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宇宙船地球号パイロットのマニフェスト(4)                  トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画

前回 [1]も冒頭に述べましたが、非電化地域の住民であるBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)にこそ、優先的に電力を届けることが筆者の悲願です。BOP優先は、否応なしに低コストを迫ります。既存のウラン−プルトニウム・サイクルの原発による発電コストには、公表されない隠れコストも云々されていますが、発電所建設のコストの8割は、苛酷事故に対するセキュリティにかかるコストであると言われており、苛酷事故のないトリウム原発では不要なコストです。もちろんトリウムとウランの原料価格にも大差があります。
したがってBOPへの電力供給に適うエネルギー源は、今のところトリウムをおいては考えられません。この事実を共認することによってこそ、生産的な次世代エネルギー論を展開できるのではないでしょうか。それでは議論を先に進めることにしましょう。
ということで、4回目をお届けしますが、例によって今後の進捗を一覧にしておきます。バックナンバーについては、リンクになっています。
 1.「石油・ドル本位制」に代わる世界システムをつくる [2]
 2.石油に代わる代替エネルギー資源としてのトリウム [3]
 3.人類が必要とする8万kWe、84万基のトリウム原子炉 [1]
 4.トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画(本稿)

 5.トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」
 6.地域通貨「アトム」から国際準備通貨「UNI」への出世街道
 7.「見えざるカミの手」による布石か? シーランド要塞跡
 8.金融崩壊の今こそ、金融再生を担う新しい人材が必要
 9.工程表に従い、エンジニアリング企業とシーランドを確保
10.2050年の人口を基に策定したマーケティング・エリア
11.総額1680兆円の建設費を要するトリウム・エネルギー
12.トリフィン・ジレンマのない「アトム」だから「UNI」に出世できる
13.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(上)
14.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(下)

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ありがとうございます。
ピーク時日産30基のトリウム炉を生産する凄まじい生産計画
私は生前のソニーのファウンダー、井深大氏にご厚誼をいただいていました。あるとき井深氏は、ソニーが初めてポータブルCDプレーヤー(CDウォークマン)を開発したときの秘話を、私に聞かせてくれました。13センチ×13センチ×4センチに材木を切り出して、これを開発チームに渡し、このサイズのCDプレーヤーを作れと命じたのだそうです。
私の頭の中には、この時の記憶が鮮明にあり、この記憶があったればこそ、コンテナサイズの原子炉を作ろうという発想が閃いたのです。私はこのような発想がきわめて重要だと思っており、発想ができた瞬間に、無から有という価値が生まれるわけですから、その瞬間に物事は成就したものであると受け止めることにしています。確かに発想が閃いたあとも、いろいろと苦難のハードルはあるわけですが、それは高々プロセスに過ぎないわけで、やはり物事は、思った瞬間に成就するというのが、私の信念です。
それにしても、一口に84万基と言いますが、その生産自体、とてつもなく大変なことです。うまく生産計画を調整しても、ピーク時で年産8,400基程度になります。年間280日の稼動として、日産30基のペースです。航空機業界では、2002年〜11年の10年間の生産は、ボーイングが3,587機、エアバスが3,163機で、合わせて6,750機でした。年産にして675機……。年間280日の稼動として、日産2.4基ですから、これと比較しても、トリウム熔融塩原子炉の日産30基の凄まじさは、推して知るべしでしょう。
しかも蒸気発生器やタービンや発電機など、この炉の数に見合った発電設備や送電設備(グリッド)等のインフラも、原子炉に付帯して生産されなければなりません。
人類の1/3は非電化地域に住み、1/3は100W以下の電力で暮らしている
この84万基を2050年の予測人口分布に比例して、グローバルに満遍なく配備すると仮定すると、2050年に994万人となる東京都には、累計1,326基が建設され、2065年のピーク時には392基が稼動している計算になります。東京都には201校の都立高がありますので、ざっと都立高1校に2基配備されるイメージです。もっとも日本でトリウム炉が実用化されるようになるのは、多分世界中でも最もドンジリの方になるのではいかという気がしてなりませんが……。
いっぽう現在1億4千万人が住むバングラデシュは、2050年には2億8千万人へと、ちょうど倍増する見通しですが、この国には、世代交替をしながら累計で25,836基が建設され、それぞれ平均30年稼動した後、引退していくという計算になります。この数字は、日本に配賦される9,218基のほぼ2.8倍です。
私は世界初の実用型トリウム原発を、3年後を目処に、このバングラデシュの首都ダッカのナラヤンガンジに、BRACとの共同事業として建設できないかと検討を始めています。BRACといえば、NHKスペシャルの「沸騰都市ダッカ“奇跡”を呼ぶ融資」の中では、縫製業の起業家、イスラームさんの縫製工場が、工場開設の初っ端から電力不足のトラブルに巻き込まれ、縫製用のミシンが動かなくなるシーンがありますが、BOPマーケット開発のエネルギー・インフラとしての電力がもつ意味を、典型的に象徴しているシーンだと思いました。
現在人類66億人のうち3人に一人(22億人)は非電化地域に住んでいて、電力の恩恵を全く受けていません。また3人に一人(22億人)は100W以下の電力で生活しています。この現実を見る限り、「エネルギー」の問題は、40億とされるBOPの世界に重点を置いて解決されなければなりません。私が設計したコンテナサイズの「トリウム熔融塩原子炉」は、究極のシンプル設計と大量生産も相俟って、画期的な低コストの電力を実現する可能性を秘めています。

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光と闇。北朝鮮の闇は不気味です。クリックで拡大します。

世界を128のエリアに分割して推進していくトリウム原発建設計画
ちなみに十分な量産が可能になれば、上記の8万kWeのトリウム原発1基の生産コストは、20億円前後になることが想定されます。また生産コストを償却した後のメンテナンスコストは、電力受給者一人当たりで年間約40円程度が見込まれます。いずれ電力は、文字通りBOPの世界を含めて、2050年における全世界人口90数億人に、一人残らず低コストで供給されるようになるはずです。
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全世界の非電化住民に電力を

私はまずアジアで最も貧しい国とされるバングラデシュで、BOP独特の電力供給のビジネスモデルをつくりあげ、開発途上国を優先しつつ、全世界を2050年の予測人口(9,101,534,000人)を基準に、ほぼ等しく128のマーケティング・エリア(別添資料「トリウム原発建設計画」 [5]参照)に分割し、電力供給の事業展開を進めていく考えです。
128のマーケティング・エリアには、それぞれに「リージョナル・サプライ・センター」(RSC)を建設しますが、その1エリア当たりの平均人口は7,111万人、最大稼動時のトリウム原発の数は1,940基/エリア、原発1基で平均36,650人の人口に電力を供給している状態になります。
それぞれのマーケティング・エリアにおけるビジネスモデルは、著書「21世紀の国富論」、「新しい資本主義」で有名な原丈人氏が率いるデフタ パートナーズが、バングラデシュにおいてBRACと共同でつくった「デフタ・bracNetモデル」を参考にしてこれを応用していきたいと考えています。
まずはバングラデシュにおいて、「みんなの年金」基金とBRACの資金との共同出資によって、世界初のトリウム原発電力会社を興そうと考えています。そしてゆくゆくは、「みんなの年金」の各国版の基金を、地産地消で運用することによって、トリウム原発電力会社網を世界中に広げ、一刻も早く地球上から、非電化地域をなくしていくことが、私が到達したマーケティング政策の結論です。

(5)トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」 [6] につづく)

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