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BRICs徹底分析〜ブラジル編その4 石油輸出国に転じたブラジル、それを担う国策会社ペトロブラス

BRICs徹底分析、ブラジルシリーズも第4回となります。 
 
第1回は、オリンピック、ワールドカップ開催国に沸く新世紀ブラジル
第2回は、セラード開発と農業大国への道
第3回は、世界一の鉄鉱石資源を扱うブラジル巨大企業ヴァーレ社
を紹介してきました。 
 
第4回は、資源大国ブラジルの注目度をさらに高く押し上げた石油資源とブラジル企業について紹介します。 
 
『世界3位の埋蔵量330億バレルの大油田発見か』  
リンク [1] 
 
この記事は、2008年4月15日ブラジル石油監督庁理事アロルド・リマ理事により発表され、世界を驚かせました。 
 
『サントス海盆のパン・デ・アスーカルと呼ばれる地域内の鉱区BM-S-9で、埋蔵量が330億バレルに達する世界3位の可能性がある大油田を発見したと発表した。
世界の巨大油田としてはサウジアラビアのガワール油田の埋蔵量が750億バレルから830億バレル、クエートのブルガン油田が660億バレルから720億 バレル、昨日発表されたBM-S-9が330億バレルでヴェネズエラのボリヴァール・コアスタウ油田の320億バレルを抜いて世界3位の油田となる可能性 がある。』 
 
という発表内容です。 
 
長い間石油輸入国であったブラジルは、2006年石油自給体制を整え、さらに石油輸出国に転じ、(石油資源の少ない)石油消費国から注目を集めています。 
さらに、次々と発見される海底(深海)油田の埋蔵量は(その量という点で)群を抜いています。 
 
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1.石油輸出国に転じたブラジル(ブラジル石油事情はどうなっている?)
2.それを支える国策会社ペトロブラス(知られざる国策会社、今の現状は?)
3.伸び続ける投資意欲(成長著しい企業、投資意欲も拡大基調) 
 
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1.石油輸出国に転じたブラジル(ブラジル石油事情はどうなっている?) 
 
まず、日本貿易振興機構(ジェトロ)ブラジル経済動向より、注目記事を紹介します。 リンク [2]

ぺトロブラスは2006年4月21日、リオデジャネイロ州沖のカンポス海域東アルバコラ油田にある、プラットフォーム50(生産能力18万バレル/日、投資額6億3,400万ドル)が石油採掘を開始したことで、石油の自給体制に入ったと発表した。

2006年の輸出は、石油、鉄鉱石などの価格高騰により前年比16.2%増の1,374億7,000万ドル、輸入は国内市場の好調、レアル高の影響で24.2%増の913億9,600万ドルとなった。貿易黒字額は3.1%増の460億7,400万ドルとなり、2003年以降4年連続で過去最高を更新した。

ブラジルは、2006年を境として石油の自給、さらには輸出国へと転じたことが明確となりました。 
 
下記リンク先に2006年から2008年にかけてのブラジル品目別輸出統計があります。リンク [3] 
 
2006年原油輸出高は68億9400万ドルでしたが、2007年には89億500万ドル、2008年には135億3900万ドルとなり、(年率)伸び率は56.6%、世界一の鉄鋼石に次いで(主要輸出品の大豆を抜いて)品目別輸出高第2位の地位を占めています。 
 
2.それを支える国策会社ペトロブラス(知られざる国策会社、今の現状は?) 
 
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  (ペトロブラス海洋油田プラットホームP-53におけるWEG) 
ペトロブラスという会社、日本ではあまり知られていませんが、その隠された実力は、世界が注目しています。 
 
具体的に知っていただくために、ブラジル事情を詳しく紹介しています広瀬隆雄さん投資情報レポートより紹介させて頂きます。
リンク [4] 
 
ペトロブラスの実力、世界の上場大手石油会社の生産量と比較してみます。(2008年) 
 
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ペトロブラスの生産量は、世界4位 シェブロンテキサコに匹敵しています。 
 
さらに驚くことは、ペトロブラスの生産量伸び率です。
過去2年間に相次いで発見された大型油田の生産が向こう5年くらいの間に立ちあがって来るので、長期的に見ても高い生産量の伸びを維持し、世界の石油会社でもトップクラスの成長率を維持できると思われます。 
 
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また、深海油田の生産シェアも世界トップです。 
 
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このペトロブラスの歴史を、ウイキペディアの英語版、日本語版を参考にしてまとめてみました。

ペトロブラスは1953年に、時のバルガス大統領の強い意志により設立されました。ブラジルの大衆が、「石油は我々のものだ」という声を挙げ、それを背景にして設立したのです。それに対して、ブラジルのエリート層は、旧来の秩序を壊し、事業の機会を奪うと反発しました。 
 
ペトロブラスの事業は、石油、天然ガスの採掘のみならず、石油製品の卸売事業、ガソリンスタンドでの販売まで広がって行きます。このペトロブラスの独占状態は、1954年から1997年までの間継続されました。ペトロブラスはブラジルにおける石油業のナンバー1の地位を確立しました。この実績を元にして、1992年には、「海洋油田技術会議(OTC)」の主導権が与えられました。 
 
年 表 
1953年:バルガス大統領の指示により設立
1961年:政府は、国産石油生産について、悲観的な報告書をまとめる
1973年:オイルショック。直後は売上急増するが、国の成長が止まり、ペトロブラスも倒産の危機に
1974年:カンポス盆地で有望な海洋油田を発見
1975年:海洋油田探索について、民間石油会社との提携を行い、リスクを分散する
1997年:政府は、ペトロブラスの独占を解消。ペトロブラスは、100万バーレル/日の生産を達成
2000年:海面下1,877メーターの深海油田の探索に成功し、深度の世界記録となる
2001年:海洋油田のP−36プラットホームで事故が発生。約1500トンの原油を流出させた
2003年:アルゼンチン最大の石油会社を買収。ボリビア、ペルー、パラグアイでの事業にも参加
2006年:ブラジルは、石油の自給を達成
2007年:過去最高の130億ドル(約1兆3000億円)の利益を生み出す。
      また、巨大なガス田「ジュピター」の発見を発表

現在のペトロブラスの陣容をホーム頁から拾ってみました。 
 
 ・油田採掘のプラットホームの数 : 100
 ・原油精製プラントの数 : 16工場
 ・パイプラインに長さ : 3万キロメートル
 ・ガソリンステーションの数 : 6000ステーション
 ・油田の埋蔵量 : 140億バーレル 
 
3.伸び続ける投資意欲(成長著しい企業、投資意欲も拡大基調) 
 
再び広瀬隆雄さんの新興国投資経済レポートより紹介させて頂きます。

ペトロブラスって、どんな会社? 
 
ペトロブラスは1953年にブラジル政府の石油開発機関として発足した独占企業です。
その後ブラジル政府は持ち株比率を引き下げ、現在政府は時価総額ベースで39.8%、投票権ベースで55%を所有しています。 
 
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上のグラフのうち、紫色の政府保有部分は株式市場に出てこない死蔵された株です。流通株の39%を外国人が保有しており、ニューヨークでADRの形で投資されている比率が30%と最も高いです。

このことは、外国資本に左右されず、ブラジルのナショナリズムを実現できる体制にあることを証明しています。また、企業として、投資意欲も高くブラジルにおける成長企業の代表格と言えます。 
 
ブラジル商工会議所のニュース記事より、象徴的な記事を紹介して、本稿を終了します。
ペトロブラスの株価の時価総額は世界4位 2008/06/16
リンク [5]

サントス海盆の岩塩下のツピー鉱区よりも埋蔵量の大きいグァラ鉱区(BM-S-9)での石油発見で、ペトロブラス社の優先株1.59%、普通株が 1.96%それぞれ上昇して株価の時価総額は2914億ドルとなり、エクソン、ペトロチャイナ並びにガスプロムに続いて4位に上昇、今年1月のランクは世 界6位であった。

ペトロブラスの石油、天然ガス生産は記録更新 2009/03/18
リンク [6]

2月のペトロブラスの石油、天然ガスの1日当たりの生産量は前年同月比5.6%増加の224万7,700バレル、前月比では1.3%増加してそれぞれ記録を更新している。 
 
石油のみの生産量では前年同月比6.5%増加の194万バレル、前月比では0.9%増加して月間生産量でも記録を更新している。 
 
カンポス海盆のマルリン・スール鉱区のプラットフォームP−51、ロンカドール鉱区のP−54の生産が1万7,000バレルに増加したために、記録更新に結びついている。

今後10年間はエタノール生産では世界トップを維持 2009/06/04
リンク [7]
ペトロブラスは新たに100億ドルを外資系銀行から調達か 2010/05/27
リンク [8]
ペトロブラスはバイオ燃料部門に大型投資を継続 2010/06/18
リンク [9]
ペトロブラスは石油精製部門に320億ドル投資2010/7/19
リンク [10]

ペトロブラス石油公社は今後5年間に石油精製部門に320億ドルを投資してペルナンブーコ州、リオ、セアラー並びにマラニャン州に石油精製所を建設、しかし市場関係者はセアラー州並びにマラニャン州での投資は政治的な色合いが強いために、大統領選後には計画変更の可能性が濃厚と予想している。 
 
ペトロブラスではセアラー並びにマラニャン州での石油精製所建設は欧米に距離的に近いために輸出面でコスト的に有利であると説明、しかしマラニャン州はエジソン・ロバン元エネルギー相並びにジョゼ・サルネイ上院議長の地元である。 
 
ブラジル・インフラ・ストラクチャーセンター(CBIE)のアドリアノ・ピレス氏はリオ州並びにペルナンブーコ州で建設中の石油精製所だけで2020年に予定されている日産320万5,000バレルの石油精製は可能であり、セアラー並びにマラニャン州の精製所の必要性を認めていない。

 
 

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