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ドルに代わる通貨システムは?〜7.『ドル亡き後の世界』(副島隆彦)を読む

after_dollar.jpg11月5日に発売された副島隆彦氏の新著『ドル亡き後の世界』が売れている。現在も紀伊国屋書店や八重洲ブックセンターでランキング1位。人々の関心が既に『ドル後』に移っていることが窺える。本ブログのテーマとも関連するこの本をネットサロン [1]の仲間と回し読みして勉強したので、今回はシリーズ番外編として、この中から注目される箇所を仲間のコメント付きで紹介してみたい。
まず、第1章にはこうある。

●アメリカは2012年の「大底」に向かう
ここからは私の近未来の金融・経済予測を書く。はっきりと書く。来年2010年の3月から小さな「金融崩れ」が起きるだろう。そして一度、持ち直す。その後で、夏ごろから本格的にアメリカの金融崩れが始まる。秋から冬(来年末)にかけて金融混乱が続くだろう。オバマ政権はその責任を取らされる形で「終わってゆく」だろう。すなわち途中で大統領を辞任する。2010年の年末には、目出度くアメリカは恐慌に突入するだろう。恐慌とは前年比で、年率10%でGDPが下落することである。これが2年連続して続くと恐慌と言える。そしてアメリカの景気は2012年の「大底」へ向かって転がり落ちてゆくのである。(p.19)

2012年に向かってアメリカが「大底」に落ちていくという。そのきっかけは何なのか?
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●やがて中国が米国債を売り始める
次の新聞記事にあるように、中国は必死で自らが抱えるドル建ての資産(日本の3倍ぐらいある)を、何とか他の形の金融資産に変えようと、政府も国民も一丸となって練っている。
「中国の米国債保有残高、10ヶ月ぶりに減少 4月末」
   米財務省によると、2009年4月末の中国の米国債保有残高は7635億ドル(引用者註・70兆円)となり、前月より44億ドル(4000億円)減った。同残高が減るのは昨年6月以来、10ヶ月ぶり。中国は金融危機が深刻になった昨年秋以降も米国債を大量に買い増してきたが、外貨準備の運用先をドル以外に振り向け始めたとの観測も出ている。
   中国外務省の秦剛副報道局長は6月16日の記者会見で、米国債保有残高が減ったことについて「中国の外貨準備は我々の必要に応じて運用する」と述べるにとどめた。
  (日本経済新聞 2009年6月16日)
(中略)中国政府が意を決して米国債を暴落させれば、その時が本当の世界恐慌突入である。だが、そういうことは急にはできない。反対に中国が受ける打撃も大きいからだ。だから中国は米国債を徐々に売り始める。それが来年の暮れにははっきりしてくる。そして米国債は値崩れをはじめ、3年後の2012年が「ドン底」になるだろう。
(中略)
中国の中央銀行である中国人民銀行の周小川総裁は3月に「米ドルが基軸通貨であり続けることは無理である。それよりはSDRというIMF内で通用している各国政府間の決済機能を新しい通貨に成長させたらどうか」と論文を書いて発表した。世界の専門家達は今、このSDRという機能を議論することを中心に動いているのである。(p.61〜65)

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こうした中国の動きを察してか、太子党の王岐山副首相とガイトナー財務長官が会談。続いてボルガー諮問委員会委員長も王副首相を訪れ「米国債を売らないように」と要請している。もはやアメリカの命運が中国に握られていると言っても過言ではなく、ドル基軸通貨体制の行く末は中国次第なのだ。(K氏)
対して、アメリカはどのような権力構造のもとに今、動いているのか?

●誰がホワイトハウスで財政・金融政策の主導権を握っているのか
財務長官はティモシー・ガイトナー前ニューヨーク連銀総裁が就いた。この人物はまだ弱冠48歳で、背後にポール・ボルガー元FRB議長(82歳)が経済回復諮問委員会委員長という根拠のハッキリしない役職で付いて、後見役となっている。ポール・ボルガーは”世界最高実力者”デイヴィット・ロックフェラー(94歳)の金融面での直臣である。この皇帝デイヴィットの”子飼い”が院政を敷いて、表面上は若造の現財務長官に財政・金融政策を実行させていくという態勢(体制)である。(中略)
サマーズ元財務長官をNEC委員長にした、その真の意図は、”トカゲの尻尾切り”である。最初から彼に責任を取らせて辞任させることにあるようだ。オバマ大統領の子守り番をさせておいて、二人一緒に辞任させる計画があるようだ。(p.90)

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左端がガイトナー、右端がサマーズ(クリックで拡大)

サマーズは、オバマ大統領の経済・金融面の参謀である。つまり、デイヴィット・ロックフェラーは、この危機を彼らの辞任によって終焉させるつもりなのである。(O氏)
しかし、ドルの価値の失墜に関しては、米国自身も半ば認めざるを得なくなっている。

●アメリカ自身もドルの信用力を疑い始めた
 どうやらドルの信用性(信用力)について、アメリカの政府自身の信念がぐらついていている。米国務省(日本の外務省にあたる)などは、いくつかの主要国の米国大使館に、密かに多額のドルの現金を送金して、それで英ポンドを除く、それぞれの現地通貨を買わせているそうである。アメリカが自分の国の通貨を信用せずに、他の通貨に換えようとしているのだ。いよいよ追い詰められたという感じだ。大使館が使う先々の通貨を、あらかじめ現地通貨建てで持たせようとしているのである。
 アメリカ政府が自分で信用していないものを、外国に信用させて買わせ続けようというのも土台、無理な話である。中国はある時期に、意を決して米国債を売り始めるだろう。(p.122)

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そして、副島氏の予測によれば、ドルはなんと1ドル=10円まで落ちる可能性があるという。その根拠はデリバティブの未処理残高だ。さらにアメリカは、借金を目減りさせるためインフレ(ハイパーインフレ)許容策に出るという。その時、ドルと米国債が同時に暴落を始める。

デリバティブの処理から導かれる「1ドル=10円」の理論
 アメリカのデリバティブ(高級金融詐欺商品)の契約残高は、ピーク時に全取引で総額8京円(800兆ドル)であった。それを「解かし合い」(disolution ディソリューション 契約の解消)でどんどん減らしていった。今も必死で減らしつつある。(中略)
それでもまだデリバティブの取引残高は全体で600兆ドル(6京円)あり、200兆ドル(2京円)ぐらいが処理されずに残っているようだ。(中略)
 そのうちの10分の1の実質の量(金額)でおよそ2000兆円、最高で4000兆円ぐらいを片づけなければならない。アメリカはこれまでにまだ400兆円(4兆ドル)しか片づけていない。だからアメリカにはこれから地獄が押し寄せるのだ、と私は書く。
 アメリカがこのあと10年で、最低で2000兆円、最高で4000兆円を処理するためには、1ドル=10円にすると、ちょうど理屈が合うのである。(中略)
 アメリカはそんなに借金(外国から流れ込んでいるお金ともいう)があるのか。とても信じられない、という人がいるだろう。ところが、私が書いたこの4000兆円のうちの800兆円は、対日本(日本からの借金)である。(中略)この日本からの融資金(米国債などを売っている)が、デノミで10分の1の80兆円になるから、それを返せばいいことになる。
(中略)このような米ドル価格の大変動は2012年に堂々と行われるだろう。(p.155〜159)

●やはり震源は米国債の暴落だ
やがて起きる本格的な米国債崩れ(ドル暴落でもある)は来年(2010年)の秋からだろう。そして年末には相当ひどいことになるだろう。
文中引用、ロイター 2009年6月5日記事
「米長期金利上昇、米国債は次のシステミック・リスクの震源地にも」
(記事は省略)
テイラー(引用者注:上の記事で警告を発している元米財務次官・現スタンフォード大教授のジョン・テイラー)が言うとおり、アメリカ政府は計画的にインフレを、しかもハイパー・インフレを許容する政策に出るだろう。それはドル暴落と「そろい」(セット)である。この時にはニューヨークの株式と米国債の暴落も起きる。(p.191〜p.193)

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これまでのアメリカのやり口からすれば、ハイパー・インフレ政策は十分実行される可能性を孕む。一説に、米国債保有1位の中国さえアメリカが配慮して何らかの保証を取り付けておけば、軍事力を持たない日本は簡単に黙らせることができるという話しもある。インフレ政策が、ひとたび現実のものとなれば、日本がせっせと買い支えてきた何百兆円にも上る米国債資産は一気にその価値を失い、国家・企業ともに甚大な経済的損失を被ることは間違いない。黙って見過すごすことのできない問題だ。(F氏)
暴落までいかずとも、ドルは現在じりじり下がり、金価格は毎日史上最高値を更新している。しかし、これとて、ドル軟着陸のための金「売り」を織り込んだ上での動きなのだという。

●金地金とレアメタル(希少金属)が暴騰する
 アメリカ帝国はドル(という紙幣、紙切れ)の価値を守るために、金の値段を意識的、計画的に先物市場で引き下げようとする。300倍とかのレバレッジをかけて、ニューヨーク連銀がゴールドマン・サックスやシティバンクのディーリング部門に金を先物で売らせている。だから金価格はじわじわとしか上がらない。 それでも金は強い。10月1日にニューヨークで1オンス1000ドルを越した。現在は1051ドル(10月16日の終値)である。もっともっとあがるだろう。1200ドルは目前である。ドル紙幣の暴落が来年も続いて起こる。そのときには、金をはじめとした貴金属類が暴騰する。
(中略)
 米ドルが暴落するにつれて非鉄金属やレアメタルの価格は急騰する。
レアメタル(rare metal 希少金属)とは、この地球上に埋蔵されている量がきわめて少ない(略)希少な金属類のことである。(中略)
 これらの元素は発光ダイオード(LED)や液晶パネルや光触媒などの新技術に欠かせない新世代の重要資源である。このためレアメタル類は「産業のビタミン」という別名を持っている。
(中略)
これらレアメタル(レアアースも)を豊富に産出する国は、中国、ロシア、南アフリカ、ブラジルなど新興諸国が大半である。(中略)これらの事実から見ても、中国を中心とする新興国家群が、これからの世界を牽引してゆくことが分かる。(p.216〜p.219)

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レアメタルの主要産地(クリックで拡大)

ドル暴落後は金やレアメタルといった実物資産が重要なカギを握っていそうですね。
しかもその重要なカギを握っているのは、豊富な産出国である【新興諸国】!!
6月のBRICsの4首脳会談で、「金融危機で揺らいでいるドル基軸通貨体制の見直し」について公然と声明が出た、等の動きについても書かれていました。それも気になりますね☆(Mさん)

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