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日本の税システムを考える−12 新時代にふさわしい税システムとは?(3)

私権原理・序列原理から共認原理へ向かう、新たな時代にふさわしい税システムのあり方を提案する第3回。前々回の(1) [1]では、来るべき時代の姿を概観し、そこで求められる5つの課題

1.バラバラになってしまった個人⇒課題・役割・評価・充足を共有出来る集団(共同体)の再生
2.大量消費⇒自然の摂理に則った循環型経済
3.市場原理によって脇に追いやられたが、本当に必要とされる仕事・産業の活性化
  (ex.農業、介護系など)
4.マスコミ支配からの脱却⇒マスコミに変わる共認形成の場と社会統合機構
5.米・金貸し支配からの脱却

を提示した。
同記事では、1.の集団(共同体)再生に向けて、企業の共同体化を促進する税制の導入を、(2) [2]では、2.大量消費⇒自然循環型経済への転換、3.農業を始めとする必要な産業の活性化に向けた税制の検討を行った。
今回は、

4.マスコミ支配からの脱却
5.米・金貸し支配からの脱却

について検討してみる。
本来、このマスコミ支配、アメリカ・金貸し支配といった現代社会病理の根幹を成す問題には、税システムよりむしろ、法律、場合によっては憲法のレベルで強力に対処すべきであろう。極論すれば、「マスコミは解体」 [3]してしまえば良いのであり、「銀行がつぶれても誰も困らない」 [4]。中央銀行制度の見直しや政府紙幣まで視野に入れれば、“税”という概念自体が根底から変わってしまうかも知れない。
しかし、一足飛びにそこまで法制度の転換が成されることは考え難いし、税法を改正しさえすれば今すぐにでも導入可能な、現実性の高い手を考えておくことも必要だろう。
では、現在の国家が国内経済から徴収する税という枠組みの中で、マスコミ支配、米・金貸し支配に対して、どのような方策が考えられるだろうか?
いつも応援ありがとうございます♪


1.マスコミ支配からの脱却
提案その1・・・『広告税』
広告税は以前、自民党の麻生前首相が在任時に導入を提言したことがある。
「広告税の導入」について、みなさんはどう思われますか 
マスコミはこれを恐れて麻生氏をバッシング?

これは、企業が使う広告費を交際費と同様に課税対象にする(経費扱いしない)というもの。新聞社の収入の5割、TVの7割は広告費なので、導入されれば企業は広告費を絞り込み、マスコミには大ダメージになる。麻生案は代わりに交際費を経費扱いとして企業側のバランスをとっており、完全にマスコミ狙いだった。政権末期にマスコミから手酷いバッシングを受けたのは、これも一因だろう。
今や、企業にとってTV・新聞広告の効用は疑わしくなっている。社会にとっても広告費でマスコミを潤すより交際費で遊ぶ方がまだ害が少ない。だから、これは是非導入すべきだろう。ただし、広告でもチラシや電車広告などマスではない必須経費もあるから、その辺りは峻別が必要だろう。
提案その2・・・『視聴税』
逆に、TV視聴者に課税する「視聴税」も考えられる。TVが無料だから、視聴者は何も考えずにテレビ漬けになり、無意識のうちに洗脳される。有料なら、今よりは厳しい目を番組内容に向けるだろうし、不要なら一切見なくなるだろう。TV受信装置に受信時間のデータを送信するシステムを装備すれば、“本当の”視聴率調査も容易になる。場合によっては視聴税を本当の視聴率に応じたメディアの収入源にしても良い。

videoresearch.jpgビデオリサーチの視聴率調査機器。写真はこちら [5]より

提案その3・・・『共認形成サイト優遇税』
一方で、現在のマスコミに代わる共認形成の場の育成も求められる。例えば、インターネットやケーブルテレビなどにおける企業・個人の社会発信の場づくりを促すため、このような社会的活動で得られた収入に税をかけないとか、このような社会活動に充てられた経費分の税控除が受けられるなどの優遇税制が考えられる。
2.米・金貸し支配からの脱却
第二次大戦後続いている米国支配、さらにその背後の金貸し支配から完全に脱却するという大きな課題は、税制だけで手に負えるような代物ではない。よって、ここではややテクニカルな金融規制について考えてみる。
提案・・・一般取引税の仕組みを活かした『融資税』
本シリーズ第8回(1) [6](6) [7]で紹介した「静かなる革命」様の提言する一般取引税 [8]では、税収を実物経済ベースで構築する(金融に振り回されない)という原則のもと、金融取引は無税とされている。一方で、以前の記事で書いたように、税システムにおいても、金融の暴走を抑止できるような仕組みが組み込まれている方が望ましいのは言うまでも無い。
実体経済においてもマネー経済においても、その拡大・膨張の直接的な原動力は信用創造=貸付である。市場が縮小していく中、貸付額を拡大・膨張させるために、レバレッジを効かせる手法やデリバティブなどの金融派生商品も発明され、それが暴走を極めたのが現在の事態だと言って良い。
よって、税制によって金融規制を図るとすれば、この融資という行為をターゲットにするのが良いと思われる。ここで、銀行間の資金移動に課税する一般取引税の発想が活きてくるのではないか。
金融機関の事業報告書を見ると、一般企業への貸し出し等による事業利益と、為替や金融派生商品の取引による利益は区分されている。よって、これらの資金移動は技術的には区別できる筈で、後者に課税する方法が考えられる。これによって、マネーの過剰な膨張を防ぐ手綱としての作用が期待できるのではないだろうか。
しかし、「静かなる革命」様 [8]も指摘しているように、金融グローバルが進んだ現在、その効果は国内に限られるだろうし、こうした制度の導入には国際金融資本や銀行界が猛烈に反発することは必至だ。やはり、それに対抗しうるだけの社会共認や政治状況をつくることが先決になるだろう。
これまで、新しい時代に求められる税システムについて幾つかの提案を行った。次回、改めて総まとめと残る課題の検討を行って、本シリーズを一旦の区切りにしたい。

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