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宇宙船地球号パイロットのマニフェスト(2)                 石油に代わる代替エネルギー資源としてのトリウム

初回には、年金基金の運用について考える中から、「石油・ドル本位制」に代わる世界システムの構築に取り組むミッションを受け止めるに至ったことを書きましたが、それでは石油等の化石燃料に代わるエネルギーを何に求めるのかについて、明らかにしなければなりません。その場合、二つのポイントを前提にする必要があります。一つは、人類全体が必要とするエネルギーの総量の把握です。二つには、今なおエネルギーを満たされていないBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)を優先するという立場です。不用意な省エネ論などは、BOPの人びとへの死刑宣告でもあるからです。
今後の進捗は次のように予定しています。バックナンバーについては、リンクになっています。
 1.「石油・ドル本位制」に代わる世界システムをつくる [1]
 2.石油に代わる代替エネルギー資源としてのトリウム(本稿)

 3.人類が必要とする8万kWe、84万基のトリウム原子炉
 4.トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画
 5.トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」
 6.地域通貨「アトム」から国際準備通貨「UNI」への出世街道
 7.「見えざるカミの手」による布石か? シーランド要塞跡
 8.金融崩壊の今こそ、金融再生を担う新しい人材が必要
 9.工程表に従い、エンジニアリング企業とシーランドを確保
10.2050年の人口を基に策定したマーケティング・エリア
11.総額1680兆円の建設費を要するトリウム・エネルギー
12.トリフィン・ジレンマのない「アトム」だから「UNI」に出世できる
13.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(上)
14.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(下)

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21世紀に人類は、総量で1兆kWeの核エネルギーを必要とする

石油に代替する「エネルギー」に関しては、オバマ氏の就任以来「グリーン・ニューディール」なるものが唱導されていますが、核エネルギーを排除したいわゆる「グリーン・エネルギー」に「石油」文明の代替を期待し、託すには、22世紀まで待たなければならないというのが通説のようです。
この間を架橋する担い手となりうる「エネルギー」は、どう考えてみたところで、結局のところ「核エネルギー」しかありえません。いきなり結論めいた書き方をしましたので、反原発を信条とされている方には甚だ抵抗の大きい決め付けに聞こえるかもしれませんが、現実直視のためにあえて言い切っている次第です。
「トリウム熔融塩原子炉」の実現に生涯をかけた古川和男博士は、この橋渡しの期間に全人類が必要とする「核エネルギー」の総量を、マルケッツイの物流関数という手法を使って、電力換算で、約1兆kWeであると算出しています(文春新書「『原発』革命」192p)。
私はこの1兆kWeの電力を、核兵器、核拡散、核廃棄物(「3K」)を生むウラン−プルトニウム・サイクルの原発に委ねることは、絶対にできないと考えています。ところが、反原発運動の中にも少しずつ認識が広まりつつありますが、原発の中には、ウラン−プルトニウム・サイクルがもたらす「3K」と無縁の、まるで安全な「トリウム熔融塩原子炉」による「トリウム原発」があります。
苛酷事故と無縁で、放射性廃棄物を減らし、プルトニウムを焼却するトリウム炉

thorite.jpg
これがトリウム鉱石

ちなみに私は、Googleアラートに、「Thorium」というキーワードを登録していますが、昨年までは月に一件以下のヒットしかなかったものが、今ではほとんど毎日のように配信があります。3Kと無縁のトリウム原発に対する世界の関心が、急速に盛り上がってきていることを、このことからも伺い知ることができます。
ついでに言えば、「基軸通貨」というキーワードも、昨年から今年にかけて激増しており、「石油・ドル本位制」に代わる新しい世界システムを確立することこそ、宇宙船地球号の究極の課題であるとする私の主張が、このようなデータからも裏付けられているようで、心強く思っている次第です。
ところで、トリウム原発の研究開発をリードしてきた古川和男博士の著書、「『原発』革命」(文春新書)のカバー裏には、次のような紹介文が書かれています。

地球の温暖化から化石燃料の使用は控えざるをえない情況なのに、代替を期待される自然エネルギー技術はあまりに未熟、かといって原発は安全性に疑問、とエネルギー問題に解決の糸口はないかに見える。しかし、長く核エネルギー技術の開発に携わってきた著者はいう。事実上頼れるのは原発のみ、ならば今の原発を根本から変えよう、安全な原発は造りうる。危険なプルトニウムは消滅させうる、と。本書は未来を見据えた現実的で真摯なエネルギー論である。

「トリウム熔融塩原子炉」の特徴は、まず原理的に苛酷事故を起こすことがありえず、ウラン軽水炉に比べて3,667分の1しか放射性廃棄物を生まず、最も厄介な核廃棄物であるプルトニウムを生み出さないばかりか、このプルトニウムをも燃料として焼却し、エネルギーに変えてしまうことのできる唯一の原子炉でもあります。
冷戦の役に立たないトリウム原発を封印したアイゼンハワー大統領
反原発運動の中では、核兵器や核拡散の原因物質であるプルトニウムを指弾するわりには、溜まりに溜まりゆくプルトニウムをどうやって処分すればいいのかについては全くノーアイデアのようです。本気で地球上からプルトニウムを葬り去ろうと考えるのであれば、繰り返しますがこれをトリウム炉で燃やして、核エネルギーに変えてしまうしかありません。
つまり、反ウラン−プルトニウム原発運動は、実は親トリウム原発運動にならなければ、首尾一貫しないということになるわけです。いわゆるプルサーマルなるものも、プルトニウムの産出を前提としている限り、プルトニウム消滅の解決策にはまるでなりません。
反原発運動の中にあるもう一つの誤解として、「核エネルギー」を太陽光や風力や地熱と切り離して、あたかも自然エネルギーではないかのように考える認識が広められていますが、むしろ「核エネルギー」は最も典型的な自然エネルギーであり、とくに熔融塩という液体燃料を使う「トリウム熔融塩原子炉」によって得られる「核エネルギー」は、地球のマグマのエネルギーと基本的に軌を一にするものです。
「トリウム熔融塩原子炉」の基礎実験は、今から40年前の1969年、米国のローレンス・リバモア研究所で成功していましたが、「核兵器を作れないトリウム原発は冷戦の役に立たない」として、アイゼンハワー大統領によって却下され、封印されてしまいました。ここで第一ボタンの掛け違いが生じたのです。
(3)人類が必要とする8万kWe、84万基のトリウム原子炉 [2] につづく)

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