- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

‘70年貧困の消滅で、市場は縮小過程に入った−その6「市場の拡大限界は、国家の統合限界でもある

[1]
(市場主義の限界を予測していた?旧ソ連のポスター)
 『70年貧困の消滅で、市場は縮小過程に入った』今回はその6回目です。前回は、中国・インドは市場の拡大は続いているもののバブル状態にあり、一方で日本の市場は拡大限界にあるという分析でした。国家は概ねその誕生から、市場化→ 市場拡大→ バブル市場→ バブル崩壊→ 市場拡大の限界の流れを辿るものと思われます。
それでは、日本がいま到達しつつある『市場拡大の限界』の次はどのような展開が待っているのでしょうか。


「るいネット」の秀作版より「市場の拡大限界は、国家の統合限界でもある(リンク)」を紹介します。
      ・
      ・
①統合限界Ⅰ

 国家は私権闘争を活力源としながら、序列原理⇒身分制度によって私権の拡大可能性を封鎖する。これが国家の統合限界Ⅰ。
「超国家・超市場論8 国家(力の序列共認)と その統合限界(リンク [2])」
 私権闘争の唯一の抜け道が市場で、市場拡大によって私権闘争の活力を維持し、国家は延命してきた。言い換えれば、市場が国家の命綱になったとも言える。だから、近世・近代は市場拡大が国家の第一目標となった。

 まず、国家成立により権力者によって生涯固定の身分制度が制定されます。すると私権獲得の可能性が閉ざされた身分序列の下位者が゛市場″という抜け道を使って自らの私権を確保しようとします。

[3] [4]

 こうした『抜け道』を利用して最も成功したのが、ロックフェラーの丁稚こと三菱の創始者岩崎弥太郎です。
大財閥三菱の礎を築いた男 岩崎弥太郎(リンク [5])より
 明治に入ると後藤は土佐藩の艦船や藩外の財産すべてを弥太郎に与え、ついでに藩の負債も弥太郎に背負わせた。長崎の土佐商会は閉鎖し大坂土佐商会を九十九商会と改名、さらに三菱商会を興し、後に日本郵船会社の元になる三菱汽船会社に発展させた。また維新政府が全国統一貨幣制度を発令し各藩の藩札を買い上げる情報を事前に後藤より聞いた弥太郎は大金を持って藩札の買占めをし莫大な儲けを出した。
      ・
      ・
      ・
      ・
②統合限界Ⅱ

市場拡大し生存圧力が衰弱すると私権闘争活力は衰弱し、まず序列原理が崩壊する。これが国家の統合限界Ⅱ。反序列・反身分意識は’70年前後から一気に顕在化した(→マスコミの第一権力化)。

 市場拡大の結果、皆が豊かになってくると日々の生活で本当に必要なものは既に持っているわけです。そうすると、今まで「とにかくお金を稼ぎたい。」という私権第一主義には次第に収束できなくなり、その基盤でもあった、序列原理も崩壊していきます。そんな中で、さらに物を売って市場を拡大させていこうとしたり、人々の支持を得ようとすれば必然的にマスコミの力を利用すりことになり、マスコミは次第に第一権力化していきます。
 
 マスコミが人々を洗脳する手段は今も昔もこの2つ『嘘も百回言えば真実になる』と、『大きな嘘ほど民衆は疑わない』です。
      ・
      ・
 ヒトラー・ゲッペルス時代から時は流れましたが「嘘も百回言えば真実になる」と云う事を着実に現代のマスコミも実行し、この手法を行っていると考えられます。その手法は巧妙で大衆が気がつかないうちに刷り込ませる事が狙いです。
 「娯楽の中に宣伝を刷り込ませ、相手に宣伝と気づかれないように宣伝を行う、宣伝したい内容を直接キャッチフレーズ化して強調・連呼せず、心の中で思っているであろう不満・疑問・欲望を遠まわしに刺激し暴発させる、もっとも速度の遅い船に船団全体の速度を合わせる護送船団の如く、知識レベルの低い階層に合わせた宣伝を心がける」。
 これらの手法・考えは、当時のドイツやソ連、そして後年幾つか登場する全体主義国家(他、カルト団体など)よりも、むしろ民主主義国家(政治だけでなく商業でも)で本領を発揮し易いもので、アメリカ大統領選挙(特に1964年以降)でのネガティブキャンペーンや大企業のCMに顕著な例であります。(リンク [6]

[7] [8]

(映画『ゼイリブ』より 「OBEY(服従しろ)」、「考えるな」、「消費しろ」、「結婚して子供を生め」、「お上には逆らうな」、「テレビを見ろ」、「眠っていろ」
      ・
      ・
      ・
      ・
③統合限界Ⅲ

同時に唯一の私権闘争の抜け道(可能性)であった市場も縮小し始めるそうなると、本当に私権闘争は終焉するので、国家の命運は尽きる(国家の統合限界Ⅲ)。だから国家は人工的に私権闘争⇒市場の延命を続ける。これが国家が借金漬けになって尚、市場への資金注入を止められない根本原因である。

  国の借金が800兆も出来たのは、何で?(リンク [9]
<国の借金が増えていく原因は
1.赤字予算案を毎年実行している。
2.そのために国債を発行し、日本銀行に利息を払っている。
日本の借金(国債)が800兆をも越えるほどにまで膨らんでしまった原因として、上記の理由も当て嵌まりますが、この問題を解決する為には「なんでそうなったのか?」から考える必要があります。
1.赤字予算案を毎年実行しているのはなんで?
→市場が縮小過程に入った現実をごまかす為。具体的には、無理やりにでも経済成長(GDP上昇)を実現させる為です。
その証拠に、国債は1970年辺りから毎年増額を重ね、見事なまでに右肩上がりに膨らんできています。
GDP成長から国債発行額を差し引くと、市場は全く成長(拡大)していない事が解ります。
2.日本銀行に利息を払っているのはなんで?
→国債というものの本質が、日本銀行が国家に金を貸して利益を上げる仕組みに過ぎないから。
上記国債発行の根本原因と重なりますが、市場が縮小して一番困るのは、金貸し(銀行)だからです
      ・
      ・
      ・
 
 もともと必要でないものを消費するためにマスコミを使い、ムリヤリ市場を拡大し続けたツケは赤字国債(国の借金)という形になって圧し掛かります。市場拡大の限界を過ぎた日本は、赤字国債の発行が急拡大した80年代以降、実は市場の縮小過程に入っているのです。
      ・
      ・
これまでのまとめを図解にするとこんな感じになります。
      ・
      ・

[10] [11] [12]