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TPPから見る世界の貿易情勢〜TPPのまとめ(米国の真の意図)

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 TPPとは何なのか?日本にとって、世界にとってどういう意味があるのか?というのが、当エントリーの最初に掲げた問題意識でした。TPPについては、まだまだ継続して見ていかなければならない重要な問題ですが、ひとまず、今回は『TPPのまとめ』ということでお送りします。
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関税の撤廃 ← マスコミで報道されるのはこのレベルの話
 関税が撤廃されることで輸出産業にとってはプラス、農産業にとってはマイナスであり、TPP参加を推進しようとしている政府に対して農産業側が反対しているという構図。実際、農村部でもTPP反対の機運は高く、各地で集会が開かれているという。ニュースで見るのはこの程度の話である。
 輸出企業にとってはTPPに参加しないと2010年までにGDPが10.5兆円減少し、81.2万人の雇用が失われるという(経済産業省試算)。逆に農水省は、日本がTPPに参加することでGDPで7.9兆円の損失と環境面で3.7兆円の損失があり、340万人の雇用が失われ、更に食料自給率が40%→14%に激減するという(農水省試算)。
 政府はTPP参加の線で進めようとしているが、それがあまりにも性急で、何がなんでも参加しようとしているように映る。そこに非常に違和感がある。実際、日本は東南アジア諸国などとEPAをすでに結んでいるし、日米間にしても工業製品の関税は数%しかないので関税が撤廃されてもそれほど大きな影響はないのである。
 では、こんなにやっきになってTPP参加を推し進めようとしているのはなぜなのか?元々は4つの小国(チリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ)の経済協定であったTPPに突如参加し、主導権を握ろうとしている米国には裏の狙いがあるのではないか?
非関税障壁の撤廃 ← ネットでちらほら見られる話、米国の裏の狙い
 マスコミではほとんど報道されないが、関税以外に非関税障壁もこの際取っ払ってしまおうというのが裏の狙いらしい。
 非関税障壁とは、関税以外の方法によって貿易を制限すること。主なものとして下記のようなものが挙げられる。
 
  非関税障壁の種類(主なもの)
   ・食品の安全基準(ex.牛肉)
   ・環境規制(ex.残留農薬)
   ・手続き(ex.税関手続)
   ・言語(外国語)
   ・・・・
 
まだまだ沢山あるが、確かに、これらが撤廃されることで貿易量は増えるだろう。そして、多くの外国人が日本に労働者としてこれまで以上に入ってくるだろう。
 日本(人)への影響は甚大である。食の安全が脅かされるし、失業率は高くなるだろう。何より日本らしさが根こそぎ破壊される恐れがあるのが最も怖いところである。
 しかし、米国の狙いは果たしてそれだけなのだろうか。非関税障壁の撤廃要求は何も今に始まったことではなく、もう何年も前から行なわれている。
では、米国の真の狙いは何なのだろうか?
米ドルの軟着陸作戦 ← 米国の真の狙い(本ブログでの仮説)
 第1次世界大戦後の「ブロック経済」は、各国の金本位制離脱によって必然的に「通貨圏⇒経済圏」へと帰結したということだった。(前回エントリー参照 [1]
 今回はTPPにより経済圏を作ることで、そこで通貨を統一してしまおうという狙いがあるのではないか。つまり、「経済圏⇒通貨圏」ということである。かつては金本位制で紙幣には金(GOLD)の裏づけがあったが、1971年のニクソン・ショックにより、ドルは不換紙幣となり、全ての国の通貨の裏づけはその国自身の経済力(による信用力)となっている。現在ささやかれているドル大暴落は米国経済力の弱体化が要因である。したがって、米国は、日本、中国を入れた新しい経済圏「TPP」を構築し、その経済力に基づく新貨幣(仮に新ドルとする)を作り、現在のドルを暴落前に新ドルに引き換えてドル大暴落を軟着陸させようという意図があるのではないか。もちろん、現ドルと新ドルのレートは米国経済が浮上できるもので、日本の資産はそれにより大幅減が前提となるだろう。米国はEU、ロシアと対抗するためにどうしても中国を取り込んでおきたいはずである。しかも中国は対米債権大国である。日本はある意味、政治力でどうにでもなる。しかし、中国はそうはいかない。日本、中国の参加で世界最大規模の経済圏を作るという美味しそうな話になんとか乗せようと画策しているのではないか。
 以上見てきたように、TPPとはマスコミが扱っているように、農業VS輸出企業という国内の問題ではなく、近い将来予想される米ドル暴落による破綻を回避するための一手段であり、日本はそのためにこれまで蓄積してきた資産を吸い上げられてしまうという問題である。

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