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「市場の原理(価格格差の秘密)」−5 〜農産物はなぜ安いか?〜

 「市場の原理(価格格差の秘密)」−4 〜幻想共認⇒格差拡大のメカニズム〜 では、幻想価値の共認から価格格差が広がって行く仕組みについてふれましたが、モノの値段の中には幻想価値のつきやすいものと、そうでないものがあるようです。そうでないものの代表に『農産物』が挙げられます。なぜ農産物には幻想価値が付かない(安い)のか?その秘密について探っていきます。

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農産物はなぜ安いか? リンク [3]

 例えば、ブランド品と農産物の価格格差は、よく言われるような生産コストや需給バランスだけでは説明できない。たとえ同じ原価と労働量であったとしても、農産物に比してブランド品の方が何倍(〜何百倍)もの高値になることは稀ではない。ブランド品も需要に見合うだけの供給量が増えれば、価格は下がるはずだが、現実には農産品ほど価格が下がることはない。
 素直に考えるとおかしいが、市場原理にはみんなが必要とする必需品ほど安くなり、みんなが必要としない贅沢品ほど相対的に(異常に)高くなって、価格格差が開いてゆくという基本法則がある。これはなぜであろうか?
 その謎を解く鍵が幻想価値である。必需品は幻想化の余地が少ないので低価格になり、贅沢品は幻想化の余地が大きいので高値がつくと考えれば辻褄が合う。

 一般的に高額価値となるものは「希少価値」(限定品、いわゆるレアモノ)であることが条件だと思っていましたが、それだけではなく「幻想価値」が共認され易いかどうかが重要なファクターになってくるようです。
 「幻想価値」と言うのは読んで字のごとく「幻想」なわけで、たとえば中世であれば「砂糖」は贅沢品で当初は貴族の間でさえも薬として流通するほどでした。当然、庶民は殆ど口にすることなど出来ないものでした。
 なので…  
 

[4] 「パンがなけれはお菓子を食べればよろしいのに

この方にこんなこと言われても、実際に口にしたことがないわけですから「幻想」はどんどん広がっていくワケです。しかし、そこにもう一つの重要なカラクリがあります。

 みんなが必要とする必需品の場合は、それを消費する(使う)目的も明確だし、そのモノがどのように役に立つのかも明確である。だから、価格に対する効果も分かりやすく、売るほうからすると消費者を騙せる余地が少ない。従って、実体価値(使用価値)を大きく超える幻想価値は捏造しにくい。(一部にブランド食品等も出回っているが、高級ブランド商品に比べると価格格差は知れている。)
 それに対して、ブランド品の場合は、そもそもそれを消費する(使う)目的も不明確だし、そのモノがどのように役に立つのかも不明確である。(はっきり言ってしまえば、生活するうえではほとんど必要のないモノばかりであると言ってもいいだろう。せいぜい、他人の羨望の的になったり、それによって自己顕示欲を充たしたりするぐらいの効能しかない。)主観的な好みが支配する世界であるだけに、価格に対する効果も非常に分かりにくく、売るほうからすると消費者を騙せる余地が大きい。従って、実体価値(使用価値)を大きく超える幻想価値が捏造しやすい。
 要するに、市場という駆け引きの世界では、人を騙しやすいものほど高値になり、騙しにくいものほど安値になる。

 つまり、日々消費されていくもの(誰もが必要としているもの)は「幻想価値」が付き難く、逆に実際には役に立たない(必要でないもの)ほど「幻想価値」が付き易く高額になり易い。だから皆が必要な農産物とブランド物に価格格差が広がっていくのです。
 
 酪農家の方がいくら
 

[5] 「水がなければ牛乳を飲めばよろしいのに。」

と言っても、牛乳は日々の生活で消費されていくもので幻想価値はつきにくく、実際エビアンより安いわけです(ノД`)・゜・。

 農産物が安くなるということは、消費者にとっては有難い反面、他の幻想価値のくっついている商品に比べて安くなりすぎると、生産者の生活が成り立たなくなる(担い手もいなくなる)という切実な問題がある。騙しの上手い者が甘い汁を吸い、汗水垂らして働く騙しの下手な者が苦労をするという市場原理はやはりどこかおかしい。価格格差の問題も、必要か否かという観点で捉え直す必要がある。

実際農繁期の農業の仕事ぶりはかなり過酷です。それでも日々、皆の必要とする農産物をつくり続けるのは市場原理を超えた何かを感じます。(感謝) [6]

 まっとうに働いて「皆が必要とするもの」を作っているのに価格は安いまま、一方で「役に立たないもの」の幻想価値が共認されて価格格差が広がっていく…。そんな社会は明らかにおかしいと思います。しかし長年に亘ってこうした仕組みは維持されています(おそらく市場と言うものが登場して以降の普遍構造)。
 なぜ、こうした価格格差の仕組みが維持され続けているのか、次回『市場の原理(価格格差の秘密)」−6』では、幻想価値の代表選手とも言うべき「ダイヤモンド」にスポットを当てて調べていきます。 
 

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