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ゴールドの真相に迫る13 金を動かす各国の思惑

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これまで、“ゴールドの歴史”シリーズと題して、8回にわたって、“金がどのように人類と関わり、その役割をどのように変えてきたのか?”を押えてきました。
ゴールドの真相に迫る12 ゴールドの歴史(8)まとめ [1]
(この記事から全ての歴史シリーズの記事に飛べます♪)
今回から2回で、豊島逸夫「金を通して世界を読む」 [2]を用いて、時間を現在に引き戻し、“金市場が今どのように動き、各国がどのような目論見を持っているのか?”を紐解いていきます♪
今回は、「第5章 金を動かす各国の思惑」の要約から、ロンドン、スイス、南アフリカ、中国、インド、中東、ロシアが金に対してどのような目論見を持っているのかを見ていきます
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1.ロンドン〜現物取引の中心地
 国際的金現物取引の中心であるロンドン市場の歴史は、イングランド銀行(BOE)が創設された1694年に始まる。1919年にロンドン市場で初のFixing(値決め)が行われて以来、国際金市場における日々の現物の金価格(国際的は指標)を決定する場になっていった。現在ではロンドン金市場はLBMA(ロンドン金地金協会)に参加するメンバー会社により、同協会が定める取引ルール、倫理規定に従って売買が行われている。さらに、ロンドン金市場には世界中の金取引業者の保有する金地金在庫の多くが保管されており、業者間の取引はこのロンドン保管の金地金を帳簿上の貸借記による振替方式で決済されている。またBOEと参加しているメンバー会社の間は「紳士協定」で結ばれている。民間業者は日々の取引状況をBOEに報告し、BOEは必要な時には、彼らに情報を提供したり、資金援助をして保護している。
😀 ロンドンには、世界中の金が集まっていて、取引や売買の規定を作っているってことは、世界の金をどうしていくかっていう意思決定の中枢がロンドンにあると予想できますね☆

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(左)イングランド銀行 / (右)ロンドン金市場公認マーク


2.スイス〜サブプライム問題で損失を受け、金売買拠点から退いたチューリッヒ
 スイスは金取引の中継地点として長く君臨してきた。その中心は銀行であった。スイスの銀行の特徴は3つ。
1.チューリッヒゴールドプールという共同体制をしいている点。南アやロシアなどの生産者が大量の売り注文を出してきた時には、まず共同でリスクをとり買い取るのである。
2.彼らの金取引は、手数料を稼ぐブローカー業務ではなく、自己ポジションで売買するディーラー業務メインである点。
3.時には脱税幇助まで行うほどの顧客密着型の富裕層向けサービスに特化している点。
 そんな彼らも、富裕層から運用を任された安価に調達した資金を用いて、ヘッジファンド投資に手を出した。彼らは証券化商品部門で出遅れたとの焦りを感じていたのである。かくしてサブプライム問題により膨大な損失を被り、その資産と信用は地に落ちた。
現在では、行内コンプライアンスを強化、自己リスクでの金売買も縮小し、金売買の拠点はチューリッヒからロンドン、NYにシフトしている。
😀 金売買の拠点はチューリッヒからロンドン、NYにシフトしているとはいえ、富裕層が沢山いることから、世界の支配層=富裕層なので、金の意思決定の中枢はスイスにもあるのかもしれないですね☆
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チューリッヒ


3.南アフリカ〜鉱山会社のM&A統合と海外進出で生き残りをかける
 南アフリカは、一八九八年から中国に明け渡す二〇〇七年まで、世界一の金生産国だった。総生産量は5万トン近くになり、地球上で採掘された金の総量の三分の一を占めている。南ア独特の鉱脈の特徴から炭鉱事業が発達した。
 アパルトヘイト撤廃による黒人の不満の増大、白人幹部の流出や、経済状況の悪化、残る希少資源の採掘の難しさなど、社会不安は増大している。その状況の中でも、南アフリカの基幹産業は、やはり金産業である。南ア大手鉱山会社の生きる道は、M&Aによる統合、合理化と他国にない深層鉱脈採掘の技術を武器にした海外進出であり、それを進めている。
😀 世界一の金生産国だった南アフリカも金が枯渇してきたため、次にあげる中国など世界に足場を求めようとしているみたいです☆
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南ア大統領ズマ氏


4.中国〜金生産と金獲得に力を入れる中国
 金生産量が世界1位、消費量が2位の中国では、金が厳しく統制下に置かれていたが、政府主導で金生産と金獲得の動きを加速させる流れにある。民間に対しては、数年前から段階的な金自由化が進み、07年に四大民間銀行への金業務解禁、08年以降、民間銀行を通じての金売買が先物も含めて本格的に業務展開されるようになり、銀行及び大衆による金保有量増大をにらんでいると考えられる。
 政府による金準備獲得のため、中国政府系ファンドが欧米のファンド経由で間接的に金を購入することによって、IMFの報告義務もないようにし、準備金を獲得していると考えられる。
 さらに、金生産量を拡大するために、かつては国内の鉱山資源は金を含めすべて国が所有権を持ち統制されていたが、90年代以降、海外企業による直接投資を目論んでいる。
 現在は鉱山会社の9割が国営企業だが、中国政府は今後海外企業参入による高度な技術の流入によってさらなる生産量増大を期待している。
😀 経済成長だけでなく、金取引においても、生産量においても、中国は勢力的に邁進しているようです。やっぱり一番の注目国ですね☆
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福建省内の金鉱山


5.インド〜ダントツ一位の金需要
 中国より一足早く、1990年代に金の自由化に踏み切ったインドは、ダントツで世界一の金需要国である。年間需要量555トンは、二位中国の約300トンを大きく離して独走態勢である。その需要の大半は、花嫁の「持参金」に当たるブライダル関連のジュエリーを中心とした宝飾用である。その結果、インド国内の民間金保有量は、少なく見積もっても1万トンを超えると見られている。
 インド経済は外資への依存度が高く、国内経済不安要因が強まると常に外資流出のリスクにさらされる。そのようにして国際収支赤字によりきん輸入停止などの措置が採られない限り、当分、ブライダル需要を核としたインドの金需要世界一の座は揺らがないと思われる。
😀 ブライダル商品とはいえ、かき集めれば世界の1/16の金があるとはあなどれませんね☆
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インドの花嫁


6.中東の動き
 アブダビではADIAを初めとして政府系ファンドが複数創設。現状はサブプライム震源地などに分散投資先を求めるのは減少傾向、食料や金属などの中東に欠ける天然資源の戦略的確保を図るための投資に比重が移っている。金はその投資の一部として金融商品化された金投資商品の購入という形で進行中。中国の政府系ファンドとも交流がある。
 中央銀行の対外準備金資産としての金保有割合は増加。UAE首脳は外貨準備のドル離れ、通貨分散の方針を明確に打ち出し、まずはユーロと金を10%ずつ増やすと明言。IMFに報告されない公的金保有も相当量あると見られているが、それは公然の秘密とされている。
 イランでは経済制裁回避の為、海外資産を欧州からアジアへシフト。また、安全性の余裕を増す為、資産の一部を外国為替から実物資産の金や株式へ振り替えた。
😀 ドバイショックなどもあった中東ですが、準備金の割合などUAEにしろイランにしろ金へのシフトが進んでいるようです☆
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アブダビの大都市


7.ロシア〜ナショナリズムの匂いのする通貨を避けるロシア
 ソ連崩壊後の1990年代、大不況が続いたロシアでは生活必需品を輸入するために金を大量売却し、モスクワの金庫は一度空っぽになった。しかし、21世紀に入り、プーチンの辣腕と原油、天然ガスの高騰により国庫は再び潤い、公的金保有量は2008年後半には472トンとなった。
 現在、公的金の増強に関して最も積極的な国の一つがロシアである。プーチンは「ドル離れ」を宣言し、金準備を積み増してルーブルの通貨価値をサポートする「ゴールド・ルーブル」という構想も浮上した。原油、天然ガス権益をテコに、世界の列強と再び肩を並べる意気込みのロシア。世界第六位の生産量(169トン/年)を持つ金も、その夢を実現するための戦略ツールの一つに位置づけられている。
😀 「ゴールド・ルーブル」という構想を打ち出すぐらいロシアも金には並々ならぬ思い入れがあるようです☆
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プーチン


金融危機の後に世界経済の低迷が始まった時から、中国、中東、ロシアなど中進国が金を集め始めている。また、リンク [3]でも見たように、欧州にも金が集まっているようだ。
一方、日本はと言えば、“都市鉱山”に存在する金の総量は6800トンにもなる。インドに匹敵する値だ。ただ、国全体として見ると、リサイクルブームや日本沿海海底金鉱脈の探索をする一方で、値上がりした金を中国などに売り流したりしているなど矛盾した行動が見られる。

次回は、これからの金を見るポイントを第6章より紹介します☆お楽しみに♪

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