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日本の税システムを考える−8 一般取引税で社会が変わる!?(6)

日本の税制の抜本的転換を提言する「一般取引税を導入して夢のジパングへ」 [1](馬場英治氏)を紹介するシリーズの第6回。
前回までの記事はこちら
第1回 [2]
第2回 [3]
第3回 [3]
第4回 [4]
第5回 [5]
今回は今までの議論の「まとめ版」です。

問い:消費税を上げる以外の方法で10兆円の追加財源を得ることは可能か?
答え:消費税に代わる徴税手段としてより公正な一般取引税を導入すれば良い

まず、馬場氏の社会提言は、斬新さに溢れ、十分に興味を惹く内容でした。
そして、提言文を読み進めるにつれて、馬場氏が一般取引税を考えるに至った背景や問題意識を理解することができ、私達が掲げた「日本の税システムをどうする?」というテーマを今後考える上で、基礎となる認識を頂いたように思います。
また、私達の連載当初からの記事をご覧頂き 、氏主宰のブログ [6]でも、丁寧に質問を取り込んではご回答を下さるなど、万人に開かれたネットという場で、互いに協働できたこと、非常に嬉しく思っております。この場を借りて御礼申し上げます。
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 少し話しは逸れますが、私達が社会のことを知ろうと思えば、ネットが登場する以前は、極論すればマスコミの情報を鵜呑みにせざるを得なかった。そこでは、私達は単に受信するのみで、社会に対して発信する場は非常に限られていました(デモ?本の執筆?セミナー?いずれも簡単ではない)。
今回の協働を通して、改めてネットという「場」の可能性を感じた次第です。
さて、本題に移ります。
今まで一般取引税を追求してきた内容を纏めます。
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※画像はこちら [7]からお借りしました


役に立つ認識・気付きになった点
◇実体経済の上に税制を構築する
一般取引税導入で最も注目される点が、国家の財政をマネー経済の上に築くのではなく、実物経済の上に構築することに主眼を置く、という認識です。
では、実体経済の上に構築することに、どういった意味があるのでしょうか?
国家財政は単年度ごとに予算化→実行されます。
予算は単年度であっても、国益を見通した長期的な財政政策は必要不可欠であり、その基盤となる財源には長期的な確実性・安定性が期待されることは衆知のことと思います。
その目的において、マネー経済という名の、「投機バクチ経済」の上に財源を構築すればどうなるのでしょうか?
投機バクチ経済は、既に国家の枠を超え、世界的範囲で金貸し達が凌ぎを削る主戦上 になっています。金貸しのサジ加減一つで相場が日々変動し、ここ3〜4年の内に起こったリーマンショックやギリシャ危機に代表されるように、時として通貨価格や株式価格に多大な影響が生じます。
金貸し達が牛耳る市場に財源を構築していては、国民が主体的に財政政策をコントロールすることはできません。
馬場氏は、全銀ネットのトランザクション(年間2,500兆円)に財源を求められていますが、それも日々の実体経済取引の基盤はどこか?という問題意識が中心であると理解しています。
◇徴税コストを大幅に削減できる
一般取引税を導入すると、税金を税務署に代わって銀行が収集することになります。
方法は、銀行口座のトランザクションから一定の税率がかかった金額が徴収され、日銀に納められます。
銀行システムを用いた自動収集方式ですから、税務署が不要になり、徴税コストの大幅削減が実現できます。
ここで、凡その徴税コストを把握してみたいと思います。
リンク [8]によれば、2008年度の国税庁予算額は7,227億円となっています。ちなみに、100円の税金を集めるために必要なコストを「徴税コスト」と呼びますが、2008年は、税収46兆9,709億円を7,227億円で除した値、約1.35円と計算できます。
約7,000億といえば、京都府の一般会計予算で約8,500億円、滋賀県で約5,000億円ですから、地方都市の財政レベルに匹敵する規模 であることが分かります。
この大規模な削減コストをどうするか?ですが、社会的企業の支援に回したり、国民の行政参加を促すシステム(この辺りは要追求ですが…)構築に使ったり、総じて活力上昇のための生産活動支援金として使っても面白いかなと思います。
◇捕捉率100%!脱税を防ぎ、ブラックマネーからも徴税可能な税制に
全銀ネット上のトランザクションを課税ベースにするため、原理的に脱税が不可能になります。また、馬場氏も言及されていますが、これまで合法・非合法に免税・脱税・租税回避を享受してきた企業や団体、個人(公共法人、宗教法人、政治家等)にも均等な納税義務が発生します。
どの企業・集団・個人であれ、社会的な評価を受ける
→対価を受け取る→銀行を介した決済を行う→税が発生→国作りの原資
という、シンプル且つ不平等感の無い税制の可能性を示してくれます。
課題・改良点
◇投機マネー経済をどうする?
提言文中の「電子的実取引税税率3%モデル」の中で、銀行業務には課税しない代わりに、破綻時の救済も行わない、との基本認識が示されています。
提言に従えば、原則的に税制によるマネー経済からの徴収は行わない代わりに、金融機関が破綻した場合は、国民の税金でもって救済するなど有り得ないと理解できます。
つまり、実体経済と投機マネー経済を完全に切り離すことを狙った税制になります。
しかし、気付きになった点で前述した通り、金貸しが右から左へ多額のマネーを動かすだけで、例えば通貨の値段が変わり・原油の値段が代わり・雇用情勢が変化するのが経済です。
現実には、投機マネー経済の動向は、常に実体経済へ影響を及ぼすため、切っても切れない不可分の関係にあります。
さらに、昨今の国家借金△=市場の金余りによって、金貸しを主体にしたバクチへの資金投入量は増加の一方であり、実体経済への影響度が増す一方であることに問題が求められます。
馬場氏ブログ [9]の記事から引用

ここまでの議論で抜けているのは、金融業者に対する課税の問題です。一般取引税3%モデルでは税制は電子的取引税に1本化されていますから、トランザクション・タックスを非課税化するということはその業種全体が非課税になることを意味します。
〜中略〜
従って、金融取引を非課税とした以上、なんらかの別の課目で課税することが必要になります。
〜中略〜
この当りは政策上の問題です。

馬場氏からも触れて頂いていますが、実体経済を財源の中心においた税制を考える以上、「投機マネー経済への規制」は、避けては通れない課題ではないかと思います。
マネー経済を規制する手段として、法律による取引の制限と税制による制限の2種が考えられます。
税制に焦点を当てた場合、「マネー経済を財源として見るのではなく、税制を使ってどう規制するか?」が私達に問われる課題であり、一般取引税を補完する税制構築が求められると思います。
◇相続税をどうする?累進課税をどうする?
相続税は資産(ストック)にかかる税、所得の累進課税は収入(フロー)にかかる税として区分されますが、いずれも定められた規模以上の資産・収入を持つ人に高額の税率が課せられて、社会に還元される仕組みになっています。
一般取引税の導入では、国税である所得税や相続税はいずれも撤廃される原則になりますが、再考の余地があるように思います。
現実に相続税を廃止すれば、どのような影響が出るのでしょうか?
貧困で私権欠乏が強い時代には、相続税制度は、一定の資産を国家が徴収して再配分を促すことによって、万人に私権獲得の可能性を与える=国力(活力)を上げる、効果があったものと思われます。
その点だけ見ると、豊かになった現代においては、私権獲得に対する欠乏はかなり衰弱しているため、相続税を廃止したところで、別に活力に影響することは無いのでは?とも思えます。
しかし、相続については、他に重要な問題があります
それは、相続とは、私有制度が残り続ける以上、ある特定の家系なり個人が、その能力や人望に関わらず、土地などの生産基盤や人間を支配する力を独占し続けるということです。
現代は、これまでの人々の私権欠乏に基づいて社会が作られていった結果、至るところで組織や集団のガタガタ現象が見られるようになりました。
※市場社会で儲からない農業の没落=耕作放棄地の増大
→食をどうする?
※行き過ぎた都市化による、教育・遊びの場や地域コミュニティの徹底排除など
→教育をどうする?地域との繋がりをどうする?
上記のように、ガタガタになった組織や集団をどう再生する?といった社会統合気運が今上昇しています。その中で仮に相続税制度を廃止すれば、これらの解決に必要な社会的資産の独占を認め続けることになり、資産の共有化も、私権第一からの認識転換も遅れる一方です。
よって、ある家系や個人に過剰に蓄積されたストック=社会の生産基盤を税制によって一定徴収・再配分していくシステムは、何らかの形で存続させるべきではないかと考えます。
所得税の累進課税も似た側面があります。
多額の資産が源泉となった所得(不労所得)や、金融マネー経済で多額に儲けた(マネー市場の増長)場合などをどうする?いう課題が残ります。
最後に
以上、一般取引税を中心にした気付きや、今後の課題を纏めてきました。
これを生かして、最終章の「新時代にふさわしい税システムとは?」へ移りますので、今しばらくお待ち下さい。
次回は、前回好評だった「世界のおもしろ税:第二弾!」を発表致します
今度はどんな税が飛び出してくるやら!?
ご期待下さい

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