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■アメリカ金融史11〜孤立主義と膨張主義は表裏一体

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前回記事は、こちら。 『■アメリカ金融史10〜アメリカ(人)の意識を統合する観念=自由』 [2]
  
  

今回の世界経済危機で、ドル・米国債の暴落はいずれ間違いない。
最悪、米が分裂・内戦化する可能性も指摘されている。
 
では、最強の軍を有する米が崩壊したとき、貧困の圧力がまだ強く、軍備強化に向かっている中・印・露etcは、どうするのか?
るいネット [3]

  
アメリカ・ドルの崩壊をにらんで、こんな議論も起きています。
  
ここまでアメリカが世界に影響力を持つように至ったのは、アメリカの政策の中心に『膨張主義』(アメリカの思想・制度を世界中に広めて、影響力を拡大する)という考え方が支配的だからです。
  
ところが、歴史をさかのぼると、アメリカ合衆国誕生当時は、『膨張主義』とは正反対の『孤立主義』という思想が、むしろ支配的であったということが分かるのです!
  
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孤立主義(こりつしゅぎ)は、第二次世界大戦前までアメリカ合衆国が原則とした外交政策で、モンロー主義に代表される。その元々の源泉は、初代大統領ジョージ・ワシントンが離任に際しての告別演説の中で、「世界のいずれの国家とも永久的同盟を結ばずにいくことこそ、我々の真の国策である」と述べたことである(もちろん、厳密に言えばこれは「非同盟主義」の萌芽である。)南北アメリカ大陸などのアメリカが権益を持っているところ以外の地域については、不干渉を原則とした。
ウィキペディア [4]

・『孤立主義』や『膨張主義』という思想が、どのようにして生まれたのか?
・『孤立主義』と『膨張主義』は、どう結びついているのか?

これが、今回のテーマです。
 
1.アメリカの“特殊性”が意識されていったのは、なんで?
 
『孤立主義』の源流は、アメリカの支配階級を形成していったイギリスのピューリタンに由来します。
 
「ピューリタン」とは、イギリス国教会を「ピューリファイ」(純化)しようとしたグループ。イギリス国教会はローマ・カトリック教会から分離して出来たものですが、政治的理由から出来たものゆえ、その教会形態、礼拝様式は中途半端な面が多かったからです。
 
しかしそのピューリタンの中で、イギリス国教会からの分離を図ったセパラティスツ(分離派)は異端視と迫害を受けてイギリスを脱出、オランダを経由した後、メイフラワー号でアメリカへ渡ります(1620年)。
 
メイフラワー号には、ピューリタンのセパラティスツ以外に、アメリカに働きを求めたピューリタンでない“よそ者”(イギリス国教徒など)が半数を占めていました。そこで、互いに異質なよそ者同士が「メイフラワー誓約」という契約を結んで、新たなアメリカの地に新しい政治団体、植民地を形成していきます。
 
ここに多元的な移民国家アメリカの原初形態があり、それが『排他』と『アメリカ的価値観の絶対化』につながる礎となったのです。
 
 
2.『孤立主義』が『膨張主義』と結びついたのは、なんで?
 
ピューリタンの精神を孤立主義の原点とすれば、その確立期はアメリカの独立戦争(1775-1783年)にあります。
 
独立戦争を通じて、アメリカはイギリスと対戦し、独立を勝ち取るための大義名分として、「共和制」を掲げます。これは裏を返せば「君主制の否定」であり、イギリス本国のみならず、ヨーロッパの、広くは世界の君主制の否定を意味していたのです。
 
そのため、独立戦争を経緯したアメリカ人には、『アメリカ価値観の拡大は、世界の大義である』という意識が強力に植え込まれました。
 
独立した弱小新興国アメリカにとっての基本的国策は、ヨーロッパの先進列強からアメリカを隔離・孤立させて、アメリカ大陸に拡大・膨張していくこと。この『孤立主義』には、ヨーロッパの専制政治に対して、アメリカの共和制・民主政治を守る、という意味があったのです。したがって、独立戦争以来のイギリス・ヨーロッパを価値的に否定する発想が、独立後も根強く残りつづけたわけです。
 
それは、宗教的には「アメリカは元来、“自由”が発展すべく神の摂理によってあらかじめ選ばれているのだ」という『地理的予定説』を生み、さらにそれが「アメリカ大陸に“自由”を普及させるのが、道徳的使命である」という『使命』の倫理にまで拡張されました。
 
そうなると、アメリカの政治制度あるいは体制一般は、ヨーロッパと異なる独自のものであるという「特殊性」の意識は、同時に、それが世界の範たるものであるという信念、「普遍性」の意識と表裏を成していきます。そのような発想が、異質的体制に対する排除の『膨張主義』を生み、拡大させたのです。
 
つまり、アメリカの膨張主義は、一見矛盾する孤立主義の裏返しだったのです。
 
この異質的体制に対する排除意識・論理・倫理は、独立当初は「ヨーロッパ絶対主義」に、モンロー主義においては「神聖同盟によるその復活」に、19世紀を通じて「カトリック教」に、20世紀では「共産主義」に対して顕在化します。21世紀では「テロ組織」や「独裁国家」に向けられています。
要するに、アメリカ(の体制)にとって脅威となるものは全て排除しなければならない、という発想が、アメリカの基本的スタンスであると言えます。ここに、異質なものとの融合・調和を図ってきた日本人との根本的な違いがありそうです
 
 
参考記事:『「アメリカの共和党と民主党」7・・・アメリカ(人)の意識(2/3) :特殊性意識→ 孤立主義と膨張主義』 [5]
 
冒頭の画像は、こちら [6]からお借りしました。

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