会は近代(市場)とともに始まりました。 
 
当時のヨーロッパの封建・君主制の固定された身分社会からの抑圧から逃れてきた移民によって建国され、そして現在も移民を受け入れることで維持されてきた国家ともいえるのです。 
 
そして、この移民の国に「アメリカンドリーム」があると言われる様になった背景には、この当時の人々が移民してきて何もないところから富を獲得するに至ったからです。 
 
この国は『誰にも自由に富を獲得する機会が平等にある』ということが、
・アメリカン・リベラル  (=自由→私権を勝ち取る自由)
・アメリカン・デモクラシー(=政策決定の参加が開かれている→誰にも私権を勝ち取る                           機会が平等にある)
という観念に置き換えられ、国家の統合観念となっていったのです。 
 
この観念が、アメリカのとって市場拡大・成長・大国化の源泉であり逆に言えば限界、他国にとっては問題の素となっていきます。 
 
近代の経験しかない多元的な移民の集まりの国ゆえに、強い警戒心を持った排他意識で、自己の存在(アイデンティティー)となっている『自由』という観念に執着しているということなのです。 
 
●『自由』へのこだわりが帝国主義をもたらした
建国から第一次世界大戦のころまでの産業を市中にして広大な大陸を市場化していくまでは、富の獲得の機会がはっきりと意識できたのですが、第一次大戦を経て大陸のフロンティアが消滅すると、『誰にも自由に富を獲得する機会が平等にある』という理念は崩れ始めます。 
 
そして、その後に起こった株価の大暴落から、世界大恐慌(1929〜1933)を迎え、恐慌に対して何もしない政府に不満が高まり、ニューディール政策を公約とするルーズベルトが大統領に当選します。しかし、土着的共同性がないゆえに、自己の「富」を最優先する自由の国アメリカでは、国家主導で平等に福祉を施すニューディール政策は成功しません。 
■アメリカ金融史9 〜市場の維持・拡大には戦争しかないアメリカ〜 [1] 
 
しかし、ニューディール政策で、大衆の意識は、『自ら私権を獲得する機会を求める』というものから、『国家が権力によって獲得した富みの配分に国民が参加することを要求する』という方向に大きく変化します。その結果、国家が能動的に富を獲得し、その私権を国内に還元して分配する必要が高まり、国家の能動的行動は、他国への侵略行為を助長し国家権力を肥大していきます。  
それが、アメリカの帝国主義に繋がっているのです。その手段として「武力介入」が発生し、そのために軍事力も拡大し続けてきたのです。 
 
つまり、大衆の『自由』へのこだわりがアメリカに帝国主義をもたらしたのです。 
 

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