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宇宙船地球号パイロットのマニフェスト(3)                 人類が必要とする8万kWe、84万基のトリウム原子炉

第2回 [1]の枕にも書きましたが、次世代エネルギーを論じるに当って、人類が必要とするエネルギーの総量を、計数的にもイメージ的にも、時系列的にも、はっきりと把握することはきわめて重要です。このことをあいまいにしたまま、次世代エネルギーを定性的にのみ論じるのは、ともすれば夢想に終わりかねない危険を孕むものです。
エジソンによる電球の発明以来130年を経過した今に至るも、全人類の3分の1に当る22億人は、いまだかつて電力というエネルギーの存在を全く知らない非電化地域に住んでいるのです。この22億人(2050年には多分40億人)に電力を届けることは、筆者の最も切実な悲願でもあります。
ということで、3回目をお届けしますが、例によって今後の進捗を一覧にしておきます。バックナンバーについては、リンクになっています。
 1.「石油・ドル本位制」に代わる世界システムをつくる [2]
 2.石油に代わる代替エネルギー資源としてのトリウム [1]
 3.人類が必要とする8万kWe、84万基のトリウム原子炉(本稿)

 4.トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画
 5.トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」
 6.地域通貨「アトム」から国際準備通貨「UNI」への出世街道
 7.「見えざるカミの手」による布石か? シーランド要塞跡
 8.金融崩壊の今こそ、金融再生を担う新しい人材が必要
 9.工程表に従い、エンジニアリング企業とシーランドを確保
10.2050年の人口を基に策定したマーケティング・エリア
11.総額1680兆円の建設費を要するトリウム・エネルギー
12.トリフィン・ジレンマのない「アトム」だから「UNI」に出世できる
13.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(上)
14.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(下)

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ありがとうございます。
北欧で、チェコで、アメリカで、澎湃と芽吹いてきたトリウム・ルネサンス
アイゼンハワーによるボタンの掛け違い以後、古川和男博士を始めとする世界の核技術者たちの手で、研究開発の命脈が細々と保たれてきましたが、今(2009)年1月、北欧3国のトリウム原発の開発企業3社のコンソーシアムが、ついにフィンランドの次期の6番目の原発として、300万kWeのトリウム原発を採用するよう、提案がなされていることが発表されました。
またトリウム熔融塩の研究で世界の最先端を行っていたチェコ原子力研究所は、2011年にトリウム熔融塩原子炉を完成させることを公表しています。
ちなみに、私が上記「みんなの年金」の開発のためにニュージーランドに設立した信託会社、Golden Globe Trustee Ltd.と、このチェコ原子力研究所の研究者およびチェコ工科大学核工学科の教授陣、それにヨーロッパ最大手の原子力メーカーであるシュコダ核事業部の技術者、および古川和男氏とフランスのルコック氏は、2006年9月、トリウム熔融塩原子炉の実現に向けてコラボレーションを進めるための覚書を交わしています。
一方アメリカでは、40年前にトリウム炉の実験実証を成功させた上記のローレンス・リバモア研究所が、アルゴンヌ研究所、ロス・アラモス研究所とのコラボレーションによって、連邦エネルギー局の管轄のもと、SSTAR(小型・密封型・移動式・自動式の炉)というコンセプトのトリウム炉の開発研究に取り組んでいます。また米国議会は、米海軍においてトリウム原子炉の研究を進める費用を、国防予算に織り込むことを議決しました。
8万kWeのトリウム原発を3本のコンテナに凝縮する大量生産・大量建設構想
[3]私は古川博士のいう1兆kWeの電力を生み出すトリウム原発網を、21世紀中に建設するための総合計画の策定に取り組んできました。シミュレーションの結果、出力8万kWe、50%稼動、寿命30年の分散型小型「トリウム熔融塩原子炉」を、総計で84万基生産する必要があることが導き出されました。また立ち上げには10年で倍増のスピードが要求され、ピーク時と想定される2065年での発電量は、100億kWe/年となる必要があると推定されました。
この天文学的スケールの大量生産を実現するために私が到達した開発構想は、原発の構成要素である原子炉、蒸気発生器およびタービン・発電機を、それぞれ45、20、45フィートのコンテナサイズに凝縮、つまり原発全体をコンテナ3本に集約してしまい、プレファブリングによって、工場で大量生産するというものです。ちなみに、45フィートのコンテナは13,716ミリ×2,438ミリ×2,896ミリ、20フィートのコンテナは6,058ミリ×2,438ミリ×2,591ミリというサイズです。
これで地球上のどんな場所であっても、3本のコンテナをコンテナ船、鉄道、トレラー等で現地に運ぶだけで、「一夜城」ならぬ「一夜原発」ができることになるわけです。言い換えれば地球上の任意の場所が、直ちに油田の油井になるようなもので、電力は、個々の需要地において幾らでも得られるということになります。たとえそれが、銀座4丁目であっても、あるいは南極の昭和基地であっても、ということです。
わが国初の原発は、茨城県東海村の広大な敷地に建設された東海発電所ですが、その出力は16.6万kWeでした。わずかコンテナ3本に凝縮されるトリウム原発が、東海発電所の約2分の1の出力を実現することを思えば、我ながら隔世の感を禁じえないものがあります。
言うまでもないことですが、8万kWeのトリウム原子炉を、45フィートのコンテナサイズに凝縮することは至難の業でした。構成要素は炉本体、燃料タンク、熱交換器、ポンプ等となるわけですが、当然のことながら、炉本体は可能な限り大きくしたいわけです。そうすると、燃料タンクは炉本体に比例するとして、熱交換器+ポンプの大きさと炉本体の大きさとは、絶対的なトレードオフの関係になるわけです。
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45ftコンテナサイズのトリウム原子炉・熱交換器(左上)およびタービン・発電機(下)(クリックで拡大)

コンテナ化の鍵を握った小型高性能のプレート・アンド・シェル熱交換器
どのように工夫してみても、熱交換器とポンプのサイズを小さくすることができないため、一時は8万kWeを下方修正するか、あるいはコンテナサイズ化を諦めるか、というところまで追い詰められました。とにかくコンパクトな熱交換器の技術を見つけ出すしかないではないかと思うに至り、Googleで、「heat exchanger」、「熱交換器」をキーワードに画像検索をかけ、虱潰しに当たっていきました。
その結果私の目に止まったのは、フィンランドのバーテルス社が開発し製造している「プレート・アンド・シェル熱交換器」というものでした(http://www.vahterus.com/en/front-page [5])。日本では、三和テスコという会社(http://www.sanwa-tesco.co.jp/index.htm [6])が総代理店になっています。早速来日したバーテルス社の社長と技術部長に、私が設計したコンテナサイズのトリウム熔融塩炉の仕様について説明し、そこに組み込む熱交換器として、同社のプレート・アンド・シェル熱交換器の技術が応用できるかどうかのディスカッションを行いました。
問題はいくつかありました。最大の難点はプレートのサイズでした。私の設計では、直径2,408ミリの円形のプレートが多数必要になるのですが、素材である耐熱・耐放射線のニッケル合金、「1%ニオブ添加ハステロイN」の鋼材の板幅は、1,500ミリしかないのです。
バーテルス社の社長は、「この仕様の熱交換器は、世界中でうちしか作れない。うちとしては、面目にかけても引き受けざるを得ない。いざとなったら1,500ミリ幅の鋼板を溶接で繋ぎ、3,000ミリの幅にすることにもチャレンジしましょう。」といってくれたのです。このような紆余曲折を経て、8万kWeのトリウム原子炉は、ぴったり45フィートのコンテナサイズに納まることになりました。

(4)トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画 [7] につづく)

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