「貧困消滅⇒市場縮小」の深層にある「私権の衰弱」と「序列原理の崩壊」に着目した今回の『市場縮小の深層シリーズ』。今回はその第4回目、るいネットより『彷徨える若者を襲う「自己実現」と言うドグマ』を紹介します。
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『彷徨える若者を襲う「自己実現」と言うドグマ』(リンク [2])
これまでも何度か言われてきたように、今の時代は、「私権」と言う絶対価値が崩れ、新たな価値を模索している過渡期です。閉塞感を加速させるような非情・悲惨なる事件が増える一方で、ボランティアの高まりなど確実にあたらしい価値観・可能性が芽生えつつあります。
しかし社会全体では、まだ明確なる言葉・・・観念で定義できるほど、(私権に変わる)この新しい価値意識ははっきりしていません。それゆえに、右に左に意識は揺れ動きます。今の時代をオンタイムで生きている若者が彷徨うのは、ある意味当然と言えるでしょう。
阪本さんが仰られた「やりがいに潜む社会的欠乏」は確実に新しい時代の萌芽であり、若者の意識の中に確かに芽生えつつあると思います。しかし、その一方で、個人主義教育の中で植え付けられた「自己実現」と言うドグマは根強い。そのために、芽ばえつつある社会的欠乏をどこかで自覚しながらも、そこに「自己実現」を押し当ててしまう「やりがい」の中に自己実現を求めてしまう。
しかし、この(個人主義的)「自己実現」を求めている限り、期待・応望の中で生まれる本当の「やりがい」は得られない。自己を中心としている限り、「自己満足のやりがい」以上のものは得られなくて当然ですし、自分の意識を変える=成長させていく前に場を変えるようでは、いつまでたっても何も得られません。
価値感の「曖昧さ・未明さ」ゆえに過剰なる「やりがい」重視は、自己実現の矛先となりやすい。言い換えれば「社会的欠乏と言う新しい価値観と自己実現と言う個人主義が交錯している」。これが、過剰な「やりがい」重視に懸念を覚える理由であり、今の就職における問題点の一つだと僕は考えています。
この投稿がされたのは10年前になりますが、若者の彷徨ぶりは相変わらずですが、その方向にはある傾向が見て取れます。
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2011年の人気就職先ランキングを見てみると
1位 JTBグループ
2位 資生堂
3位 ANA(全日本空輸)
4位 オリエンタルランド
5位 三菱東京UFJ銀行
6位 明治製菓
7位 JR東日本(東日本旅客鉄道)
8位 三井住友銀行
9位 エイチ・アイ・エス
10位 ベネッセコーポレーション
「若者の○○離れ」(ex.車、レジャー、旅行)が叫ばれている昨今、社会人から見れば業績・安定性・将来性に「なんで?」と思う企業も入っていますが、この辺りに若者の意識潮流が見てとれそうです。
ちなみに投稿があった10年前の人気企業はこんな感じです。
■2000年
1位 ソニー
2位 NHK(日本放送協会)
3位 NTT日本電信電話
4位 サントリー
5位 JTBグループ
6位 NTT移動通信網(ドコモ)
7位 ベネッセコーポレーション
8位 電通
9位 博報堂
10位 資生堂
2011年と比べて、いわゆる「花形産業」(マスコミ・IT関連)が占める割合が大きいのがわかります。この頃、若者の考える「やりがい」というのは、まさに「個人主義的自己実現」であったのではないでしょうか。
参考までに、1990年から1965年までの人気企業ランキングを挙げてみます。1970年代、物質的には「貧困」は脱しているのですが、意識としては依然「私権(給与・安定性・ステイタス)」を求める傾向が続いています。
■1990年
1位 NTT日本電信電話
2位 ソニー
3位 三井物産
4位 三菱銀行
5位 東京海上火災
6位 三和銀行
7位 JR東海(東海旅客鉄道)
8位 住友銀行
9位 JAL(日本航空)
10位 ANA(全日空)
■1980年
1位 東京海上火災
2位 三井物産
3位 三菱商事
4位 JAL(日本航空)
5位 NHK(日本放送協会)
6位 サントリー
7位 三和銀行
8位 安田火災海上
9位 日本生命
10位 住友商事
■1970年
1位 JAL(日本航空)
2位 日本IBM
3位 丸紅飯田
4位 東京海上火災
5位 伊藤忠商事
6位 三井物産
7位 三菱商事
8位 松下電器
9位 住友商事
10位 電通
■1965年
1位 東洋レーヨン
2位 大正海上火災
3位 丸紅飯田
4位 伊藤忠商事
5位 東京海上火災
6位 三菱商事
7位 旭化成
8位 松下電器
9位 住友商事
10位 三和銀行
ふり返って、2011年の傾向を見てみると、「人と直接関わり合いのある会社」が多いように思います。(レジャー、旅行、教育など)
これは、若者が「やりがい」を求めて彷徨してたどり着いた収束先が、私権に変わる新たな価値観である「共認充足」(相手の期待に応望して充足する気持ち)に向っている現われなのではないでしょうか。