- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

最近のG20の動き

 ロンドンで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が9月5日に閉幕しました。ロイター通信によると、以下についての声明が採択されたようです。
●金融・財政政策の継続確認
●出口戦略は各国で時期異なる
●報酬問題はFSBに検討要請
リンク [1]
日本では「総選挙→政権交代決定」の直後だったこともあって、ほとんど話題になりませんでした。

 <金融・財政政策の継続確認>

 声明は足元の状況について「金融市場は安定化してきており、世界経済は改善している」と評価。ただ、成長と雇用の見通しについては引き続き慎重な見方を示し、「景気回復が確実になるまで、物価の安定と長期的な財政の持続可能性と整合的に、必要な金融支援措置および拡張的金融・財政政策の断固たる実施を継続する」ことを確認した。
 ガイトナー米財務長官は、閉幕にあたって発表した声明で「民間需要主導の持続的な景気回復に向かう環境はまだ整っていない」と指摘した上で、G20各国は経済の基盤がしっかりしたものとなるまで刺激策を続ける必要がある、と強調した。ダーリング英財務相も「だれも仕事が終わったと考えてはならない。討議すべき多くのリスク、不確実性、障害がある」と警戒感を崩さなかった。

 <出口戦略は各国で時期異なる>

 共同声明は、危機対応の「異例の政策」を平時に戻す「出口問題」についても言及した。「景気回復がしっかりと確保されていくにつれて、財政政策、金融政策および金融セクター政策での例外的な支援を戻すための透明で信頼性あるプロセスの必要性について合意した」とした上で「国際通貨基金(IMF)およびFSBと協働し、行動の規模、時期および順序が国および政策手段の種類によって異なることを認識しつつ、協力的で調和した出口戦略を作成する」と明記した。
 トリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁は「われわれは、出口モードに入る方法を知っている。だれもそれに反論していない、それが極めて重要だ。その一方で、そうした時期にはまだ至っていない。危機終了を宣言するのは早過ぎる」と慎重な見方を示したが、一方で「しかし、われわれ独自の判断、われわれのインフレリスクやインフレ期待抑制に関する分析を踏まえて必要と考えれば、その時は必要なことをする」とも語った。
 このほか、共同声明では、IMFの運営において、インドや中国といった新興国がより強い発言力を持つべきだと指摘し、これを実現するため、9月下旬に米ピッツバーグで開催されるG20首脳会合(金融サミット)での「実質的な進展」に期待感を表明した。

 <報酬問題はFSBに検討要請>

 今回の会合では、金融システムの強化に向けた宣言も採択した。規制当局は、リスクの高いトレーディング、オフバランスシート項目および証券化商品に対するより厳格な資本を求めることで合意。「景気回復が確実になれば、銀行に対し保有自己資本の量と質の向上を求めること」で一致した。さらに、必要に応じて資本を増強するため、内部に留保する利益の割合を高めるよう求めた。
 焦点となっていた報酬問題については、一部の国・地域が求めていた具体的な上限規制では合意できず、FSBに対し報酬体系に関する国際基準の策定を求めるとともに「変動報酬全体を制限するアプローチ」について検討するよう要請した。
 ドラーギFSB議長は「銀行は今が資本を再構築する好機だ。彼らは配当や自社株買い戻し、報酬支給などを決める際、資本の再構築が何よりも優先課題であることを念頭に置くべきだ」と指摘。ガイトナー米財務長官も、安定した金融システムを確保するためには規制を強化する必要があり、銀行の報酬などの問題の解決を市場に委ねることはできない、との認識を示した。

 報酬問題については、仏サルコジ大統領の提案に対し、独は乗り気、米英が難色という図式だったのですが、結局は規制に向う方向のようです。今回の金融破綻の原因が報酬の高さだけに矮小化される危険性もありますが、民衆の共認圧力に逆らうのは今や不可能でしょう。
 ロイターニュースでは上記の3点しか紹介されていませんが日本に大きく関わってくる問題もあります。銀行の自己資本規制の新たな基準にしようという動きです。
【主張】G20 邦銀制約する規制は残念

しかし、日本にとって問題なのは、金融危機の再発防止に向けて打ち出された金融機関に対する規制強化の中身だ。批判の強い金融機関の高額な報酬に対する国際的規制の設定や、金融機関の健全性の物差しとなる自己資本の規制強化は一見もっともな主張だが、具体論になると日本を含め各国の利害が複雑に絡んでくる。とりわけ自己資本規制は、中身次第で日本の金融機関の国際的な活動が制約されかねない。
 米欧が提案している新ルールは、融資など総資産に占める普通株の割合を「4%以上に保つ」とするものだ。日本の金融機関は、議決権がない代わり高配当を約束する優先株などの比率が米欧に比べて高く、規制案をそのまま受け入れると著しく不利になる。
 普通株を増やせば、不況時でも配当を減らして業績を押し上げる効果が期待できるというのが規制強化論の根拠だ。米欧の金融機関は、破綻(はたん)回避に国の資本注入を普通株で引き受けてもらった経緯があり、そもそも比率が高いことが背景になっている。
 これでは国の支援を受けた金融機関の方が見かけ上の健全性が高まるという皮肉な状況も起きてしまう。会議で日本はそうした点を指摘したが、米欧が議論を主導して賛同は得られなかった。
 ただ邦銀も欧米主導のルールづくりに、いたずらに反論するだけでは理解は得られないだろう。自己資本強化は金融機関が自発的に行うべきものだ。これまで友好企業の株式引き受けなど自己資本を増やす補完的手段に頼りがちで、本来の質改善が不十分だったことは反省点だ。
 1980年代後半に自己資本規制が導入された際も「バブル景気で世界進出した邦銀の活動抑止が目的」とする見方があった。国際ルールは国益を左右する。今月下旬には米国のピッツバーグでG20金融サミット(首脳会議)が開かれる。官民挙げて金融戦略の抜本的練り直しが必要だ。

リンク [2]
 今回のG20財務相・中央銀行総裁会議には、与謝野財務相が欠席、代わりに副大臣が出席するなど、既に死に体の自民党は全くヤル気がありませんでした。この問題は9月24日のピッツバーグで再び議論されます。民主党の新大臣が誰になるかわかりませんが、果たして大丈夫でしょうか。

[3] [4] [5]