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「市場の原理(価格格差の秘密)」−3 〜市場拡大の前提条件〜

 前回は14〜16世紀のルネッサンス、大航海時代にかけての市場の拡大の背後に宮廷サロンを起点とした自由な性市場の存在、大商人(金貸し)の台頭について調べてみました。「市場の原理(価格格差の秘密)」−2 〜市場の拡大 [1]
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 今回は、十字軍遠征、大航海時代以降、産業革命を経て、市場はどのように拡大していたのか?について調べてみたいと思います。 😉
 まずは学校で教えられる(た)授業の要点を振り返ってみましょう。
小・中学校で習う社会の事例 歴史の扉 中学歴史ノート [2]

   [大商人]     [豊かな市民・農民]     [資本家]     [資本家←→労働者]
  ギルド制手工業    工場制手工業      機械の発明
      ↓         (マニュファクチュア)         ↓         資本主義の確立
  問屋制手工業                  工場制機械工業 
[絶対王政の時代]  [市民革命の時代]  [産業革命の時代]  [資本主義の時代]

市民階級:中世末から、台頭してきた中小商工業者や独立自営農民(富農)のこと。
・市民階級(ブルジョアジー)は、新しい産業を担う社会の中産的な階層であった。
・市民階級は、国王によって産業活動に制限を加えられることに反発した。
 →議会政治を確立、絶対主義を廃し、産業を自由に発展させようとして革命をおこした。
産業革命:工場制手工業から工場制機械工業への変化を産業革命という。
 →18世紀の後半、イギリスの綿織物工業の技術革新から始まった。
・工場制機械工業の発達によって、工業製品の大量生産が可能となった。
 →熟練工が不必要になる。
・工場を建設するのに便利な場所に工業都市が誕生した。
 →都市と農村の区別ができた。
・資本家と労働者、二つの階級の区別が顕著となり、労働問題が発生した。
・生産の高まりから市場や原料供給地を海外へ求めるようになり、植民地の拡大を促した。
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富める者と貧しきもの(小学館・大百科辞典)
産業革命による資本主義の発展は中・上流階級と貧しい労働者階級を生み出しました

上記を超簡単にまとめると、
 絶対王政の時代、国王によって苦しめられてきた市民、農民が決起して市民革命を起こし、見事に勝利し自由を得た。
 やがて富を蓄積していた大商人が資本家となり、産業革命の機械化によって工場による大量生産体制を確立し、市場は資本家と労働者の階級に区分される資本主義社会へと移行し、市場は一気に拡大していった。
 ここで資本主義の成立へのポイントとして、『産業革命による機械化、大量生産』が挙げられますが、それだけで成立するものなのでしょうか? 🙄
今回はそこに焦点をあてて、少し深く突っ込んでみたいと思います。
その前にいつものように ぽち ぽち ぽちっと応援の方をよろしくお願いします。
       


資本主義が成立するためには、商品生産と商品交換が一般化しており、自己の労働力を商品化する賃金労働者の存在が必要である。『ウィキペディア(Wikipedia)』 [3]
と書かれているように、
何であれ商品化されていること。
労働力を商品化した賃金労働者の存在。
が必要となります。ここまでは一般的に知っている人も多いことだと思います。
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18世紀の労働者
さらに一歩踏み込んだ内容として、るいネットの注目投稿より、抜粋して以下に引用します。
 資本主義とセックス [4]

 岸田秀は、ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を題材に、これに接続するかたちで次のように述べています。
——以下、「性的唯幻論序説」 [5]より引用——
 要するに、西欧近代は性的禁止を強め、さらに女には性欲がないことにして、素人娘や素人女が結婚しないで、またはお金を取らないで気軽に男と寝ないようにした。そして、女をいずれにしても男にとってはお金のかかる清純な乙女と売春婦に二分した。もちろん売春婦は昔からいたが、無料セックスを排除して、セックスの有料化を徹底したのである。その結果、男たちは、性欲を満足させようとすれば、清純な乙女を相手にするにせよ、売春婦を相手にするにせよ、きわめて高くつき、お金をたくさん使わなければならず、そのお金を稼ぐため、常時働いていなければならないという状況に追い込まれたのであった。これは、言うまでもなく、資本主義社会を支える重要な前提条件の一つである。
 <中略>
 近代人も働くためには、かつての「神のため」に優るとも劣らぬぐらい強い働く動機となる目的が必要ではなかろうか。それが「恋のため」「セックスのため」ということだったのではなかろうか。実際、近代の恋愛は、恋人を理想化し、崇め、恋人を得るために生命をも賭けることがあるくらいで、これが、かつての神への信仰が崇拝対象を入れ替えただけに過ぎないものであることは、ちょっと考えればすぐわかるであろう。だからこそ、かつて神のために働くことができたのと同じように、恋のために働くことができるのである。
——引用ここまで——
 資本制の生産様式は必然的に大量の労働力を必要とし、また資本主義が成立するにはその労働力が商品化されていることがひとつの条件になります。こうした(奴隷的な)労働者にとって、(少なくとも潜在的には)女の獲得がインセンティブとなっていたというのはおそらく間違いないのではないかと思います。(また私権の獲得と女の獲得が所有意識として不可分に繋がっている点は、統合階級も同じでしょう)
 言いかえれば、労働力という商品(もしくは獲得した私権)と、商品化された女の性との交換関係であるといえます。

  驚くことに、何であれ商品化の中には『セックスの有料化』も含まれていたのです。
 誤解がないように補足しておきますが、『セックスの有料化』とは売春婦だけをいっているわけでなく、恋愛中の彼女とのデート代や結婚してからも女房、子どもを養っていくには、お金がかかるという広義の意味で捉えてください。
  つまり『セックスを有料化』することで、たくさんのお金を使わせ、そのお金を稼ぐため常時働かねばならないという状況を作り、労働力を確保していたともいえますし、労働者が逃げ出しにくい状況に追い込まれていたとも取れます。
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 では工場の賃金労働者ではなく、農業などをやればいいのでは?という疑問が出てきますが、農耕の労働価格は幻想価値の労働価格に比べて異常に低いという『価格格差』の現実が人々の流出を阻んでいるのです。
 ではこの『セックスの有料化』はどのように広められていったのでしょうか?
ブログ「知られざる人類婚姻史と共同体社会」より、
フランスのカップル社会とは?第3弾 西洋の婚姻史 [6]
フランスのカップル社会とは?⇒キリスト教による奴隷の婚姻制=一対婚 [7]

<キリスト教と婚姻>(以下引用)
 古代に広く行き渡っていた婚姻の様態は、キリスト教によって根底から変革された。キリスト教が築いた伝統では、婚姻とみなしうる性関係は、一夫一婦でなければならず、生涯をかけた夫婦の共同生活と結びつき、かつ貞操の義務を特徴としてそなえていなければならなかった。
 同時に、この夫婦の結合は決して解消ならないものであり、四世紀にアウグスチヌスによって確立された秘跡の教理と結びついて、特別な厳粛性をもつにいたったのである。婚姻は、それが秘跡であるというこの教義により、神の恩恵の媒体たる高い次元にまで達した。婚姻は、いまや夫婦相互、子供、そして神に対して、当事者が最高の責任を持つこととなった。それは崇高な理念ではある。
 しかし、実際生活においてどの程度までこの教理に即しえたかは判然としない。これを判定するには、男性の不貞が長い間寛大に扱われてきたことと、売春、蓄妾の制度が黙認されてきたことを考慮する必要がある。配偶者以外の者との性交を絶対に認めないという意味での貞操の義務は、長い間女性の側だけに適用されてきたのであり、それが男性に適用されるようになったのは、もっと近代になってからである。(引用終わり)
 つまり、キリスト教は「一対婚」という婚姻制度を「秘蹟(ひせき)」という形で救済される形体を組み込み、支配者の侵略→奴隷の統合にとても都合の良い武器となり、爆発的(強制的)に広まっていった宗教と言えそうです。
 現代では、「一生一人に添い遂げる」ということで一対婚(一夫一婦制)が美化されていますが、元々は奴隷を都合良く管理する婚姻形態にすぎないのだ。と認識を改める必要があるのではないでしょうか。

 キリスト教は、15〜16世紀に爆発的に拡大しています。(下記をクリックして参照してください)History – of – Religion [8]
 
 つまり資本主義社会の前提となる女の性の商品化及び幻想共認、男の労働力(商品)と女の性との交換関係及びその強制圧力化は、キリスト教による布教が大きく影響していると考えられます。
 大商人(金貸し)は、その手引きを担っていたばかりでなく、そのこと正当化するために美化した欺瞞観念で誤魔化し続けていることが、現代の学校教育、教科書には決して書かれないという理由(証拠)ではないのでしょうか。 👿
 次回は、幻想共認⇒格差拡大のメカニズムについて扱ってみたいと思います。 8)

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